うさぎのみみ と ぞうのはな【冬童話2021・ラジオ朗読作品】
二人の子どもがいました。
かたほうは、うさぎのように長い耳。
かたほうは、ぞうのように長い鼻。
「ぼくの鼻はこんなに長いんだ」
「わたしの耳もこんなに長いのよ」
二人はいっしょに悩みました。
そして、神さまを探して耳と鼻をとってもらおうと思ったのです。
「こんなに長い鼻をつけたのは神さまのせいだ」
「そうよ。こんな耳じゃ帽子もかぶれないわ」
最初に行ったのは背の高い人の国です。
みんな大きくてうらやましいと思いました。
「みなさん大きくてうらやましいですね」
「なにをおっしゃる。高いところにぶつけるし、背を支えるから腰もいたい。空気だってうすいよ」
うらやましいと思っても、背の高い人も苦労していたのです。
次についたのは太った人の国です。
おいしいものを食べてうらやましいと思いました。
「おいしいものを食べて太れるなんてうらやましいです」
「なにをおっしゃる。少し動くと息切れするし、立ち上がるのにもひと苦労。病気にもよくなるよ」
うらやましいと思っても、太った人も苦労していたのです。
次についたのはおしゃれな国です。
キレイな服を着てうらやましいと思いました。
「おしゃれですね。うらやましいです」
「なにをおっしゃる。今着たものはすでに流行遅れ。お金はかかるし、暑かったり寒かったり」
うらやましいと思っても、おしゃれな人も苦労していたのです。
次についたのはお化けの国です。
のびたり、縮んだり、消えたりできるのをうらやましいと思いました。
「いろいろ形を変えれるんですね。うらやましいです」
「なにをおっしゃる。わたしの本当の姿はどこにいったのだ? わたしは誰なんだ?」
うらやましいと思っても、お化けも苦労していたのです。
とてもステキな天使に会いました。大きな羽根を持ってキラキラの衣裳をうらやましいと思いました。
「とてもステキですね。うらやましいです」
「え? なにか言った? 神さまの使いは忙しいんだ。ごめんよ」
天使に神さまの場所を聞こうと思ったのに、天使は忙しそうにどこかに行ってしまいました。
残された二人はポツンと立ち尽くしました。お互いの手を握り合って。
長い旅は二人を大人にしていました。
「みんなみんな悩みがあるんだね」
「もう耳の長さなんて気にならないわ」
二人は神さまを見つけられませんでしたが、そこに小さな家を建てました。
「ボクたちの子どもはどんな子かな」
「きっと、少しだけ耳と鼻の長い子よ」
「たくさんたくさん悩むかもしれない」
「でもそれがその子を大きくするのだわ」
二人は微笑み合いながら耳の長い人の大きなお腹をなでました。
どんな子が生まれるか楽しみですね。