婚約破棄! 最終Takeはまだ早い!
バカな思いつきで書きなぐったので、頭を空っぽにして読みましょう。
Take 1
「お前との婚約は破棄させてもらう!」
ババーンという効果音が聞こえてきそうな勢いで言い放つ。
「な、なぜですか!? 一体どうして……」
「それは、そのアレだ。えーっと、なんだっけ、そう何チャラの愛……そうだ、えっと、真実の愛に目覚めたからだ!」
「えっと、真実の愛を見つけたのではなく、目覚めたのでしょうか?」
「その、えっと、そのとおりだ。私は目覚めてしまったのだ、そう真実のアレに!」
周りからボソボソと声が聞こえてくる。
「ボソボソ……真実のアレって、何なのかしら、ま、まさか禁断の扉とか!?」
「きゃー、ボソボソ……まさかそんなことあるわけないじゃない。もしそれが真実なら……」
「彼はドMに目覚め……ぼそぼそ」
「わ、私がんばりますから! どS にでも、何でも……ですから、どうか私との婚約は……何卒」
「ち、ちがう! 私は真実のMに目覚めたのではない! そのアレだ……えーっと、真実の愛を知ったのだ!」
「なんてこと!? 私達の愛は間違えていたというの!」
殿下の母がオヨヨと泣き始めてしまった。彼女は殿下を溺愛しているのだ。
「は、母上!? いえ、そのなんというか違います。父上と母上の愛はこの身に沁みて感謝しております」
オロオロとする殿下だったが、げふんと咳を一つつくとまた口を開いた。
「そ、そうだ。あれだ! 真実の愛を知ったから……真実の愛に目覚め……真実の私のアレがあって、ああなって、こうなったんだ!」
「ま、まさか殿下のアレを、ああしてこうしたってことは……不義の子を……」
「ち、違う! え、ええい、もう一度最初からやり直しだ!」
Take 2
夜会が終わり、殿下の部屋に連れ込まれてしまった。こんな夜中に淑女であるクレアは恐れおののいていた。
「お前との婚約は破棄させてもらう!」
ババーンという効果音が聞こえてきそうな勢いで言い放つ。
「はい! よろこんで~!」
クレアは満面の笑みを浮かべそう言い放つ。
「もちろん、慰謝料は貰えますわよね。あ、あと、もう婚約者ではないのですから、他の方との出会いを楽しめますわね」
「待て待て、ちょっと待て。お、お前が乗り気でどうする! もっと、こう……なんというか、悲壮感とかどうしてなの! とか無いのか!」
「……っち、めんどくさい」
「ぼそっと言っても聞こえてるからね。もうちょっと俺との婚約破棄を悲しむような嘆くような何かは無いわけ?」
「そんなことを仰られても、もう既に殿下は婚約破棄をお決めになられれているという体でよいのですよね?」
「それは、そのそうなんだが真実のなんちゃらくらいは言わせてくれください」
「仕方ないですね……」
「そ、そんな殿下私とのことは遊びだったというのですか! こんなにも殿下を心からお慕い申しておりますのに!」
「くっ、変わり身が早すぎる。が、ナイスだ。その通りだ! 俺は真実の愛に……えっとアレだ。そう、真実の愛に気づいてしまったんだ! だからお前とは婚約を解消する!」
「そんな殿下の独りよがりの気付きによって不幸になる女性がいるなんて許せませんわ! その方のためにも断固婚約を破棄させていただきます!」
「そこは破棄を辞めてほしいではないのか?」
「あら、失礼しました。その方が不幸になるくらいでしたら私が不幸になりますので、婚約は継続していただきますわ!」
「まるで俺が女性全てを不幸にするような言い回しは辞めろ!」
「そのとおりではないですか!」
「え、ええい! 次、次だ!」
Take 3
「お前との婚約は……」
「ぼっちゃま! 夜中に騒々しいですよ! とっとと寝ろこのクソガキが!」
アレス付きのメイドが扉をバンと開けてそう言い放つと、部屋から出ていってしまう。
静まりかえる室内で二人はヒソヒソと話し合いを初めた。
「く、クレア、えっと……破棄してください」
「ボソボソボソ……」
「え? なんだって?」
「ボソボソ……ですわ」
「え? なんだって?」
「難聴系ハーレム野郎は滅べばいいですわボソボソ」
「違うよね! 最初に言ったセリフと今のセリフの長さがあってないよね!」
またバンと扉が開け放たれ、メイドがアレスに蹴りを入れるとバンとまた扉を締めて出ていった。
捨て台詞は「黙れクソガキ!」だった……。殿下を蔑ろにできるメイド素敵。
