アレクと秋の準備。
あれ?この人何処かで……。
「……アレク、何でここに?」
「ジークこそ!仕事じゃないって、何でここに?」
「避暑に来ただけだよ」
「っかーー!贅沢!てか!彼女さん、お久しぶり!」
「お久しぶりです?」
「あれ?もしかして覚えてない?ジークの親友のアレクだよ!アレクでいいよ!」
あ!あぁぁ!思い出した!デンタツで話したあの人!
確か、アレクサンド・ジャクソンさんだったはず。
「思い出してくれた?」
「はい、お久しぶりです。シャルルでいいです」
「おいアレク!お前は仕事か?じゃこれで……」
「おいおいおいおい!酷いじゃないのよー!仕事だけども!素っ気なさすぎ!しっかし、生で見ると余計に可愛い彼女さんだなぁ!ジーク止めて俺にしない?」
あははははは!
そうだった。こんな感じの人だったわ。
「どこ泊まってんの?定宿?」
「いや……知り合いの家を借りてるんだ」
「へぇ!いいね!俺「アレクは泊まれないよ?」」
「何で!?」
「言ったろ?知り合いの家だって。勝手に泊められないよ」
「ええぇぇ!くっそー!俺も行けたら夜通し馴れ初め聞けるのに!」
えっ!?それは、ちょっと……
「無理」
「あっ、仕事だったわ」
あははははは!
テンション高いな!
「じゃあ今度聞かせろよ!連絡すっからな!ちゃんと出ろよ?シャルルちゃん、またね♡」
ちゅっ!と投げキッス。
ぺっぺっ!と払うジーク。
タタタッと走り去るアレクさん。
「……嵐のような人だね」
「……デンタツ持ってねぇはずだよな……あぁ、いつでもテンション高くて疲れる。あれでも幼馴染だからな」
「あっ!て事は貴族さんなんだ」
「あぁ、侯爵家だな」
ひぇ!?あれで!?って言ったら失礼だけど!
軽いわーチャラいわー。
家まで歩く道々、アレクさんとハンターになった事を聞いた。
ジークの追っかけハンターだったのね。
「15で家を出るまでも、ほぼ毎日うちに来てたよ。まぁあのテンションの高さに救われた事もあるんだけどな」
ははっ
「細かい事は気にせず、行動あるのみ!って感じするわ」
「正にその通り。自分のペースは崩さない。だから疲れてしまうんだよなー」
ふふふっ
「幼いジークが振り回されてるのが目に浮かぶよ。でも嫌味じゃないから側にいても大丈夫なのね」
「シャルルは凄いな。見てたみたいだ」
はははっ
パパは宮廷魔術師団長、ママは宮廷近衛副騎士団長。
ジークが幼い時は、ふたりとも仕事で家に居るのが少なかったらしい。
お兄様達は学園で寮生活。
寂しかった時期をアレクさんと過ごしたらしい。
ジークが12の時に、ママは副騎士団長を辞して家に入ったらしいが、12と言えば思春期に入っていた頃だろうし、ママに甘える時期はとうに過ぎていただろう。
お兄様達は、既に仕事に行ってた時で、ジークも学園に入っていたし、15歳で卒園して家を出た。
その時に一緒にハンターになったんだって。
もうほぼ兄弟だよね。
「兄さん達も、あまり面識はないけどアレクの事は知っているよ。来ると逃げるから面識ないんだけど」
ぶはっ!!
「ジークの家でもあのままか!物怖じしないのね」
「うん、だからハンターになってよかったんじゃない?ピッタリだよ。あの行動力とかなー」
確かに、お堅い貴族様には向かなさそう。
でも、幼馴染か。
ジークの小さい時を見てみたかったな。
くすくすっ
◇◇◇
その日はウルディアに泊まって、翌日家に帰った。
まぁ扉1枚隔てて、すぐに王都なんだけどねー。
そして3日後に嵐予報の魔法カードが届いた。
夏も終わる。
「秋の用意って特にないよね」
「あぁ、服位じゃないか?」
はっ!!服!?
聖域帰ってないから、1枚も作ってないじゃん!!
ジーク居るし聖域行けないし買うしかないのか!
「ジーク大変、秋の服買いに行かないと」
「お?それなら俺も買うかな。ほぼハンターの服か、貴族仕様のが少しだし」
「時間あれば作ったんだけど、この夏色々あり過ぎて作るの忘れてた」
はははっ
「確かに、内容の濃い夏だったな。支度して出るか」
「あっ!ガルボさんの所にも寄りたい!」
「いいよ、なら先にガルボさんの所に行こう」
シェル型と、フィナンシェのインゴット型お願いして、口金探して、よしよし。
じゃあ出発!
◇◇◇
「こんにちは!」
「らっしぇい!おう!この間はありがとうな!すげぇ楽しかったわ!」
がはははは!
「わたしも楽しかったです!今日は、この2つをお願いしに来たのと、絞り用の口金ないかなと思って」
「こりゃまた変わった型だな。押し型でいいか。鉄板1枚に8個でいいんだな?何枚いる?」
「うーん、4枚あったらいいかな。うん、両方4枚でお願いします。もしかしたら後で追加するかも」
「うっしゃ、口金はここな」
おぉ!何種類かあるではないか!
全部買おう。
絞り袋も多めに買って、お会計。
「……ガルボさん?」
「なんだ」
「少なくない?」
「ない」
「あぁ、型の分は出来たらって事だよね?」
「……ん?」
「ん?じゃないですよ!出来上がったら押し付けますからね!」
「へぇへぇ、嵐が終わったら取りに来な」
「……分かりました。ではお願いしまーす!」
あの顔は要注意だ!!




