2-52 お前らと仲良しごっこするつもりはねーんだ
本局に戻ると、直ぐにクレマチス様に呼ばれた。俺だけではなく、フィラさんも一緒だ。
二人でクレマチス様の執務室に入ると、中にはクレマチス様、モルセラさん、それからなぜかリリウムさんがニヤニヤとした顔でいた。
そんな中に一人、場違いな人物がいた。
俺と同じグループではないが、実質部下となる立ち位置の人物――カラー・エクヴィルツ。癖のある緑色の髪を無理やり制服の帽子で押さえこんだその人は、帽子のつばから覗く青い瞳を鋭くしてこちらを睨んでいる。
「知っているかとは思うが、こちら、カラー・エクヴィルツ君」
クレマチス様が紹介すると、そいつは俺達を睨み付けながら、かろうじて会釈をした。
「フルゲンス君が復帰するまで、君のチームに入れる事になった」
クレマチス様は、困ったような表情を浮かべている。ああ、嫌な予感がする。
「あの、一つお聞きしても?」
「何かな?」
俺は引き攣りそうになる表情を、何とかごくごく普通のものに保ちながら、クレマチス様に問う。
「リリウムさんは何の為に?」
「それが……フルゲンス君の代わりに彼を推薦したのは、他ならぬカサブランカでね……」
「一応ブラン様の代わりに見てきてーって言われたから、ここに来たんだよ」
ああ、どこまで聞いても嫌な予感しかしない。
リリウムさんは例によって、あの笑っていない瞳のまま、にっこりと笑って見せる。
「そ、それじゃあ、今日この後からよろしく頼むよ」
「……はい」
出来ればよろしくしたくない。が、そういう訳にはいかない。
俺はフィラさんと、臨時メンバーのカラーさんと共にクレマチス様の執務室を後にした。
すると、彼は直ぐに俺達に向き直ると、真っ直ぐに睨み付けながら指を指す。何を言うつもりだ、こんな所で。
「俺は、あんた達なんか認めねーからな」
青い瞳はギラギラと光り、何か野望のような物が燃えているように見えた。
「親のコネで大出世したヤツと、ぬくぬくと育ってきたお嬢様」
俺とフィラさんを客観視すれば、そう捉えられても仕方がないか。
「他に上に居る奴だって、魔法使いに精術師ばっかりじゃねーか!」
「いや、精術師は」
「特殊な能力、特別な地位。俺はそんなもん、大嫌いだ」
口を挟もうにも、本人は挟ませるつもりも聞くつもりも無いらしい。
「お前らと仲良しごっこするつもりはねーんだ」
元々口の良い人ではなかったが、こんなに敵意を向けられる覚えはない。……が、理由としては、俺が出世した事が上げられるのだろうか。
「最初に言っておく。給料分くらいは働いてやるけど、それ以上求めんな」
仕事をする気があるだけマシだ、と思ってしまったのは、フィラさんとルースの相手をしてきたからだろう。
「お前らとにこやかにやっていくつもりも、いけるつもりもねーから」
「まぁ!」
「フィラさん、落ち着いて」
俺は怒りだしそうになったフィラさんを制する。貴女だって少し前までこれとそう変わらない状態だっただろうに。
「……で、執務室はどっちだよ」
廊下できょろりと辺りを見回すカラーさんに、俺は大きなため息を一つ。それから厄介な事になりそうな未来の想像を飲み込み、仕事をする俺の執務室へと案内したのだった。




