4 チンピラ、スキルと使い魔を得る。
「しかし、何も異世界から現世に送るだけが仕事ではありません。逆もまた然り。現世の存在を異世界に送る事もあります。そして今回の荷物は・・・・。」
クロは前屈みになり俺を覗く、そしてニヤニヤと笑みを浮かべると「貴方です。」と言葉を続けた。
「・・・あ?俺?」
「はい。今、とある異世界、とある国で勇者の召喚が行われています。手順、生贄、欲望、共に申し分ありません。そこで我々は早速、勇者となる人物を検索。そして見事、選ばれたのが・・・青葉勇仁様。貴方でございます。」
「・・・勇者?勇者ってあれか?モンスター倒したりする・・・ゲームの・・・。」
「はい。宅配予定地はまさにゲームのような世界ですね。魔法もありますし、モンスターと呼ばれる者もいます。」
「いやいや、ちょっと待てよ。俺は普通の人間だぜ?モンスターなんて勝てるわけないだろ?」
「そこは、ご安心を。神の力で貴方に神の力。つまりスキルを授けます。このスキルは魔法などでは再現出来ない強力な物がほとんど。余程、適正がない限り外れを引く事はありません。」
「・・・・なぁ。さっき・・・俺が死にかけてるって言ったよな?」
「はい。現世での時間は止めていますので。この取引を断った瞬間、現世に強制送還。そのまま死んでいただく事になります。」
「・・・・そっか。」
・・・俺が目の前で死んだら・・・・山崎の奴、責任感じるんじゃねぇかな。社長にも悪い事しちまうなぁ。
「・・・くく。くふふ。悲しいですか?悔しいですか?そうですよね?断れば死亡確定。受け入れてもモンスターなどにやられて凄惨な死を迎えるかも知れない。ふふふ。そんなにすぐ決断出来ないですよね?どうしますか?どうされてしまうのですか?」
「・・・うるせぇな。別に良いよ。」
「・・・・は?」
下卑た笑い。クロは先程までは心底愉快そうに笑っていた。口角を吊り上げ、目をぎらつかせていた。静かになった俺が酷く可哀そうな生き物に見えたのだろう。
しかし、俺が悩んでる理由はそんな小さな事じゃねぇ。
「・・・おい。女神。さっきの願い。前借出来ないか?」
「・・・ん?どゆこと?」
「・・・・もし俺があのまま死んだらトラウマになっちまう奴がいる。世話してくれた社長のも恩返し出来てねぇ。何とかしてくれ。俺の願いはそれだけだ。」
「・・・・は?そんだけ?もっとこう・・・・億万長者!!とか、世界の王!!とかハーレム!!とか永遠の命!!とかじゃないの?」
「別に興味ねぇ。」
「・・・へぇー。あんた面白いわね。いいわよ。特別に何とかしてあげる。」
この女神。簡単に言ったけど信用出来そうだ。
女神は少し楽しそうに笑うと「じゃ、使い魔だれにしようか?何か好みある?」と俺に問いかける。
「使い魔?」
「まぁ、異世界でのパートナーよ。異世界転移って色々大変なのよ。知らない事も多いし、文化も違う。使い魔はそのガイドよ。」
「はは。何だ?2人旅でもしろってか?」
「違う、違う。使い魔は基本的に姿は見せないわ。貴方の頭に直接語り掛けるだけ。そうね・・・携帯の検索機能だと思えばいいわ。」
「・・・私がします。」
黙っていたクロが突然、口を開く。
そこにさっきまでの笑みはなく、むしろ冷め切っているように見える。
「・・・え?クロが?だって貴方・・・。」
「別に構わないでしょう?私の分の仕事は他の使い魔に。私は彼が気になります。しばらく観察したいのです。それに・・・彼みたいなタイプが死ぬ時はどんな声で鳴くのか楽しみで仕方ありません。」
・・・薄々、感づいてたけど性格悪いな。こいつ。
「じゃ、後はスキルね。スキルはランダムだから何になるか楽しみね!!まるでびっくり箱みたい!!それじゃ・・・ほぃ!!あ、出ました。出ました。えーと・・・・あ。」
女神は俺に向かって手をかざす。そして掌に【何か】があるような素振りを見せる。俺には何も見えないが・・・きっとそこには何かがあるのだろう。
その掌の【何か】を見る2人がとても残念そうに目配せをしているからだ。
「・・・・ス、スキルが全てじゃないわ!!そうよ!!スキルなんてなくても何とかなるし・・・考えようによっては・・・・。」
「・・・クソスキルですね。」
・・・やっぱり。
「・・・・で、何てスキルなんだ?」
「・・・身体強化。あらゆる肉体機能を向上出来ます。」
「・・・あん?良い能力じゃねぇか?」
「いえ、このスキル。自己犠牲つきスキルです。」
「あん?自己犠牲?」
「はい。能力を使う度に犠牲を・・・代価を支払うタイプのスキルです。この手のスキルは非常に強力です。犠牲なしスキルと違って犠牲を払えば払う程に能力は格段に強化されます。しかし、逆に犠牲を払わなければ何も使えないスキルなのです。」