彼ママに会うなら!
翌日、わたしは扉で王都へ戻り、ジークはゴレ車で王都に戻る。
「離れたくないよ」
「うん。でも時系列おかしくなっちゃうから、一緒に行けなくてごめんね」
「いや、俺の我儘だから」
ちゅちゅ
「お家で待ってるから、また無理してぶっ飛ばして来たらダメよ?」
「……」
「ジーク?」
「……善処する」
まったくこの人は。なんて可愛いんだろう。
「ジーク、屈んで」
ちゅ
「ね?」
「あぁぁ!やっぱり早く帰る!!」
ぶはっ!
「逆効果だった!!!」
そうして別々に帰路に着く。
◇◇◇
ここは聖域。
わたしは!やる事があるのだ!
彼ママに会うならそれなりの格好が!
会うのは貴族だけど、わたしは平民だ。
でも、清楚は共通だと思いたい!
ので!
”クリエイト”
ちゃっちゃと裁断。
ふふーんふーん♪
白い大きめのスカラップ襟。
紺色の総レースで、控えめなパフスリーブ。
胸から下だけに裏地を付けて、肩、袖、デコルテは透け感で涼しげに。
スカートはたっぷりのフレア。
長さは脛で、裏地は膝まで。
そう、裾にも透け感。
いや待て、透け感大丈夫か?
……エロエロじゃなければいいか。
これにコクーン糸で織られた光沢のある生地で作ったサッシュベルトをしたらいい気がして来た。
後リボンで結べば可愛い。はず。
前ストラップの靴。
……これに白いソックスだと、何かの発表会になってしまうので、ソックスはなし。
そうするとガーターか。
夏は機能的よねぇ。
使ったことある?あれいいよー!
って、誰に言ってんだか。
うむ。
シンプルイズベスト。
これでよし。
後はお土産だなー。
うーん……。
時停棚のケーキ放出するか。
前に作って食べてなかったサンセバスチャン。
ガナッシュコートだけなので、エディブルフラワーでデコる。
三日月形に花を置いてチョコで固定、ミントで葉っぱを演出。
ミルクレープ。
紅茶のシフォンケーキ。
フルーツたっぷりのタルト。
プレーン、ラム漬けフルーツ、オレンジのパウンドケーキ。
こんなもん?
あっ!!箱がない!!
くっ!!……よし。
”クリエイト”
ガラスを板にして、間にレースとドライフラワーを挟み込む。
圧着して1枚板に。
箱型に組んで、蓋も同じ装飾にして、強化魔法、空間魔法、時間停止魔法っと。
なかなかキレイじゃない!
これにケーキを入れて、リボンで結べば!
ほら!可愛い!
あっ!ヘルベスさんへのオークションのお礼、これで書類箱にしよう。
流石にレースと花じゃないよね。
何かないかなー?
この皮キレイな模様。ヴァイパー?ヘビさんだね、これ。
うん、かっちょいい。
The!大人!って感じ。よし、これにしよう。
後はー後はー……。
なんかこれ、パーティーの時と同じ気がする。
何か忘れてないか気になって仕方ない。
でも、今回ジークの実家に行くのは、後ろ盾になってもらうのをお願いに行くのだ。
粗相があってはならぬ。
ご挨拶もちゃんと出来ないようでは、後ろ盾なんてとんでもない。
あちらは王弟。こちらは平民。
雲泥の差なのよ!シャルルしっかり!
気づいたら、既に夕刻。
ジークは今頃どこを走ってるのかな。
また無理してなきゃいいんだけど……。
いや、するな。
間違いない。
なら帰ってきたら、充分労ってあげないとね。
美味しいごはん、作ってあげよう。
何がいいかなー?
◇◇◇
1の鐘前。
カチャ
トントントン
カチャ
カサカサコソコソ
「んっ……」
「あぁごめん、起こした?」
「……ジーク?だいじょぶ……なんじ?」
「まだ1の鐘前だよ。入っていい?」
「……きて」
「うわ、それダメよ」
くすくすっ
「あぁこの香りの中でシャルル抱いて寝るのが1番落ち着く……」
「……うん、ねむって」
ジークの頭を抱いて、再び夢の中へ……
◇◇◇
天蓋付きのお姫様ベッドは薄暗い。
でも、だいぶ寝た気がする。
隣にはジーク。
あれ?
この人いつ帰ってきたんだ?
すやすやと寝息をたてて、ぐっすりこん。
はて?
1度も止まらずに帰ってきたのか。
まったく無茶をする。
あぁでも本当に無事でよかった。
わたしのびっくりハウスも受け入れてくれてよかった。
まだ秘密はあるけど、ジークなら受け入れてくれそうな気がする。
……伝える勇気はまだないけど。
あ、眉間に皺を寄せてる。
なでなで。
うん、よし。
ふふふっ
可愛い寝顔。
ぅぅぅ撫で繰り倒したい。
わっしゃわっしゃとなでなでしたい。
起きちゃうから出来ないけど、起きてる時にやろうとは思わないのは何故だろう?
「……ん」
起きるかな?
んぎゅ!?ぐるじぃ!
てしてし!
ほっ。
ジークの手が、わたしの頭をなでなで。
「おはよ」
「おはよう。まだ寝てていいよ。ごはんの支度してくるよ」
「やだここにいて」
「じゃ、あと少し」
幸せな微睡み。




