ジークの登城。〜その3〜
「ジークフリード・エイプリル様、王がお呼びでございます」
「は?」
コソコソ
「いや、そんな顔すんなよ。俺だって行きたくないけどさー」
「クリス兄さんも呼ばれてるの?」
「ユージーンもな」
「はぁ!?……早く帰りたいのにー。シャルルにデンタツするからちょっと待っててよ」
”デンタツ”
「あ、そうか、ドレス作ってるからメッセージじゃないとダメなんだ。くそー」
”シャルル、こっちは無事に終わったよ。詳しい話は帰ってからするな。兄さん達と伯父に呼ばれたから、ちょっと行ってくるね。なるべく早く帰るよ。ジークフリード・エイプリル”
「よし、んじゃ仕方ないから行くか。相分かった」
第4扉のその奥、王家専用フロアに入る。
ここから先は王族のプライベートフロアだ。
「ジークフリード・エイプリル様、クリスティアン・フランシア、罷り越しました!」
「おー!入れー!丁度お茶が入った所だよ。お昼もあるから!ユージーンも来てるよー」
「お呼びにより「あぁいいから、硬い事はなしな!」」
「……。それで、如何されました?」
「え?お茶しようと思ったからさー。ジークも来るって聞いたし、3人揃って呼ぶなんて久しぶりだろ?それに、フェルディナンがジークの冒険譚を聞きたがっていたからな!ジークだけ呼ぶのも不公平じゃないか。だからみんな呼んだんだよ」
「クリスティアン、ユージーン、ジークフリード、久しぶりだね!会いたかったよ!」
フェルディナン第一王子。
歳はクリス兄さんとユージーン兄さんとの間になる。
「……無礼講で?」
「うんうん!いいよ!家族だけしか居ないからね!」
「フェル、久しぶり!元気そうで何よりだよ」
俺はまだそんなに砕けては話せない。
歳上だし。
「ジークの冒険譚を聞きたかったんだ。それにみんなに会いたかったし!」
そんなの話してたら日が暮れるじゃないか!
俺は早く帰りたい!
「あー、フェル?ジークの話を聞いてたら、ものすごーーーく!時間掛かるから、触りだけでもいいかい?」
クリス兄さん!グッジョブ!
「ちょっとだけ報告書は読んだんだ、だからそうだなぁ、ドラゴンの所だけ聞かせてよ!話すドラゴンなんて伝説じゃないか!」
「では、僭越ながら少しだけ……」
そう言ってハンターギルドで話した事を聞かせた。
「ふーむ、凄いね。世界樹の守護者か。だからこの国は豊かなんだね」
「他国がどの様なモノかは知るべくもありませんが、ドラゴンが護ってくれてるのは確かですね」
「到達者本人から聞くと迫力も一入だね!ワクワクするよ!いつか会ってみたいなぁ」
はははっ
「それにはハンターになってダンジョンに行かないと会えないからな。まぁ夢見るのはいい事だ」
「父上は会ってみたくないですか?」
「そりゃー会ってお礼を言いたいよ。しかし、万が一会うとしたら、守護者が出てくる時だ。この国の危機になるだろう?だから、そっとしておくのが1番だよ」
「それもそうだね。なら毎日祈っておくことにするよ」
「祈りは届きますよ。ドラゴンは全てを見てますから」
うん、航路が開く所も見てたはず。
「そうか!ならばより真剣に祈るとするよ!」
ドラゴンに会いに行ったら、伝えますよ。
とは言わない、言えないけどな。
「で?ジークの婚約者が妖精の様に美しいんだって?」
ぶふぉっ!ゴホッゴホッ!
「どこからそれを……」
「そりゃ謁見の後の噂話とか聞こえて来るしな。会ってみたいんだけど!」
「ダメです」
「えぇっ!?何で!?」
「えーとー」
ちらっと伯父を見る。
王子は知ってる?婚姻とお披露目。
「あぁ、秋にはお披露目があるから、その時会えるだろー」
「その前に会ってみたかったのに!」
あ、知ってんのね。
「今は式の準備で忙しいですし、式の後もお披露目の準備で忙しいので、我慢して下さい」
「ああ女性は大変だよね……。分かったよ。でも!お披露目ではキチンと紹介してもらうからね!」
まぁ式の後ならいいか。
「分かりました」
万が一にでも、シャルルを見初めたなんて言われたら殺しかねんからな。ふん。
「クリスとユージーンには婚姻の話はないのか?」
「「え?」いや、まだ考えていませんね」
「もうそろそろだろ?」
「フェルに言われたくないな」
はははっ
「王家はねー、難しいんだよねー。ま、その内その内……」
「逃げてるのも同じか」
あははははは!
「では、そろそろお開きにしようか。ドラゴンの話も聞けたし、有意義な時間だった!また来てよ」
「「「はっ!」」」
◇◇◇
「だー、疲れた……」
「家族の括りにされても、相手は王族だからなー。気は使うよな」
ははっ
「クリス兄さんやユージーン兄さんは歳も近いし慣れてるだろうけど、俺会うのも3?4?回目位だし、気を張るよ」
「フェルも気を許した相手には気さくだから大丈夫だよ。そうじゃないと研いだ刃のように鋭いけどな」
「流石、あの王様の子って所か」
「そうそう。切り替えが凄いんだよ。見習わなくちゃな!」
「今日の議会でのジークも中々良かったよ!痺れたね!」
「えっ!聞きたい聞きたい!ジーク、家に寄るだろ?」
「俺は帰る!シャルルが待ってる!」
「えぇぇ!なんだよぉ!聞かせろよぉ!」
「クリス兄さんから聞いて!俺は!帰る!」
「ちぇー!じゃあ今度またシャルル連れて来て!俺も会いたいし!」
「ドレス作り終わってからになるよ」
「あぁそっか。「女性は大変だ」」
※一括で失礼します。誤字報告ありがとうございます!
読み込んで頂いてありがとうございます┏○ぺこーー!




