はじめて?のお使い。
ドキドキの処女作。
「――!」「――!!」
あぁ……泣かないで、わたしは幸せだったから。
あなた達もどうか笑って……。
さようなら。さようなら。愛する人達……。
あぁ眠いわ…とても眠い……。
◇◇◇
ゆらゆらと揺蕩う意識の中。
「国名:日本からの魂はこちらへ〜。魂の損傷が酷い方はあちらで修復して下さいね〜。修復が終わった方から輪廻の輪に入って頂きますからね〜。ちょっとそこの方!順番ですよ!」
ふわふわと漂い列に並ぶ。
自分の意思…?ではないような、そうであるような。
ただただふわふわとしていた。
「あー、こほん」
「あれ?神様、珍しいですね。どうされました?」
「いやなに、ちょっと魂にお使いを頼みたいと思うてな」
「お使い…ですか?」
「うむ、ヴェルデまでちょこっと」
「はぁ?あそこまで行ったら輪廻の輪から外れてしまいますよ!?」
「うむ、なのでお願いする魂を見つけに来たのだ」
「……、ちゃんとご自身で説明してあげて下さいね。尻拭いは勘弁ですよ」
じろりと睨まれた。
わし神様なのに……。
きょろりと見渡した魂の列に声を掛ける。
「あー、もし、そこな魂よ」
どの魂も自分かと振り向くが、わたしじゃなさそうよね。
「ふむ。そこの者、関係なさそうにしてるお主じゃよ」
「?わたしですか?」
「うむ、見ると現世に柵や未練等は無さげじゃな。魂の損傷も殆どないようじゃ」
「はぁ」
「ちーっとお使いを頼まれてはくれまいか?もちろん褒美は取らせるぞ。チートな能力だ!ちーとだけに!」
ふぁっはっは!と神様は笑うが、どこが面白いのか悩む。
「ただな、行ってもらうのが別の星なのじゃよ。行くと星名:地球の輪廻からは外れてしまう。地球で生まれる事がなくなってしまうのじゃ。もちろん行った先での輪廻に加わるので魂のまま漂うだけには留まらん。きちんと人生を謳歌する事は出来るぞ?大丈夫!最優先でと言っておくから!」
ふわふわとした意識の中でも、考えてみる。
眠る前にお別れはした。
来世でも!なんて約束もしてない。
子々孫々怨んで末代まで祟ってくれよう!なんて事も無い。
何より新たに生まれたとしても、前世の記憶なんてなくなるじゃん?
ならば、どこに行っても良い気がした。
「はい、ではお使い承ります」
「おぉ!そうか!ありがたい!本来ならばわしが行くのじゃが、どうしても行けなくてなぁ。いやぁありがたい」
「行くだけですか?」
「荷物を持って行って欲しいのじゃ」
「えと…わたし手が見当たらないので持てますかねぇ…」
「大丈夫じゃ、用意するので暫し待たれよ」
時間にして長いのか短いのか、そもそも時間の概念があるのかどうかも分からないが、待っていると神様がやって来た。
「だいぶ溜まってたからの、ちっとばかり多いが大丈夫じゃろう」
そう言うと、徐にわたしを掴むと
むぎゅぅぅぅぅっ!と何かを中に押し込めた。
ぎゃーーーー!なに!?何なの!?
「おぉ、まだ入るの!」
いやもう入りませんて!!無理ですって!!
口(あるか分からんが)から出るって!!
むぎゅむぎゅと何かを押し込められ、身体が100倍?いやもっと?になった感じがした。
あくまでも感じただけで、痛みとか苦しいとか、そういうのはない。
ないが!何となく違和感がすごい!
うぐぐぐぅ……。
「素晴らしい!用意したものが全て入ったわ!ではお使い頼むぞ、行先は星名:ヴェルデじゃ。行った先でヴェルデの神が待っておるからの。彼奴によくよく頼んでおくので安心するがよい。わしからの褒美はヴェルデの神からの褒美と一緒に説明させようぞ。あぁ、大丈夫じゃ今から送り届けるから、暫し眠るが良い。では、良い旅を…」
何かが口(あるか分からんが)から出そうなので言葉を発することなく、こくこくと頷く。
いや、身体が確認出来ないので、もちろんそんな感じ、と言うだけだが。
楽しみなような、不安なような、深く考えることも出来ずにゆらりと眠りについたのだった。