ジークの実家。〜サンセバスチャン〜
「おはよ」
ちゅ
「ん……おはよ」
あれ?あぁそうだ。ジークの実家にお泊まりしたんだった。
「1の鐘半だけど、起きる?まだ寝てる?」
「ん、起きる」
「じゃ着替えて庭を散歩しようか。朝メシまでちょっと時間あるし」
「うん」
んーーー!と伸びーーん!
「洗顔は水使うよね?こっちだよ」
ジークはクリーンで済ませる派、わたしはじゃぶじゃぶしたい派。
その方がスッキリする気がするんだもん。
とてとてとジークの後を着いて行くと、まぁ豪奢な洗面台!
使うの躊躇するよ!
じゃぶじゃぶっと顔を洗って、タオルあったけど、ドライで済ませる。
着替えて、庭に行くと、まだ朝露の残った花々が迎えてくれる。
「キレイだね!ホント公園みたい」
はははっ!
「広さはあるからねー。俺もまだ行ったことない所がありそうだよ」
この家の子なのに!
そして王都なのに!
そんでもって、スカートじゃなければ走り回るのに!
来る時に見た噴水辺りまで行って、ぐるりと周りUターン。
それでも結構歩くね。凄いわ。
「そろそろ戻ろう」
手を繋ぎ、家まで戻ると、チャーリーさんが朝餐の支度が整ったと教えてくれた。
「おはようございます」
「おはよう!良いお天気ね!今日も暑くなりそうだわ」
「お散歩して来たけど、既にお日様カンカンでしたね」
パパもお兄様達も揃って、和やかに朝ごはんを食べていたら、ジークにデンタツが入った。
席を立って扉から出て行く。
「来たかな」
パパが言う。
「え?」
「事情聴取だよ。容疑者は捕まってるし、本来ならもっと早いはずだけど、フランシアの名前を出したからね。慎重になってるはずだ」
フランシア家!流石王弟殿下!
ジークが戻ってきて、
「父上、本日の午後になりました。お願いします」
「あいわかった。シャルルはこの家に居なさい」
「はい。よろしくお願いします」
「シャルルはママと一緒に居ましょうね?心配しなくても大丈夫よ。ね?」
「はい」
「シャルル、大丈夫だよ。待っててな?」
なでなで
「うん。待ってる」
やっぱり顔が強ばってしまう。
「事情聴取が終わったら、判決まできっとすぐだと思う。呪いはそれだけ事が重いんだ」
その後は、お兄様達は仕事に行き、午後まで4人で過ごした。
別にジークに非がある訳ではないが、何事も起きなければいいな、と漠然と不安になっていた。
◇◇◇
午後になり、ジークとパパは出掛けて行き、ママにケーキのレシピを料理長に教えて欲しいと言われ、今度のお茶会に持っていくケーキを一緒に作った。
やっぱり、サンセバスチャンが印象的だったらしく、レシピは料理長に渡して、作り方の伝授。
2種類のバターケーキを作って、組み立て方さえ解れば、後は簡単!
「これは考えつかないし、一見しただけでは作れませんね!いやぁ素晴らしい!」
と、絶賛された。
考案した地球の方!この星でも褒められました!
ありがとうございます!
サンセバスチャンのレシピは門外不出となり、作成に関わった料理長は口外法度を言い渡されたらしい。
わたしが作るのは無問題だ。
その代わり「レシピは売らないで!」と縋られた。
ぜーんぜーんおっけー!
お茶会で披露したら、大絶賛を貰い、ママは鼻高々。
後に ”サンセバスチャンと言えばフランシア家” と、フランシア家を代表するケーキとして有名になるのは、また別の話。
「シャルルにご褒美あげないと!」
と言われ固辞したが受け入れて貰えず、たんまり口座に振り込まれていた。
思わず顔がムン〇の叫びになった。
ママの為ならって言ったのにぃ!
閑話休題。
「他のレシピも教えて欲しいけど、欲張ったらダメよね!だから、また今度シャルルが作ってね?」
「また違うケーキ持ってきま、持ってくるわね!」
うふふ♪
「まだ違うのがあるの?シャルルは凄いわ!ママ楽しみにしてるわ〜」
お茶会は女性貴族の戦場だそうで、マウント取るのが大変なんだとか。
筆頭公爵家(筆頭!)でも、油断ならないそうだ。
マカロンとか、小さくていいかも。と、わたしはほくそ笑む。
むふふふ。
そうこうしてるうちに、2人が帰ってきた。
「おかえりなさい!!」
ぴょん!とジークに飛びついた、が!!ここ!!実家だったよ!!
あああ、いつもと同じ感じでいたぁぁぁ!!
「シャルル、パパにも!」
「ダメです」
「いいじゃないか!」
抱っこ攻防戦。何なのこれ。
「ジーク」
てしてし
ジークの”仕方ないなぁ”な顔を見て降ろしてもらい、
「パパ、おかえりなさい」
きゅっ
「ただいま!」
脇を持って高い高いされた!!!
「ひゃぁぁぁぁ!!!」
「父さん!やり過ぎ!」
「まぁ!」
コロコロと笑うママ。
ちいさな子供じゃないんですけどっっ!!




