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【第六回】地の文コンテスト 〜敗北〜

【敗北】烏合の衆

作者: マーニャ

「こんなのってないよ」

不憫担当が嘆く。今日も不憫な目に遭っている。不憫担当なんだから当たり前。

「仕方がない。今回は非を認めろ」

「俺は自分の誠実っぷりを主張する」

不憫担当に追い討ちをかけた2人が胸を張って更なる攻撃を仕掛ける。

「そうだ、我々は正しい。正義に対してなんて仕打ちだ。あいつよりカラスの方が賢い」

「じゃあお前はニワトリ以下だな」

追い討ちをかけられた不憫担当と追い討ちをかけたうち背の高い方が物書き机と烏の共通点を探す以上に意味のない言い合いをする。

「八つ当たりは見苦しいぞ。お前がいちばんへこんでいるのは分かっている」

追い討ちをかけたうちの背の低い方がニンマリ笑う。これで追い討ちをかけた片方は医学生でもう片方に至っては法学生であることはあまり信じたくない事実である。

「負けを認めない方が愚かだ」

ゲームでいっぱい食わされたようだ。これはもう自己収束は見込めないだろう。

「おいおい、ここで貶し合ってどうする。無益な争いこそが愚の骨頂だ」

仕方がないので止めに入る。全く我々には崇高な使命があるんだからこんなことで争っている時間はないのだ。

「ああ、玉子丼だけは俺を裏切らない。信じられるのは神の使いである君だけだ」

酒樽が言う。また酔っ払って絡みにきやがった。そして前半を他に言いながら後半を俺に向けて言うな。その上内容が気色悪い。やめろ。

「大袈裟な」

こいつはだらしないやつである。そして酒のつまみにここの安い玉子丼を食うという頭のおかしいやつでもある。生卵をかけたご飯の方が美味しいだろうが。

「では玉子丼が不味かったことがあるか」

なんと多くの鷲がいることか、と同じノリで言うな。

「たった今がそうだ。こんな気持ちで食べて美味しいものか。お前は浅薄なんだ」

不憫担当は変わらない口調で嘆く。誰に何を言われてもこいつは不憫な目に遭うから口調がそうブレることはないのだ。

「仲間になんて物言いだ。俺が泣いちゃうぞ」

そろそろその手の酒瓶を取り上げて殴りつけてやろうか、と思う。こいつはいつもいつも逃げばかり打っているくせに人の不幸を笑いあまつさえいじる。

「お前の涙に何の価値がある」

ほっぺを膨らませて言う不憫担当と声を合わせて冷徹に言ってやれば俺にだけ向かって好きだと宣うので1発お見舞いしてやった。

「そういうお前が泣いているではないか」

いつの間にかポロポロ涙を溢していた不憫担当に法学生の方がツッコミを入れる。

「泣いてなどいない」

強がる不憫担当。あるいは泣きすぎて自分が泣いているか否かの判断がつかなくなったのか。ありえる。こいつは不憫な目に遭うたびに涙目になっているから。

「玉子丼が塩辛くなるぞ」

塩分の取り過ぎは良くないんだ、と医学生がぶつぶつ文句を言った。

「それくらいがちょうど良いんだ」

さらに頬を膨らませて中に昼飯の安い玉子丼の残りを詰め込む不憫担当。可愛いはずの仕草が全く可愛く見えないのは何故だろうか。

「存分に泣くがいい。お前の涙は美しい」

また酒樽かと思ったら我らが頭脳がくしくしと可愛らしい仕草で目を擦りながらも酒樽の真似をしていた。こいつはたまにこう言うことがある。だが面白いし、的確な表現でやるので酒樽ほど不愉快でないのだ。

「お前こそ目を擦るな。明日まぶたが腫れるぞ」

我らが頭脳は何かトラブルに巻き込まれ相当参っていたらしい。すでに目が充血していた。

「玉子丼が美味い」

「玉子丼が美味い」

現実逃避をするな、と安玉子丼をいつの間にやら食べていた元凶2人にゲンコツと説教を我らが頭脳とお見舞いしてやった。

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