奪還作戦。〜その2〜
貴族街の特別門でジークが門兵に話し掛ける。
「ジークフリード・フランシアだ。中に用事がある。こちらは俺の連れだ。入っても問題ないな?」
「はっ!フランシア様!こちらからお入りください!」
ビシっ!と敬礼。
素晴らしい。
ジークがわたしの手を取り、にっこり笑う。
「さ、行こうか」
「ええ」
わたしもにっこり、お淑やかに……。
肩にはカーバンクルがいる。
門兵さん、目を見開きすぎ!落ちるよ?
心做しかカーちゃんも胸を張ってるようだ。
やめて!笑うから!
『随分端のようだな』
『うん。こっち』
『シャルル分かるの?』
あ、マップあるって知らないよねぇ……
よし
『カーちゃんが教えてくれてる』
必殺!人のせい!カーバンクルだけど!
カーちゃんてしてししないで!
『ここら辺は子爵か男爵辺りだな。家名が分からん』
『ジーク、あそこ』
ほぼ人が居ないのに、そこだけ厳つい兵が居る。
こそっと、カーちゃんにわたしの胸元に入ってもらった。
『カーちゃんそこに入れるの!?俺の胸なのに!』
『そんな事言ってる場合じゃないでしょ!』
わたしは巨乳気分。
ぶふっ
『どうする?正面突破?』
『ジークが門兵の意識を逸らせてくれたら、気配遮断で中に入って来るよ』
『中にも人が居るんだぞ!そんな危ない事させられない!』
『ならどうしたら……』
キィキキィ!
『えっ?カーちゃん囮になるつもり!?危ないよ!』
キキィ!
と自分の胸を叩くけど、なんだろうこの子、やけに人臭いわね!
『なら、カーちゃんが門兵躱して中に入ったら、探す体で突入するか。カーちゃん行けるか?』
キキィ!
『カーちゃんに結界張っておくから、無理しないでね?』
キキィ!
と言うか、ジークと念話で話してるのに何で分かるの!?
幻獣の力なの!?ないしょ話出来ないじゃん!
キィ?キキィ
ふっ
あ、何か笑われた気がする。
『じゃあ、行けるか?』
キィ!
わたしの胸元から降りて走っていく。
あ、門兵煽ってんじゃん!
飛んで躱してステップで躱して。
門兵、踊ってるみたいだ。
入った!
『こっちも行くぞ!』
サムズアップで応える。
◇◇◇
「あー!ここにうちのペットが入ってしまった!探してもいいか?」
演技下手っぴ!
「は?あんた誰ですか?さっきのがペット?躾がなってねぇな!入るのはダメだ!こっちで探すまで待ってろ」
「ここの家主は誰だ?フランシア家のジークフリードが来たと伝えてくれ」
「ああん?フランシア?ちっと待ってろ!」
と、壁の立体を出して伝えると、すぐに執事さん?みたいな人と、やけに派手ブなオジサンが出てきた。
「こ、これはこれはフランシア家の、何用でしょうか?」
「うちのペットがここの家に入ってしまってね、連れ戻したいんで中に入ってもいいだろうか?」
「え?おまえは見たのか」
「へえ、中に入って行きました」
ちっ
「いえ、こちらで探すので、暫しお待ち頂けたらと……」
舌打ちしたよ!?
「ほぅ?フランシアを門先で待たせるのか?随分と傲慢だな?」
「い!いえ!そういう訳では……」
すんごい大汗かいてるけど……
「では、こちらへ……」
中に案内されて、応接室に通される。
趣味悪い装飾。おぇ。
「あー、茶はいらん。ペットを探させてくれ」
「い、いえ!こちらで探しますので!ここでお待ちください!」
「いやいや、俺とこの子にだけしか懐いてないんだ。ここの者達に何かあっては不味いだろう?さ、探しに行こうか」
「お!お待ちくださいぃ!!」
「何か調べられたら困ることでもあるのか?」
「そ、そういう訳では……」
「なら問題ないな」
ぶふっ!強い!
わたしとジークが歩くと、その後ろを着いてくる。
「いや!そちらの扉は開けてませんから!ペットは入れません!」
だの、
「こちらへは行けないようになってます!」
だの、当然無視だ。
いい加減ウザイので、目的地までガンガン攻める。
『ジーク、下だ』
『分かった』
「下にも部屋があるな?狭い所が好きな子でなー、そっちかも知れん。行ってもいいよな?」
「えっ!?いや!それは!」
「何か?」
「流石にフランシア家の坊っちゃまでも!横暴が過ぎますぞ!」
「で?何か問題あるか?」
と、聞く耳持たず、どんどん進む。
お貴族様怖ぇわ!
『ここ!』
ドアを開こうとするが魔法鍵!
うぅん!困った!!
どうしよう!?




