マリアージュ。〜王様の言うことにゃ逆らえない?〜
「丁度お茶の時間か、嬉しいねぇ」
「パパ、ジーク、お帰りなさい!疲れた顔してる」
「シャルル、君は地団駄を踏む大人を見た事はあるかい?」
地団駄!?
「いえ、ないです、ね」
はぁぁ……
「正に地団駄を踏む大人に会ってきたんだよ。そりゃ疲れるだろう?」
ぶはっ!王様が地団駄!?
「流石に大の字になって暴れはしなかったが」
ぶふっ……これは、笑ったら、ダメな、案件。
なのに、肩が震えるっ!
「凄かったぞー。足をダンドン踏み鳴らして嫌だ嫌だと叫ぶんだ。いやもちろんポーズだけどな?あの人お茶目だと思ってそうだけど、宰相はシレーっと知らん顔。毎度の事なんだろうなぁ」
と、遠い目をするジーク。
「まぁ、兄上は昔から冗談が好きだからなぁ。しかしアレはない。アレはダメだ」
「仮にも賢王と呼ばれる人なのに、身内だけだと、途端に坊主になるよな。俺でもアソコまでしないよ」
ははっ
あの威厳たっぷりな人が坊主……?
パパとそっくりな顔で地団駄……?
想像つかない。
「と、なると……。チャーリー、警備に抜かりはないわね?」
「はい、奥様。万全でございます」
警備!?
「お忍びで特攻して来るわよ」
は?
「あぁ、怪我をさせたらマズイので、1箇所だけ緩めに、そこを重点的に監視するように」
「はい、旦那様、心得ております」
え?
「そうしないと怪我してでも肉弾戦で押し入って来ようとするから、わざと1箇所緩めるんだよ」
ぶはっ!王様何してんの!?
◇◇◇
晩餐の時間に、その人はやって来た。
チャーリーさん、お仕着せ軍団が、俄に慌ただしくなったと思ったら、
「あー、来たな」
え?
バタバタバタバタ!バンッ!
「酷いよエルバート!あ、晩餐中?チャーリー、私にもお茶くれ!」
「畏まりました」
「チャーリー、お茶はいらん。帰ってもらえ」
「畏まりました」
徐にその人を担ぎあげるチャーリーさん。
担ぐの!?
「えっ!?ちょっ!!えーるーばーあーとーぉぉぉ!!」……
ドップラー効果の雄叫びを上げながら連れていかれた。
え?みんな普通に食事してるけど、え?何これ。
「あー、いつもの事だから」
ははっ
いや、ジーク?わたしには非日常ですよ!?
「王様……だったよね?」
「そうね、放っといていいわよ。きっと茶話室辺りで粘ってると思うから」
えっ!?そんな感じでいいの!?
◇◇◇
食事後、茶話室に行くと、
「やぁ!」
ホントに居た!
慌ててカーテシー!
「あぁいいよいいよ、ここにいる間はエルバートの兄だから〜。畏まらないでね〜」
こちとら平民だい!
お貴族様なら畏まる大義名分あるんすよ!
「シャルル」
ふわっと抱っこされたと思ったら、お膝に連行された。
王様の前ですよ!
「おぉ!ふたりは絵になるな!うむうむ、お似合いだ!」
絵師でも呼ぶか…
変な事が聞こえた気がする。
「さて、兄上?申し開きを聞こうか」
パパの笑顔が怖い。
ママも怖い。
何ならお兄様方も怖い。
この人、王様だよね!?
「ジークが私を仲間外れにするからじゃんか」
「伯父上が来るとなると警備やら交通整備やら、大事になるからですよ。お披露目はやるんだし、それでいいじゃないですか」
「だから、お忍びでならいいだろ!?可愛い甥っ子の式に出られないなんて!」
うわ、その為に直談判しに来たのか!
「そのお忍びの為に何人の影が駆り出させると思うんですか?今だって結構な人数が出てますよ」
どこに!?
思わずキョロる。
気配察知にも引っ掛からないし、気配探知……いた。
深く探ると居るわ居るわ。
総勢30人位。
「へぇ!そんなに居る?私には分からんな。ジークは分かるのかー、凄いな!」
はっはっは!
「そりゃ影の存在を探知出来るほどの人はそんなに居ませんよ」
あ、黙っとこ。
「あなたの行動で、みんなが大変な思いをするんですよ!」
「知ってるー!だけどこうやって外に出るのなんか年に数回じゃないか、みんな頑張れ」
はっはっは!
確信犯!
「だから式にも参加させて?させてくれなかったら突撃する!」
「……ジーク、諦めろ」
「父さん!」
「ここまで突撃して来たんだ。この人はやると言ったらやる」
にっこにこの王様。
仏頂面のパパとジーク。
呆れ顔のママ。
無表情のお兄様方。
わたし?オロオロですよ!
「シャルルちゃん」
びくっ!
「はいっ!」
「よろしくね!私の事はフェルディと呼んでね!」
「出来ません!」
無理に決まっとる!
何言うてるだ!
「えー、お茶しにおいでって言ったのに来ないし、名前で呼んでもくれないし、私の事嫌い?」
この人めんどくせぇ!!
「伯父上、シャルルに無理強いしないで下さい。お茶は俺が行かないって言ったんです!」
「ジーク酷い!」
「私も行かない方がいいと思ってたよ。流石ジークだな」
ははっ
「エルバートまで!?私は孤独ぅ!」
あぁ、わたしの式が!
前途多難!




