ママの泡石風呂と転移のジーク。
する事がなくなってしまったお針子さん達は、お茶を飲んだ会議が終わると帰って行った。
「さて、お披露目のドレスは、いつからにするの?」
「そうですね……まず、生地を、あー、ジークと選別しないと、どんな素材があるか分からないので、それからですね。デザインだけは先でも大丈夫、かな?」
いや実際秋のお披露目だから、夏中には作るけどー。
「そうね。今、宮中では日取りを決めるのにてんてこ舞いらしいわよ〜」
王様の予定とか、国交の手続きとか、やる事は山盛りらしい。
しかし、国の使命功労者の結婚お披露目なので当然手抜きは出来ない。
警備や王族の結界等で、お兄様達も、パパも駆り出され大わらわだそうだ。
なんかすんません。
「別に国が関わらんでも良かったのに。な?」
ふふふっ
「まぁね。でも仕方ないんじゃない?って思う事にしたよ」
そう。無我の境地。明鏡止水。
既に、わたしの手から離れているので、見守りつつ流されるだけだ。
傍から見たら、遠い目、なんだろうな。
ふふ、ふふふっ
「それなら、わたくしもデザインの案を出しておくわ。どんなのがいいかしらね!」
わくわくのママ。
うん、ママのデザインを見て、付けたり省いたりするのがいいかもしれない。
これも親孝行?ふへっ
◇◇◇
今日は泊まらずに帰ると言ったら盛大に嘆かれた。
「久しぶりなんだし、泊まっていったらいいのに」
「今度来る時はゆっくりするよ」
「あっ!そうだ、これ!渡すの忘れてました!」
「なぁに?これ」
「泡石で作ったお風呂グッズです!湯船に敷いて使ってみて下さい。……美容にもいいですよ」
コソコソ
「……美容?」
「はい。これを敷いて湯船に浸かると、身体の芯からポカポカ温まります。健康促進に役立つはずです。健康になれば、お肌も当然」
「……ツルツルに?」
「はい」
うふふふふふふふ
「……なんか、悪巧みをする商人みたいだな」
お主も悪よのぉ……って!
別に黄金のおまんじゅうを渡した訳じゃありませんよ?
「ありがとう!今日から使ってみるわ!チャーリー!これを!」
「畏まりました。……あの、使い方は?」
「湯船に沈めてお湯を張るだけです。その中にぽちゃんと入る。以上です」
「はぁ。畏まりました。本日設置致します」
「じゃあ結果は次回会った時にでも!楽しみが出来たわ〜!」
ふふふっ
「ではまた来ますね」
◇◇◇
「シャルルも母さんの扱いが上手くなったな」
あははははは!
「そういう訳じゃないよ?たまたま忘れてたのを出しただけだもん」
「うんうん、そういう事にしておくよ。さて、これから後ひと月の冬は何しようか」
「そうだねー。わたしはポーション納品したから、って、足りなくなる前に少し作っておかないと。でもそれも2〜3日で済むかな」
「じゃあ俺は転移の練習しておくかな。ポーション終わったらクッキー作らない?ドラゴンの所に行ってみようよ」
「うん!春になったら忙しいかもだしね」
◇◇◇
その後、ジークは転移の練習をした。
明確に思い出せる場所にだけに絞ったようだ。
聖域の玄関もマーキングしておいた。
でも中々聖域には飛べないようだ。
「あれ?ここにドアがないから王都か!上手くいかーん!」
どうしても王都の玄関に飛んじゃうみたい。
過ごした時間の違いかなぁ?
まぁ、これも練習あるのみ!
わたしは聖域でポーションを大量に仕込んでおいた。
インベントリに入れておけば、消費期限を考えなくて済むからね。
「ヒット、マナ、毒消しと状態異常っと。春になったら薬草取りに行かないとなー。さて、ジークはどうしたかな?」
王都に帰るとジークは出掛けてるみたい。
転移の練習かな?
作り置きでも仕込んでおくか!
「ただいまー。あー疲れた」
と、2階から降りてきた。ん?
「転移扉から帰ったの?」
「飛びすぎて魔力ヘロヘロになったから、リソルセの拠点から扉で帰ってきたー」
は?
リソルセ、は、西のガラディアの首都か!
「何やってんの!無茶し過ぎー!」
「いやほら、限界知らないと後で困ると思って……」
「もう!ほら、休んで!お茶持ってくるから!」
「ごめん、ありがとう」
とりあえずマナポとココアを出す。
疲れたら甘いの欲しいよね?
「はぁぁ〜ココア美味しい。でも割と何度でも飛べるのが分かったよ。すごい魔力の増え具合。マナポなしで反対側のウルディアも行ける」
それは凄い。確かパパはウルディアには行けないって言ってたし。
「うーん。でもやっぱり無茶はダメ」
「うん、もうしないよ。こんなに何度も飛ぶ事なんてそうそうないし。心配かけてごめん」
「うん。約束ね」
ちゅ
「約束のちゅー」
あははははは!
◇◇◇
【お風呂のママさん】
「何これ何これ何これー!」
あははははは!
「この泡がお肌の老廃物押し出してくれそう!それにシュワシュワ楽しい〜!」
と、ひとりでキャッキャとはしゃいで、メイドさんに「奥様が壊れたぁぁぁ!!」と心配されたそうな。




