行方不明の兄
物語を書くのは初めてなので微ホラーになってしまった感が否めませんが楽しんでいただければ幸いです。
昨年より行方不明だった兄から、お盆に帰る連絡が来た。
父と母に兄が帰ってくると伝えると少し悲しい顔をしたあと、その日は用事があると言うので私が兄を迎えに駅へ向かった。
遅い...
駅の近くのパーキングに車を停めて待っていたが、電車は時間通りに来ているのに兄は来ない...
兄は少し抜けているのだし、久しぶりに帰ってくるから、どっちから出ればいいか分からないのかな?
私はそんな風に考えて駅へ向かう
居ない...
駅の中を見回ったが兄の姿はなかった...
どこにいるんだあの兄は...
しびれを切らし兄に電話をした、が切られた...
そして直ぐに『少し遅れて今電車に乗った、16:44頃に着く』とチャットが来た
現在時刻は14:25なので兄が着くまで2時間以上ある...
近くのデパートなどで時間を潰し、16:40頃...あと4分くらいで、兄が乗る電車が着くはずだ...
45分になったが電車が来ない...
電車に遅れがあるなんて放送はされてない...
兄にチャットを入れる『今どこ?』
兄からは『改札の前にいる、お前こそ今どこ?』帰ってきた...
兄が改札の前にいる?
そんなはずない...
それは絶対にありえない...
だって私も改札の前にいるんだから...
私は兄に電話する
私「もしもし、兄さん駅間違えてない?」
兄「はぁ?いきなり何言い出すんだよお前...○○駅だろ?ちゃんとあってるよ。」
私「違うよ...○○駅じゃなくて今は○○○駅だよ?」
兄「○○駅じゃなくて○○○駅?いつ変わったんだ?」
私「昨年倒壊して再建された時に名前も変わったんだ。だから○○駅は...もうない...はず...」
血の気が引いていくのがわかった...
そう○○駅はもうない...でも兄は○○駅と言ったことから○○駅で降りたのだろう...あるはずのない駅で...
私「冗談だよね?今までの全部悪ふざけなんでしょ?」
今は存在しない駅にいるという兄が、怖くて全部嘘だと言って欲しかった。でも...
兄「あぁそっか...俺あの時の駅の倒壊に巻き込まれて...」
そうだった...去年のこの日兄は先のやり取りのように電車に乗遅れた。
そして私はその時も迎えに行く予定が寝過ごしてしまい駅に到着した時には駅は倒壊していた...
その日から兄は行方不明扱いだが、もうこの世には居ないだろう...
...だとしたら今私が話しているのは?
幻聴と言うにははっきり聞こえている...
私は意を決して兄に尋ねる
私「兄さん...なんだよね?」
兄「あぁ」
私「でも兄さんはあの時死んだはずでしょ?」
兄「あぁ、俺はあの時死んだ...多分今話せてるのはお盆だからかな?」
私「そう...」
やはり死んでたみたいだ...
兄「なぁ、今から言う場所に向かってくれないか...」
いきなりそんなことを言い出した...
まさか私もあの世に連れていくつもりなの?
そんなふうに警戒していると
兄「心配しないでくれ、連れていくつもりは無い...俺の死体を見つけて欲しいんだ...」
そうして私は兄の指示された場所を探す...線路の脇にそれはあった..ほぼ原型はとどめていないがそれは兄の服を着ていた...
それが兄だとわかった私はどうしようもなく泣き崩れてしまったが...
「見つけてくれてありがとう...」
その声に顔を上げると満足気な顔で天へと上る兄の姿が目に入りさらに泣き崩れてしまった...
その後そんな私を不思議に思った通行人が死体をみつけ警察へ通報。
事情を説明しても信じてもらえるはずもなく、父と母からも狂人扱いされ、私は精神病院へ入院させられた。
でも私は覚えてるあの日、この世には居ないはずの兄と会話したことを...
私は覚えている...あの日死体を見つけた時に聞こえた『見つけてくれてありがとう...』って言葉を...
私は覚えている...あの時、兄が満足気な顔で成仏したのを...
明日退院したらお墓参りに行こう...
最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字や脱字が有りましたら申し訳ありません。
少しでも楽しんでいただけたならとても嬉しく思います
誤字などを少し書き直しました
報告してくれた読者様、ありがとうございます