王城。〜その1〜
ぽかーん。デカい。流石お城。
わたしと5人組。
「惚けてる時間はないわよ!」
「え?あっ!?」
あああぁぁぁぁっという間に部屋に連れ込まれ、ひん剥かれ、プリンセスラインの白いドレスを着せられ、化粧され、髪を結われ、ドレスの重さに耐えている。
こそっと身体強化!むんっ!
「あの、お嬢様?もしかして身体強化されてます?」
「はい。このドレスの重さに生身じゃ耐えられません」
「そうですわよね……ハンターと言えども、こんなに華奢ですもの。しかし、謁見から晩餐会まで、かなり時間掛かりますけど、大丈夫ですか?」
「耐えます!」
大丈夫!後でトイレ行ったら軽減魔法掛けるから!
「今からじゃ魔法使いも呼べないし、申し訳ない事でございますが、頑張って下さいまし!応援しておりますから!」
まったく、女性のことを考えて頂きたいですわ……ぶつぶつ
応援ありがとう。
「お気遣い感謝します。大丈夫です。ハンターの意地にかけてやり切ります!」
「お美しいのに頼もしい!流石でございます!」
この侍女さん、ハンナさんと言う。
いい人だ。
そうこうしている内にお迎えが来た。
コンコンコン
「どうぞ」
「シャルル!うわぁ!キレイだね」
ちゅ
「ジークも素敵!」
まるっきり王子様になったジーク!
流石に王城で王子じゃない人を、王子様とは言えないよね。
「ジークは流石に着慣れてる感じがするよ。わたしはドレスに着られてるみたい」
ふふふっ
「「そんな事」あっ」
ぶはっ!!
「大変失礼致しました……」
「ハンナさん、ありがとう」
にっこり
「ハンナと言うの?シャルルは綺麗だよね」
「はいっ!こんなに美しいお嬢様はおりません!」
力一杯宣言されると照れる。
「本日だけでも、お嬢様にお仕え出来ること、本当に嬉しく存じます」
あわわわわ!
どうしよう!ジーク!
はははっ
「シャルルは貴族の対応に慣れていないんだ。ハンナ、頼むね」
「お任せ下さい」
深々とカーテシーをするハンナさん。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ハンナさんがお付きの人で良かった!
また睨まれたりしたら、王城では生きていられない!
平民と見下さず、ちゃんとゲスト扱いしてくれるのはありがたい。
「あの、ハンナさん。お嬢様ではなく、シャルルと名前で呼んで貰うのは失礼に当たりませんか?」
「お名前でお呼びしても宜しいのですか?」
「はい。失礼に当たらなければ、是非」
ぱぁぁ!
「ありがとうございます。ではシャルル様、とお呼び致します。わたくしはどうぞ、ハンナ、と呼び捨てで構いません」
うぇ!
「いえ!慣れてなくて、さん付は、その、見逃して下さい……」
ふわっと微笑んだハンナさん。美しい。
「では、慣れたらで構いません。シャルル様、そろそろお時間でございます」
「レディ、お手をどうぞ」
スっと手を差し出すジーク。
わ!本当の本物のエスコートだ!
ドキドキしながら手を乗せる。
指先にキス。
ジークの隣に立つなら、無様は許されない。
胸を張って、顔を上げて、微笑んで、一緒に歩くんだ。
”まぁ……お顔付きがますますお美しくなって……”
やったる!!
あっ!軽減魔法掛けてない!
◇◇◇
謁見の間。扉前。
「お、来たな!シャルルちゃん美しいね!」
「ありがとう。アレクさんも凛々しいです」
5人組は……。
推して知るべし。
「俺、歩く時に同じ方の手足が出そう」
「俺、口から心臓出る」
「俺、吐く」
「……」
「……う」
う、って!
「大丈夫。陛下も人だし。その他はパピ(かぼちゃ)だ」
ぶっ!
「ジークさん、流石にパピは……」
くくくっ
「さぁ、行くぞ」
◇◇◇
騎士さんが立つ扉が開く。
奥に長い部屋。
王様が座ってる。
「最深部到達!SSランク、ジークフリード様!
Aランク、シャルル・エイプリル様!」
ジークとわたしが通され挨拶。
「同行者!Aランク、アレクサンド・ジャクソン様!
エアハルト・アーベル様!
ファビアン・バルテル様!
オルゲン・フリック様!
ハンス・ゲーベル様!
ギュンター・レーム様!」
おぉ!フルネーム初めて知ったよ!
いや!それ所ではない!
付け焼き刃のカーテシーはまだ出来てるか!?
静々とレッドカーペットを歩き、部屋の奥1/3まで入ったら、深く挨拶。
ジークとわたしの後ろには6人。
うぅ視線が刺さるぅ!
こそこそ何か言ってる!身体強化で聞こえるけどっ!
いや聞かない方がいい!
「陛下にご挨拶申し上げます」
ジークが膝を突き、わたしもカーテシーから膝を突く。
後ろがそれに倣う。
「この度は大儀であった。近う寄り顔を上げよ!」
エスコートされ立ち上がり、もう少し近づく。
顔を上げて王様を見たら、あらま!パパそっくり!
あっ、逆か、パパが王様にそっくりなんだ。
宰相さん?が、うんたらかんたらなんちゃらほんちゃら言ってたが、うん、分からん。
悲願がなんたら、報酬がなんたら、よくやった、は分かったよ。
とりあえず目を伏せて聞いていた。
身体強化継続中!はよ終われ!




