ジークの受難。〜その4〜
その夜は、わたしもモーリェに泊まった。
ジークがまだ回復してなかったので、わたしが腕枕してあげたの。
頭を抱いて、髪を梳いて、寝不足だったもんね。
すぐに寝付いた。
なのに、朝になったら逆転してるのは、これ如何に。
おっかしーなー?
「おはよ」
「おはよ。何で逆になってるんだろね?」
「シャルルがもぞもぞと下がってきて、いつもの場所に収まったよ?」
まじか。
なんてこった。
これじゃー癒す効果は半減じゃないか。
「俺は癒されたよ?」
じーー。
「どした?」
「うん、顔色良くなってる」
「癒されたって言ったでしょ?」
むぎゅーーーっ!
ちゅ
「起きて何度も確かめちゃった。シャルルが居るんだなって」
むぎゅむぎゅ
「どした?」
「安心してるの」
「ぎゅーして安心なの?」
「うん」
「お返し」
ぎゅうう
「ぐるじぃ」
ははっ!
「今日はどうするの?」
「ジークに着いては行けないし、王都に居るはずのわたしがここに居るってバレたら厄介なので、この家を出ずに王都とここを行き来する。ここに少し荷物置いておく。食材とか服とか」
「うん。なら仕事終わったらここに帰ってくるよ」
「なら、ごはん作って待ってる」
「あぁ!!嬉しいって叫びたい!!!」
「もう叫んでるよ?」
くすくすっ
「ギルマスに、次の宿を探すって言ったの取り消さないと。あと、アレね」
「針」
「そう。きっと魔力特定出来ると思うから、あいつを牢屋にぶち込める。でもね、事情聴取されると、解呪はどうしたか説明が必要になると思うんだ。それについて仕事終わったらシャルルに相談するね」
「うん。その時は仕方ないよ、大丈夫」
ちゅ
「シャルルに不利にならないようにするアテはあるんだ。だから心配しなくていいからね。ただ、魔力で作ったアンプルじゃなく、ガラスのアンプルにしたい」
「分かった、出来るよ。ありがとう。ジーク大好き」
「うん、俺も大好きだよ」
ちゅ
「じゃお弁当の朝ごはん食う!」
ふふふっ
「しっかり食べてね!わたしも食べよーっと!」
クリエイトでガラスを加工して、針を納めた。
魔力のアンプルだと、わたしの魔力が検出されたら面倒なんだって。
そこは抜かりなく、わたしの魔力は抜いておいた。
識庫さん、バンザイ!
◇◇◇
「ジーク!ちょっと来い」
「俺も報告があります」
執務室で、話を聞いた。
「アマンダが道端で発見された。姿は鬼の様だったと聞いている」
「鬼?」
「俺も直接見てないから、聞いただけなんだがな」
「それについて、恐らくコレのせいかと」
「何だそれ、針?」
「俺の手に刺さってました。魔力特定したら奴の魔力が出るはずです」
「まさか……呪いか?」
「恐らく」
はぁぁぁ……
「何してくれてんだか……もし呪いだとしたら、極刑免れないぞ……」
「解呪されなかったら、俺死んでたかもしれない」
「解呪出来たのか」
「してもらった、が、正解ですね」
「誰に?」
「今はちょっと言えないです」
「そうか……マーマンの調査どころじゃなくなったな」
「あ、それについても、コレ」
「鱗!どこにあった?」
「マーマンが登ったと思しき岸壁です」
「さすがSランク。伊達じゃねぇわ」
「偶然ですけどね」
「その偶然を引き寄せる強さも備わってるのがSだよなー」
ははっ!
「まぁ、そういう事にしときます」
「分かった。とりあえず調査もひと段落ってトコだな」
「ですねー」
「後は、あいつか……」
はぁ
「俺も辟易してますよ……」
「だよなぁ。当人だもんなぁ……モテる男は辛いな」
「俺がモテたいのは1人だけなんですけどね」
ははっ!
「言うことが違ぇわ!で、どうする?ヤツに会うか?」
「うーーん……いや、狂気に晒されるのはゴメンですね」
「うむ、その方がいいな。まだ体力戻ってないだろ?今日は帰って休んで……って、宿どうする?」
「あ、大丈夫です。泊まるとこあるんで」
「そっか、まぁもうアイツも来ないから、ゆっくりしとけ。憲兵から連絡あると思うから、デンタツすぐ出られるようにしとけよ」
「了解。じゃ、これで」
「おう、お疲れー」
◇◇◇
”デンタツ”
「シャルル?報告だけで終わったから、今日は帰るよ。うん、いいよ。連絡あるかもしれないから家でボケっとしとくよ。うん、また後でね」
フォン!
あぁ……法廷かぁ……。
これは、やっぱり、お願いするしかないよなぁ……。
デンタツしとくか……。
はぁ。