「えっと……その、また今度の機会でいいかな……」
「はい喜んで~」
クレアはそう言うと部屋から出ていった。
婚約破棄成立可能日まで後10日
Take 4
今度は五月蝿くても怒られないように昼間にクレアを呼び出した。
「お願いします。この俺と婚約破棄してくれないか?」
あらん限りの誠実さを表すように、普段頭を下げたことのないアレスが90度の角度で頭を下げている。
「破棄の部分がなければもうプロポーズの言葉ですわよね……」
「ち、違う、お前とは婚約破棄だ、破棄! 婚約しててプロポーズを再度する訳ないだろうが!」
「両家が決めた婚約破棄をする訳が無いのほうが筋が通りはしますが、まぁ良いでしょう……で?」
「え? それだけだけど……」
「いや、ですから、理由はなんなのですか? 流石に理由もなく婚約破棄をすれば両家に禍根を残しますわよ普通は」
「あぁ、そうだった、真実の愛を探しに旅にでるというのはどうだろう?」
「聞かれましても困りわすわ……それに、その理由ですと実家に帰らせてもらいますに近い家出ではないですか……」
「実家に帰るのに家出とは……」
「私も言ってて意味がわからなくなりましたわ。そうですわね、それでも私の落ち度が何かしらあって旅に出るという理由が必要ですわよ」
「そうだな、クレアなにか落ち度と言うか、婚約破棄をされても仕方ないこととかやってないか?」
「やるわけないでしょうに。私をなんだと……。そうですわね、では同級生に靴でも舐めさせて、実家の事業を潰して、更に……」
「まてまて、ちょっと待て。流石にやりすぎというか、ほんとにやったら洒落にならないではないか!」
「ではどうしろというのですか?」
「それを一緒に考えよう……」
「私と殿下の婚約解消なら解るのですが、婚約破棄を一緒に考えるのは違うと思うのですが……」
「………ですよね」
閑話:Take 0
学園の卒業式に当たる10日前。アレス殿下に呼び出された。
アレス殿下とは婚約を交わし、卒業後良い日取りに結婚する流れである。
子供の頃からの知り合いであり、別にお互いを恋愛対象として見ている訳でもないが、家が決めた婚約なのでそれならそれで良かった。
好きな人との甘い結婚生活などというものに憧れはあるものの、そんなものは現実では難しいことを理解している。
それならば、気長に気の合う人と添い遂げればよいだけである。その点、アレス殿下なら特に問題はない。
(恋愛感情とかは無いが)
通いなれた通路を抜け、通いなれた殿下の部屋に入る。メイドが二名とアレス殿下一人。
「よく来てくれたクレア。早速で悪いが、君との婚約を破棄したい」
突然告げられた言葉に絶句してしまうが、なんとか声を出す。
「……その、理由などを教えてもらえませんか?」
するとアレス殿下は後ろに控えていたメイドの肩を抱えてこう言い放った。
「俺は真実の愛としてこのアリシアと婚約することを決めたのだ! なので、お前との婚約は破棄させてもらう!」
アレス殿下の言葉に肩を抱えられたメイドは困惑した表情をしながらも赤い顔で殿下を見つめていた。
無駄にイケメンである殿下の顔を間近に見てしまえば、初心な女性なら仕方のないことだろう。
「そ、そんな。嘘よ! だって、だって……」
「くっ、俺だって君との愛を続けたかった、しかし……」
「ところで、そのメイドの名前はメアリーで、アリシアは学園に通う男爵令嬢だったはずですが?」
「……その、なんというかアレだ。婚約破棄を卒業式に行いたいんだが、ほらいきなり本番だと緊張してしまうだろ?」
「は、はあ?」
「だから、その何ていうか、リハーサル的なものをしておきたいと思って……」
「本番が怖いから婚約破棄のリハーサルを婚約破棄する私でしたと?」
「そ、そうだ! サプライズだよ。ほら女性はサプライズが好きだってメアリーも言ってたし!」
その肩を抱えられているメイドのメアリーも困惑している。そりゃそうだ。
というより、私のほうがサプライズだよ……。なんだよ、婚約破棄のリハーサルって……。
「それは、とても興味深いですわね。どうせやるのであればそこにアリシアが居れば更に楽しかったですわね」
「そ、それでは彼女へのサプライズにならないではないか! こんなことを頼めるのはクレアしか居ない!」
数分ほど意識を失っていた気がする。何を言っているんだろうこれは?
