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チンピラ、異世界で魔王になる。  作者: 南瓜らんたん
1/4

1 チンピラ、敵チームに殴り込む。

・・・ザーッ・・・ザーッ。



・・・うざい雨がまとわりつく。

そう言えば、俺が重大な何かをする時は大体が雨だった気がする。

ガキの頃の遠足の時、ムカつく先公をぶん殴って高校をクビになった時、チームを立ち上げた時、チームを抜けた時、真面目になろうと就職した日、そして・・・俺の作ったチームの後輩が敵対してるチームに拉致られて俺が殴り込みに行く今日。



「・・・チッ。これからは真面目に生きようと思ったのによぉ。」



タバコに火を灯す。

目の前に映るのは地方によくある潰れたパチンコ屋。

敵対するチームがよく使ってるらしい。俗に言うアジト。

数百メートル離れたこの場所からも何人かの人間が出入りしているのが分かる。

ここから見えるだけでも・・・6人。中にはもっといるだろう。



「・・・スッー・・・フゥー・・・。まぁ・・・勝てねぇなぁ。だけどよ・・・自分の後輩くらい助け出せなきゃ・・・だせぇからなぁ。」





事の発端はつい2時間前の出来事だった。



俺は小さい印刷工場に就職していた。俺みたいなろくに職歴もない、強面のただのチンピラ。そんな俺を社長は快く入れてくれた。この社長は裏切れねぇ。だから真面目に働いた。ムカつく取引先にも頭を下げてたし、頭も金髪から黒に戻した。仕事も慣れてきた。毎日が忙しかったけど・・・楽しかった。あっと言う間に2年が経った。俺はきっとこのまま、この会社に骨を埋めるんだろう。そう考えていたんだ。



「あ、青葉さん!!ここに青葉さんはいますか!?」

事務所に突然転がり込んで来たガキ。そいつの着ているチームパーカーを見てすぐにチーム関係だと分かった。そのガキは顔面を腫らして、泣きそうな顔で俺の足にしがみついて来やがった。



「あ、青葉さん!!青葉さんですよね!?俺、アシッドの新田って言います!!お願いします!!リーダー・・・リーダーの山崎さんを助けてください!!お願いします!!お願いします!!」



・・・山崎。

俺の後輩で犬みたいに俺について来た後輩。

良い奴で、酒に弱い。女にも弱いバカ。バイクが好きでむっつりスケベ。恋愛映画で泣くような変な奴。




「俺達、普通に走ってただけなんです・・・でも、でも、突然襲われて・・・山崎さんが1人で。俺達・・・女もいたから・・・山崎さん1人で身代わりに!!お願いします!!俺、何でもします!!だから、山崎さんを助けてください!!お願いします!!お願いします!!」


「・・・山崎。」




俺は真面目に生きるって決めた。社長に恩もある。社長は裏切れねぇ。こんなカスみたいな俺を拾ってくれた恩をまだ返し切れてねぇ。

だけど・・・だけど、俺ぁ・・・。



「青葉君。行ってきなさい。」


「社長!?」



振り向くと社長が立っていた。

怒る訳でもなく、迷惑そうな顔をする訳でもなく、右手に救急箱を持ってニコリと笑って佇んでいた。



「その子は青葉君を頼りにして来たのだろう?私にはよく分からないけど、きっと今行かないと後悔するよ?」


「社長。でも・・・でも俺は・・・。もし今、行ったら社長にも迷惑が・・・。」




「迷惑?ふふ。僕は青葉君が誰よりも努力して仕事してくれていたのを知っているよ。だから君がする事に間違いなんてない。例えそれで僕や会社に何かあっても、僕が青葉君を見捨てたら奥さんに怒られてしまう。だから、こっちは大丈夫。安心して行って来なさい。さ、そこの君はこっちへ。手当をしなければね。」


「あ、す、すいません。あ、青葉さん。山崎さん・・・多分、県境の潰れたパチ屋に連れて行かれたと思います。お願いします。俺が・・・俺がもっと強ければ・・・・すいません。すいません。」



新田は申し訳なさそうに頭を下げると社長に連れられて奥へと姿を消した。

俺は社長のいた場所に深々と頭を下げると、事務所を飛び出した。

そして、今や通勤でしか使用していない愛車のバイクに跨ると、アクセルを回し一気に加速する。



【フォン!!フォンフォンフォォォォォォン!!】

バイクは唸り声を上げて夕暮れの県道を走り抜けて行く。

さっきまで晴れていたのに、まるで灰色の絵の具をぶちまけたみたいに急に空が暗くなって行く。

そして俺が目的地に着いた時には、ごらんの通りのどしゃぶりって訳だ。




・・・あぁ。うぜぇ。



・・・・あぁ。ムカつく。



・・・・・山崎。




『先輩。自分、先輩みたいに強くなりたいっス!!』

『先輩!!飲みに行きませんか!?』

『先輩。チーム抜けるんスか?え?これからは普通に?そうっスか・・・寂しいけど、俺・・・先輩を応援してます!!』




・・・・・。





「・・・山崎・・・やまざぁぁぁぁきぃぃぃぃ!!返せやぁぁぁぁ!!おらぁぁぁあ!!」



叫ぶ・・・叫ぶ!!叫ぶ!!!

俺は山崎の名前を、声にならない声を、苛立ちを口から吐き出すと拳を握りしめ敵のアジトに突っ込んだ。



「おっ・・・らぁぁぁ!!」

俺の拳が敵の顔面に突き刺さる。

俺が殴った奴は糸の切れた人形の様に吹っ飛び動きを止める。



「おらぁぁぁ!!次!!次来いやぁぁぁ!!」


「あ、青葉だ!!青葉が殴り込みに来たぞ!!」

「は!?青葉はもう引退しただろ!?」

「卓也がやられた!!奥にいる奴ら呼んで来い!!」

「武器だ!!武器持って来い!!」




ざわざわざわ・・・・うるせぇ・・・・うるせぇよ。

俺が目の前にいんだぞ?話してる暇なんかあんのか?そんなのんびりしてる間に・・・。




「・・・・【ゴスン!!】・・・がはっ!!あ、青葉・・・てめぇ・・・【ガツン!!】」

「うるせぇ!!話してる暇なんかねぇだろうが!!全員刈り取っちまうぞ!!おらぁぁぁ!!」





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