マリアージュ。〜計画その7 マリアーナさん〜
「ジーク!聞いて!身長伸びたの!2cm!」
「おぉ!やったな!」
ひょいっと抱っこするけど、2cmじゃ何も変わらない。
むぅ。
「ジーク、ちょっと採寸させて」
「採寸?」
「うん、わたしのドレスに合わせて、ジークの服も作るよ」
「えっ、大変じゃない?大丈夫?」
「大丈夫だよー。寧ろ合わせないと。別々に作る方が合わせるのに大変でしょ?」
この世界にレンタルの礼服などないのだ。
しかもSSランクがレンタルなんて使わない使えない。
メモ片手にジークを鑑定。
…………うそでしょ?
「ねぇ?何で身長伸びてんの!?」
「えっ?」
「わたしが伸びた分よりも1cm高い!3cmも伸びてるぅぅぅぅ!!」
ちくしょう!せっかく近づいたと思ったら離された!
「あー……男は50位までは伸びるって聞くからなぁ。シャルルはまだ伸び盛りだろ?これからだよ」
ごじゅう……。
あれ?ジークって何歳なんだろう?
そういや意識してなかったな。
あれ?これ聞いてもいいのかな?
あ、何か今はダメな気がする。
何となく。
「シャルル?」
時々感覚が地球とこっちで混ざって混乱するなぁ。
そもそも寿命が違いすぎる。
「おーいシャルルさーん」
「あ、はい!考え事してた!うん、長期計画で構える事にする!」
はははっ
「小柄でもシャルルはシャルルだろ?気にし過ぎると余計に伸びなくなりそうだし、どーん!とな!」
そうか、ストレス大敵!長期計画で!
「うん、どーん!とね!」
ちゃちゃっとジークを測ってデザイン、は、マリアーナさんの意見も聞こうかな。
やっぱりその場その場で相応しい格好ってのがあるもんね。
よし。
とりあえずメッセージでマリアーナさんの予定を聞いて、アポ取っておかないとね。
”デンタツ”
”こんにちは。マリアーナさんにウェディングドレスと男性の礼服について教えて欲しい事があるんですけど、近々お時間頂けませんか?シャルル・エイプリル”
チリン 相変わらず早い!
”こんにちは。とうとうお式の準備に入るのね!?楽しみねぇ!明後日の5の鐘以降なら空いてるわよ。ギルドに来る?私が行きましょうか?そろそろ落ち着いてきてはいるけど、来るのは不安でしょう?マリアーナ・コルス”
あ、そうか。うーん……
「ジーク、明後日マリアーナさん呼んでもいい?服について聞きたい事があるの」
「もちろんいいよ」
”では、お手数ですが家に来て頂けますか?よろしくお願いします。シャルル・エイプリル”
っと、よし。
お茶菓子とお土産の準備しておくか!
◇◇◇
カランコロン〜♪
「いらっしゃいませ!お呼び立てしてすみません」
「こんにちは!いいのよ〜!お邪魔します」
リビングに通してお茶を出す。
「それでっ!?ドレスってどんなの!?」
ぐっ!食いつき凄い!
「いえ、その前に!聞きたい事がっ!」
「あぁそうね、がっついちゃったわぁ」
うふふふふ
お茶を飲みながら市井での式はどんな風にやるのかを聞いた。
ママに聞いても貴族仕様だし、今回は身内だけの式だからね。
「実際、貴族も平民も規模は違うけど、やる事は変わらないのよ。教会で祈りを捧げて誓う。平民の式はそれで終わるけど、貴族はお披露目パーティーをやるわね。シャルルちゃん達もお披露目するでしょう?お式はいつなの?」
「花の月1日に式を挙げて、秋にお披露目です」
「花の月!?もうすぐじゃない!えっ!ドレスは!?」
「これから作ります」
「えぇぇ!?間に合うの!?生地だって選ばないとだし、レースも使うでしょう?宝石にボタンに!取り寄せる時間だって掛かるのよ!?」
「あー、用意してあるんで!大丈夫です!」
「は?用意してある?」
「はい!」
聖域の裁縫部屋に、いつの間にか……ね。
生地各種、レース各種、ボタン各種、宝石ビーズ大量……。
ビーズがモノホンの宝石なんだよ?笑うしかないでしょ。
ははっ……
「用意周到ねぇ。まぁ縫うだけなら大丈夫、かしら、ね」
「それで、皆さんどんなドレス着ますか?色は?男性は?」
「そうねぇ。貧富の差で変わるけど、こんな感じ」
サラサラっとスケッチしてくれたデザイン画は、本当にシンプルなドレスだ。
ベールもないし、上から下までストーンと落ちたロングドレス。
色は決まってないらしい。
「貴族だと、こんな感じかしら」
おぉ、こっちは凱旋パーティーで着たような、所謂お姫様ドレスだ。
わたしが描いたデザイン画はこっちに近いな。
まぁSSランクの式だし、フランシア家も来るから、こっちが無難か。
「男性は平民だと礼服、貴族は騎士服が多いわね」
騎士服かー、装飾が分からん!
これはママに助けてもらうか?
いやマリアーナさんは服飾ギルマスだ。うん。
「ジークフリード様は騎士服でしょ?シャルルちゃんは、やっぱり貴族仕様にするわよね?」
「はい、フランシア家も来るので貴族仕様にします」
「……まさか、そこに私も呼ばないわよね?」
「え?呼びますよ?」
「むむむむむむ無理っ!!一平民が筆頭公爵家の方々と同席なんて無理っっ!!!」
「えぇっ!?何で!?」
「マイクやラシードやゴードンは元貴族だから大丈夫だろうけど!私は根っからの平民なのよ!?無理無理無理無理無理無理無理無理っっ!!!」
マジか!どうする!?