理解できるような、理解したくないような……。理解してはいけないような……。
しかし、枯れた恋愛観を持つと自他共認める私なら乗り切れる!
「理解しましたわ! ですが、本番では何が起きるかわかりませんもの。慣れてしまえば緊張しませんし、習慣化してしまえば咄嗟のアドリブにも磨きもかかるはずです」
「ほうほう」
アレス殿下は私の言葉にメモを取りはじめる。
「ですから、今後開かれる夜会やパーティ、お茶会などなど、全てでアレス殿下が私に婚約破棄を宣言するのですわ! これで本番までのリハーサルは完璧ですわ!」
「ふっ、私は良き婚約破棄者と出会えた。まさかこんなに親身に答えてくれるとは……感謝する」
「私は顔は良いけど少しおバカな殿下が嫌いでは無かったのですが、アリシア令嬢を好きになってしまったのでしたら仕方ありませんからね」
「ん? 私はアリシア令嬢のことを別に好きなわけではないぞ。 クレアと単に婚約破棄をしたいだけだ」
「え?」
「え?」
「……では、その理由は何なのでしょうか? 私にはもう理解が及びませんわ……」
クレアは理解することを辞めた。既に疲れ切った表情だったのに、更に死体蹴りかのようなアレスの言葉に。
「いや何、王太子殿下が悪役令嬢との婚約破棄をした結果、俺の立場のキャラクターがザマアされる展開が痛快でな」
「えぇ、世間に出回る小説で一部の層に人気がありますね。現実的とは言えませんが……」
「ほら、俺って馬鹿じゃん。なら頭のいいクレアがザマアの結果さ国をいい方向に導いてくれたほうが楽じゃん」
「……何をいってるんだろこのおバカは」
「ほら何ていうか、アレだよカインと一緒に冒険者やってバカやってたほうが楽しいんだよ。だから頼む。俺と婚約破棄してこの国を頼むよ!」
「……少々お待ち下さい」
クレアは頭を抱えた。言ってることが滅茶苦茶なのはこの際置いておこう。しかし、カインという名前が出たことだけは見逃せない。
「まさか、まさかとは思いますが、カイン様も冒険者をやっているということですか?」
「あ……」
侯爵家の嫡男であり、その辣腕は父親すら黙らせるほどの傑物。
血の繋がらない妹を大切にしているが、それ以外の女性には氷の貴公子とまで言われるほどの美丈夫。
ファンクラブNo002の私の唯一の癒やしであるカイン様の名前が出てきてしまった。
「ちょっと、その話を詳しく教えてくださらないかしら? 殿下?」
「え、えっとーその、ど、どうしようかなぁ」
ダラダラと脂汗を流しながら蛇に睨まれたカエル殿下の明日はどっちだ!
……数日後
最終Take?
「俺は真実の婚約破棄に覚醒してしまった哀れな王太子! いや冒険王になったのだ! だからクレア、君とは真実の婚約破棄させてもらう!」
「……真実の冒険王に覚醒してしまったのなら仕方ありませんね。私も以前からカイン様をお慕いしていたのでどうかえっとアバズレ令嬢とお幸せに!」
「ちょ、ちょっとまってください、何が突然どうしてそうなるのでありますか! か、カイン兄様にはシスティーナ様という婚約者が」
To be continue?
続編は無いw。とても昔に書いていたコメディ作品に出していたが、纏まらなかったw