奪還作戦。〜その後5〜
その日はジークの実家に泊まった。
もう連泊何日目よ。
トーちゃんは頭を上げられるようになり、少しずつ回復しているようだ。
カーちゃんは愛嬌を振りまき、あちこちを笑顔にしている。
幸運を呼び込むと言われるカーバンクルだけあるわー。
見てるだけで笑顔になるって幸せだものね?
カーちゃんは特に人懐こいと思う。
大体はわたしかジークの肩や膝に居るけど、パパママはもちろん、クリスティアンお兄様やユージーンお兄様が帰宅すると、走っていって、おかえりのスリスリをするようになった。
「あぁっ!カーちゃん!ただいま!」
2人ともメロメロだ。
「シャルルもただいま!ハグは?」
べしっ!
まぁわたしにもだけど。
ジークが溺愛ぶりにびっくりするよと言っていたが、この家の人は愛情が深いんだなぁと思う。
当然ジークもだ。
え?さっきの べしっ! は、ジークが手を叩く音ですよ。
毎回恒例ですね。
その代わり
「カーちゃん!慰めてくれるんだね?」
と、スリスリされている。
ユージーンお兄様は、早速コステア子爵の取り調べと言う尋問をしたそうだ。
今日の今日だよ!?早くない!?
って、そうだった。この世界、判決が早いんだったわ。
「ふっふっふ。出たよ、証言。母さんが俺を頼れって言ったんだよね?おかげで楽しい尋問出来たよー」
「えっ!?」
「ちょーーっとアレコレ使って素直にさせたら、出るわ出るわ。素直って素晴らしいよね?」
アレコレ……。
うん、聞いちゃイケナイ。
「やっぱり居たよ、ジャファーソン。カーバンクルの体毛を餌に捕獲してたらしい」
「体毛?」
「幻獣だから、仲間がいる場所が分かるみたいだね。罠にカーバンクルの体毛を使って、魔法を封じる檻に入れるみたいだ。カーバンクルって魔法に長けた種族でね、魔法が使えるなら、そうそう捕まらない筈なんだ。まぁ文献で読んだことしかないから確証はないんだけど」
酷い……。
「カーちゃんは1度捕まった事があるから、今回はシャルルを頼ったんだよね?」
キィ!
「正解だったよ、よかったね。トーちゃんは弱ってしまったから、罠に使うために殺される前だったみたいだ。あのまま檻に入れておけば、檻から出さずに死んでしまうからね。ジャファーソンから受け取った翌々日にジーク達が踏み込んだらしい」
何ですと!?ムカムカする!
「ジャファーソン家に今日踏み込んでるはず。日を置くと隠されかねないから。カーバンクルの体毛が出れば、すぐにお縄だ。そして、今回しょっぴければ、ピクシー事件の事も尋問出来る」
「カーバンクルとは繋がらないのに?」
はははっ!
「素直になっちゃえば何を聞いたって大丈夫!ポロッと口から質問が出ちゃえばいいんだから!」
えっ!?いいのそれ!?
「いや、実際はピクシー事件の証拠がないとダメなんだけど、自供からの家探しでも問題ないよ。前回は家が関わってると思われてなく、ジャクリーンの魔法耐性が強くて聞き出せなかったからね。魔女を自称するだけはある」
なるほど。
ジャクリーン1人の犯行だと思われてたんだ。
「アマンダは、極刑を免れ生涯幽閉になりそうだよ。精神が壊れていた可能性が強いし、成長する時に、こうなるように、と誘導されてた痕跡が見えたからね。封印を破ったのも問題だったが、ジャクリーンから強力な解呪の魔道具を貰っていて、それを使ったみたいだし」
あなたは美しい、あなたは全てを手にできる。
確か、祖母に言われて育ったと聞いた。
全ての元凶は祖母って事?
アマンダも、ピクシーも、もしかしてカーバンクルも?
「本来、兄さんの仕事じゃないよな?」
「そうだねー、でも魔法が関わってる事件だし、未解決事件だったから依頼も来てたんだ。俺じゃなく師団にだけど。しかし、あんなにボンクラだと思ってなかったから師団全部鍛え直しだ!」
ひぇ!?師団の方々がんばれ!
「私も甘やかしていたつもりはないがなー」
うーん……
と、パパ。
「若いのが入ってきて、ちょっとたるんでるんだよ。大丈夫、すぐに使えるようにしてやる」
ふふっ
はい、黒い笑顔のお兄様出ました。
負けるな!魔術師団!
「ジャファーソン家は取り潰しになるな」
「落ち目の伯爵家だし、ホルディアにも領地は僅かだし、仕方ないよ。俺、ジャクリーンの家を家探ししたいなー。魔術師団としては調べ尽くすつもりだけど、実際にこの目で見てみたい」
「それは単なる興味だろ?」
「まぁね」
呪物。
単なるお守りや、幸運のアイテムだけならまだしも、呪いの為の物もある。
魔法が存在するこの世界では、その効果は顕著だ。
ジークが持たされた呪術避け、あれも呪物の一種だし。
人を呪わば穴二つ。
因果応報。
自業自得。
んぉ?何か色々出てくるな。
「ま、あと少しで気持ち的にも平和になるさ。ね?カーちゃん?」
キキィ!
※誤字報告ありがとうございます!




