冬の醍醐味。
「ただいまー」
あれ?転移したのに、魔力消費が感じられない。
んんん?ドラゴンさんの加護のおかげ?んん?
「後半月もしたら春の嵐が来るな。初めての冬はどうだった?」
「うぅん……何かと忙しくて、冬の醍醐味は味わってない気がする」
はははっ
「まぁ確かに。明日1回ハンターギルドに行ってくるから、その後どこか行く?」
「あっ、だったらウルディアで吹雪体験とか?」
「ウルディアの吹雪は体験したら遭難レベルだよ」
あははは!
「拠点のお庭でなら大丈夫かなーと」
「そうだな。なら行ってみるか」
◇◇◇
と言う訳で、ウルディア拠点。
まだ外には出ていません。
と言うより出られません。
猛吹雪です。
窓は全部雪が張り付いてて外が見えませんが、音が凄いです。
ガタガタドカドカビュービューバンバン。
「嵐の時も思ったけど、音が怖いね」
「あぁ、普段王都に居ると結界の中だからなー。でも季節替わりの嵐はもっと凄いよ。特に冬から春の嵐は外出禁止令が出る」
「ひぇ!」
とりあえずペチカに火を入れて、持ってきたシチューの鍋を置く。
遠火でコトコト。
むふふのふ。これがしたかった。
「シャルル、配魔盤見せてー」
「はーい!あれ?ジークでも開くよ?」
「え?ホント?あっ、ホントだ開いた。魔力足しておくな」
「えっ?減ってるの?使ってないのに?」
「冬は家の中まで凍らないように自動で管理されてるんじゃないかと思って。確認してよかったよ」
「あ!ならわたしが補充するよ!」
∞だからね!
はははっ
「これ位ならすぐ元通りになるから大丈夫だよ」
「そう?じゃあお願いします。ありがとうね」
お昼には少し早いから、お茶の用意しよう。
あったかーいミルクティーにしようかなー。
ペチカでミルクも温めてーふふんふーん♪
お茶の用意をしていたら、ジークが怪訝な顔して戻ってきた。
「なぁシャルル、魔力操作が簡単になってない?それに消費もおかしい気がする」
「あっ!ドラゴンさんの所から転移した時にそれ思った!ジークもなの?」
「配魔盤に結構充填したのに、減った気がしないんだよ。ちゃんと魔石の色も満タンなの確認したんだけど……」
「……加護かな」
「それしか考えられないよな。ドラゴンさんが話してた中に魔力操作なんてなかったよな?なんつーもんくれちゃってんの!ありがた過ぎる!」
「ホント、感謝してもしきれないよねぇ……」
何かお礼出来ないかなぁ……。
「また遊びに行こうな。顔見せに行くのが最大の感謝の印な気がするよ」
「そっか。うん、そうだね。また行こう!こうなったら季節毎にでも!」
はははっ
「そうしよう。きっと喜んでくれるよ」
そうこうしている内に吹雪の音が止んだ。
今度はしんとして何も音が聞こえない。
「音が止んだと思ったら、今度は静か過ぎて怖いね」
「どっちにしろ怖がるんだな」
はははっ
「慣れてないの!」
ぷんっ!
ちゅ
「シャルルは可愛いな。外出てみる?」
「行ってみよう!」
防寒服よーし!マフラーよーし!手袋よーし!いざ!
玄関ドアを開け、開けっ!開かないっ!?
ぶは!
「シャルル、ちょい待って、えーと、あった!ほらここ、ここにボタンあるでしょ?ドアが凍ってたら、ここ押すんだよ」
ほほぅ?あ、ドアがほんのり暖かくなった。
「もう開くよ」
「ジーク物知り!」
「あぁこれはウルディアじゃ標準装備のはず。二重玄関でも内側のドアが凍るなんて日常茶飯事だからなー。ましてや冬最後の月は極寒だし」
「なるほど」
うちは結界があるから、玄関は1枚だ。
結界とは言え寒暖の差を緩めるのは最低限。
侵入者対策だからね。
「よーし!行くよー!」
開けゴマ!バーン!
「……白」
あははははは!
「結界あるからドアは開くけど、雪の壁だな!」
「くっ!ならば!」
識庫さん!雪を溶かしたい!
*テンプラードアリアが最適です。
”テンプラードアリア”!
「おおっ!?シャルル凄い!雪が消えていく!」
「おー!こりゃ凄い!」
「え?まさか」
「うん、使ったの初めて」
「流石シャルル!どんな魔法?」
「テンプラードアリアだよー」
「よし、なら俺も!」
”テンプラードアリア”
「あっ!雪残しといて!」
「ん?じゃあ門まで道作るだけな」
そこから魔法を使って、やりたかったカマクラを作る。
外の道は雪が積もらないようになってるので、門まで道が出来れば外出も無問題。
魔法制御が容易になったので、無駄に魔力を使う事がなくなった。
だから魔力消費も減ったんだろう。
素晴らしい。
ふふんふーん♪
ここはお庭で外の道を通る人からは見えない。
雪の上部をインベントリにがっつりしまって地ならし。
インベントリから雪を出して、クリエイトで半球に盛り上げて固める。
そこからまたクリエイトで中を空洞にする。
掻き出した雪は、またインベントリだ。
所要時間、およそ15分。
魔法万歳!ハラショー!
「それなに?」
「雪の家!」
カマクラと言った所で伝わらんからな。
防水、防泥のシートを中に敷く。
角うさぎの革で作ったシートも敷いて、カマクラの真ん中に火鉢モドキの魔道具。
これは野営セットに入ってた。
「さぁどうぞ!」
「おぉ!すげぇ!」
さっき用意していたお茶をカマクラの中で頂く。
お茶菓子には焼き立てスコーンとクロテッドクリームとりんごジャム。
汗のひとつもかかずにカマクラ作れるとか魔法凄いよね!
「この中暖かいな。雪の壁なのに」
「不思議だよねー。風を防ぐからかな?」
「冬の醍醐味は味わえた?」
「うんっ!満足!」
あははははは!




