テイム調教。
「よし、釣ってみるか」
え?
「気配探知を街中で使う」
「あっ!トーちゃんの時みたいに?」
「そう。街中で気配探知を使うなんて事、通常やらんから、ヤツにとっても盲点だと思う。もし害意があるなら表示されるだろ?」
「なるほど。視線を感じる位だから、離れてても精々100m位かな」
「通常身体強化しての視力なら、もう少し先まで見る事は出来るけど、街中は障害物が多いから50mでもいいと思う」
「そっか。……やる?」
「やる。式まであと少しなのに邪魔されてたまるか!」
ふふっ
「うん!ねぇ、ふたりより人数多い方がよくない?」
「うーん……そりゃ多い方がいいけど、俺らに害意があるから分かるのであって、他のやつには分からないんじゃないか?」
「あ、そっか。それに他の人危険に晒すのも嫌だもんね」
「うん。でもカサンドラには話しておいた方がいいかも。もし式までに見つからず、式当日に何か仕掛けてくるなら、事前情報があった方がいい」
「うんうん」
「シャルル、今日の予定は?」
「お昼ごはんの後は、ブーケを作ろうと思ってたけど、カサンドラさんに報告が先。憂いは少なく!」
「そうだよな。ブーケは俺も手伝うから、午後はフランシア家に行ってもいいか?」
「もちろん!行く間も気配探知しておく!」
「よし、じゃあフランシアにデンタツしておく。気配探知頼むな」
「任せて!」
◇◇◇
フランシア家にデンタツしたら、チャーリーさんが対応してくれたようだ。
これから行く事を伝えて、フランシア家に向かう。
一応、大事にするなとは言ったが、パパにもママにも伝わるんだろうなぁ。
また心配掛けちゃうね。とほほ。
「気配探知ON!いつでもいいよ!」
第1門を潜り、街に出る。
気配探知の範囲は50mだけど、ゴレ車だから見つけられるか分からない。
そもそも害意があるのかも不明なのだ。
でもあの気持ち悪い視線はちょっと許容出来ない。
「ここまで反応無し」
2区から1区に入る。
ここから特別門までは、半刻ほど。
うん、反応無し。
「あっ!ジーク!そこのパティスリー前で止まって!」
「ん?お土産買うのか?」
「違う。見てるヤツがいる」
「……気配探知に反応は?」
「ないね。でも何だろう……監視されてるみたい」
はっ!
「シャルル、テイム調教された動物かもしれない。止まるよ」
パティスリー前で止まり、ゴレ車をしまう。
顔は何事もないように振る舞う。
え?わたし?引き攣ってますよ!
「一旦店に入ろう」
カランコローン♪
「! いらっしゃいませ」
商品を見てる振りしてコソコソ。
「どこかにこっちを見てる鳥、或いはアルディジャが居ないか探して」
アルディジャ?ってカーバンクルに似てるやつ?
「何かお探しですか?」
ニコニコと店員さんが聞いてくる。
「あぁぁあのあの!チーズケーキはありますか?」
「はい!2種類ご用意があります!」
おっと、ベイクドもレアもレシピ買ってくれたのか。
まいどありっ!でもスフレもあったんだよ?
「こっちは任せて、店員さん対応してて」
コソコソ
サムズアップ!
けど対応ってどないしたら!?
「最近レシピが公開されたチーズケーキですが、大人気なんですの!お客様も噂をお聞きになって、ご来店されたのでしょうか?当店のチーズケーキは、素材が良いので滑らかな口どけが自慢です!是非ともお試し下さいな」
ぬぉ!勝手に喋ってくれるぞ!
って、いや、混ぜるだけだし。
素材ったって、クリームチーズ作ってるの1箇所だけやん。
濾したりする手間を省かなければ、誰でも美味しく作れるよ。
あぁスフレはメレンゲが必要だから省いたのかな?
「そ、そうなんですね!なら、えと、ベイクドとレアをそれぞれホールで頂こうかしら」
「畏まりました!お包致しますので少しお待ちくださいませ」
コソコソ
「どう?」
「アルディジャだ」
可愛いアルディジャを犯罪、いや、まだ犯罪と決まった訳じゃないけど、監視なんてストーカーだ!それに使うなんて!
「お待たせ致しました!」
「あ、はい!」
キレイに包装されたケーキを受け取り、お金を払って外に出る。
出た途端、お店から”きゃーーー!英雄がご来店されたわぁぁぁ!!”と。
バレてーら。
ゴレ車を出して特別門に向かう途中、アルディジャが見えた。
識庫さん、テイム調教って何?
*テイムした動物、或いは魔獣と視覚共有や聴覚共有等をする事を言います。
テイム調教された動物、或いは魔獣の身体には、陣を刻む必要があるので、信頼関係、若しくは力技で捩じ伏せる必要があります。
陣を刻んだ動物、或いは魔獣は主人に逆らえません。
えっ!?捩じ伏せる!?虐待じゃん!酷い!
「あのアルディジャを捕まえたら魔力を辿れるけど、辿る前に殺されてしまうので得策じゃないな」
生殺与奪もなの!?
「あの子はもう戻れないの?」
「陣を刻んだヤツが解放すれば戻れるけど……難しいな」
「……そうなの。酷い事するわね監視に使うなんて」
そして特別門を潜った。




