閑話 王様と宰相悩む。
このお話の前に本編があります。
閑話は読まなくても大丈夫です。
「と言う訳で悩んでおります」
「いや、何が”と言う訳”なのかさっぱりだ」
「ジークフリード様とシャルル様の婚姻祝いですよ!そろそろ半月になりそうなのに、決まらないんです!最下層の時に領地も最上の屋敷も断られてるんです!褒賞の金も、それこそ国庫を圧迫する位出してるんですよ!?一体何を差し出せば!!」
「あー、うーん……あの子達には物品あげてもなー」
「そう言えば、陛下はお式に出席されてますよね」
ぎくっ!
「ナンノコトカナー」
「あぁもうそう言うのはいいですから。で、どんな様子でした?」
「凄かった」
「は?何ですかその子供みたいな感想は」
「まず、式服。ジークのサーコートはユニコーンの一枚革。装飾は本物の金銀宝石。シャルルちゃんのドレスは、フラッフィーバードで、金糸銀糸の刺繍に宝石のビーズで飾られていて、下地と重なったら花が浮かぶように考えられたドレスだった。それに、なんつったか、頭にフラッフィーバードの布が掛けてあって、小さなティアラがちょこんと乗ってたんだが、ヒヒイロカネだよ。ふたりでお揃いのブローチは、巨大なルーキスオルトゥスに、散りばめられた大量のピクシーの涙とフェアリードロップ。もう並んだら容姿も合わさって国宝だよね。しかも、カーバンクルも居て、世界樹の花吹雪。あの子達何なの!?」
「は?」
「感想を言ったんだが?」
「あ、あぁ、えぇはい。え?」
「誰かー宰相が壊れたー」
「壊れてません!つーか!何ですかその一覧!え?見間違いとか鑑定間違いとかじゃなく!?」
「儂が間違うとでも?」
「思いません!思いませんが、俄には信じられ……はっ!そんな貴重な式服ならば警備が必要ではないですか!」
「要らんだろ?それに望んでない」
くっ!
「近衛騎士師団長にも同じ事を言われました……」
「だろー?……はてさて、困ったねぇ」
「はい。だから悩んでおります……」
「そもそも、あのシャルルちゃんは何者だ?」
「はぁ、手を尽くして調べ倒しましたが、おかしな所はない、普通の平民でした」
「カーバンクルと知り合える”普通の平民”ねぇ」
「カーバンクル捕縛事件の時の調書を調べましたが、1度弱ってるカーバンクルを助けたそうです」
「ふむ。ジークの最下層に同行、リェスドラゴンとリェスウルフを単独討伐出来る腕。”普通の平民”?」
「そう言われるとそうですが、城の精鋭を使って調べたんですよ?」
「まさか愛し子ではないよなぁ」
はははっ
「有り得ませんよ」
「そうだよなぁ」
「最下層はジークフリード様の腕が立ったからだと思われますし、ドラゴンやウルフもたまたまなのでは?」
「そう考えるのが妥当だな」
「はい」
「ふむ。お祝いに関しては、ふたりをお茶会に招待して希望を聞くか」
「……能無しと思われそうですが、色々鑑みてもその方が良いかと」
「相分かった。あくまでも招待だからな?召喚とか書くなよ?航路が開かれた今、あの子達に出奔されたら敵わん」
「御意」
「下がれ」
「はっ!御前失礼致します」
◇◇◇
【王様】
そもそも、普通の平民が、あんなに貴重な素材を、あんなにふんだんに使えるか?
国費を使っても中々賄えないし、手に入れるのに、どれだけの時間が掛かるのか……。
フランシアのお針子を調べたら分かるかと思ったのに、何一つ情報が出てこない。
……まぁエルバートの家だから、そう言う防衛は硬いし、何せチャーリーだしなー。
よしんばジークが素材提供したとして、ユニコーンは一頭だとしてもフラッフィーバードに遭遇して討伐するのに、どれだけの数が必要なんだ。
ヒヒイロカネ、ルーキスオルトゥス、ピクシーの涙にフェアリードロップ。
城の宝物庫にも、あんな巨大なルーキスオルトゥスなんてないぞ。
しかもふたつ。
……あぁ、王妃が見たら欲しがりそう……。
やらんけど。
いや違った、献上させないけど。
とりあえず、何を欲しがるかなー。
何も要らないとか言われたらどうしよう。
王の沽券に関わるから、それだけは阻止だ!
あ、ジークの所に突撃しようかな?
そんで先に聞こうかな?
「ジークの住んでる所ってどこだっけ?」
”2区上ですが、行けませんよ”
「何で!?いいじゃん!」
”ダメです。精々1区までで我慢して下さい”
「この間大聖堂まで行ったでしょ?いいでしょ?」
”あの日は特別です。特別はそうそうありません”
「むーーーーーー!なら、婚姻祝い何がいいかおまえが聞いてきて」
”……お茶会にご招待するのでは?”
「するよ?その時に、すんなり希望が聞けた方がいいでしょ。あの子達に考える時間をあげるんだよ」
”……あの家の護りは強固です。影では入れません”
「え?試したの?」
”シャルル様を調べる時に”
「あらま。ますます”普通の平民”が揺らぐね」
”その時は、既にジークフリード様と同居でしたので”
「あぁ、ジークの護りか。ならば表立って尋ねたら?書状は用意するよ」
”……御意”
さてさて、何を所望するかなー?




