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管理官と問題児  作者: 二ノ宮芝桜
第二章
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2-22 ポロリはしていない。かろうじて

 何でも屋はもうすぐそこ。それほどの時間もかからずについた。

 大所帯になったが、全員で何でも屋のドアをくぐる。一瞬、部下二人は入れない方がいいのではないかと過ったが、結局止める事なく全員で入ってしまった。

 中には、所長さんも、ネメシアさんも、アルメリアさんもいなかった。だがクルトさんは気にした様子も見せず、今入ったメンバーを一人ずつ確認しているようだ。

 何故か小さく指差し呼称していき、ビデンスさんで首を傾げ、アマリネさんで顔を真っ赤にして驚愕の表情を浮かべる。

 露出の高い服を前に、上手く処理出来なかったのだろう。気持ちはわかる。俺もこの状況でなければ、顔を赤くして目を逸らしている所だ。

「つーか、何で下着!? モロ出しだろ! ハレンチだぞ!」

「あ、あの?」

 アマリネさんは困ったように首を傾げているが、クルトさんが大きな声を出してしまった事は責められない。

 下着、とまでは言わないが、下着が透けているような上の服と、少し屈むだけで下着が露出するような短いスカートという出で立ちは、健全な青少年には刺激が強い。

「ろ、ろ、露出狂が出たぁぁぁぁ!」

「まさかそれ、あたしの事ですか?」

「他に誰が居るんだよ! そんなおっぱいポローン、足でろーん、みたいな格好してる奴!」

 ポロリはしていない。かろうじて。

「落ち着けクルト。その女は胸を丸出しにはしていない。私に削いでほしそうに自己主張はしているが、かろうじて服は着ている」

「……まぁ、露出は確かに高いですが」

 俺は咳払いを一つして、この話を打ち切る事にした。目論見がありそうではあるが、一応はクルトさんを助けた……と思しき人なのだ。

「クルト! 無事だったの!?」

 完全に打ち切ったのは、階段の上から顔を覗かせた所長さんだった。後ろには、ネメシアさんと、血色が悪いのに真っ赤な顔のアルメリアさんもいるようだ。

「所長、露出狂が出たんです! じゃなくて、サフランが絡んでたんです!」

 打ち切り失敗かと思ったが、何とか持ち直した。

「露出狂だろうと、サフランだろうとどうでもいいんだよ。君は無事なの?」

「元気です!」

 元気です……?

 予想外の答えに、俺は首をひねってしまう。無事かどうかを聞かれて「元気」という答えは、初めて聞いた。

「ルト、大丈夫なの!?」

「クルトくん、大丈夫?」

 次に、ネメシアさんとアルメリアさんもクルトさんの無事を確認する。

「大丈夫。つーか、アリアさんこそ大丈夫なんですか?」

「このくらい、大丈夫じゃないカテゴリには入らないわ」

「入れて。お願い、入れて」

 クルトさんは自らの調子よりもアルメリアさんの調子を気にしていたが、所長さんが呆れた声で階段を下りながら「元気です、じゃなくて詳細に報告して」と尋ねたので、そちらに注目したようだ。

 彼はネメシアさんとアルメリアさんには部屋に戻っているように言うと、こちらに「皆適当に掛けて」と椅子を進める。俺達は促されるままに、席に着いた。

「まずはクルト。説明」

 全員が座ったのを確認してから、所長さんも椅子に腰を掛け、クルトさんに視線を向ける。

「えーっと、依頼料取れなかった!」

「そうじゃなくてね……」

 部下の指導というのは、誰でも大変な物なのかもしれない。

「ちょっと前から思ってたけど、クルト、ホウレンソウって知ってる?」

「好きです」

 食べるのか。あぁ、違う。野菜だと勘違いしたのか。

「そうじゃなくてね。略称なんだよ」

 所長さんがため息を零す。すると、突然クルトさんが両手をパンと打ち鳴らした。

 なんだろう、この行動。精霊が何かしていたのだろうか。

「ああ、訪問、連日、壮行会の略ですよね」

「違うよ。報告、連絡、相談だよ。何で連日訪問して壮行会してるの」

 彼は肩をすくめる。

「君、どれも出来ないんだもん。僕はどうやったら君から聞きたい話を聞き出せるのかな?」

「そんな事言われても……」

 やはり部下の指導って大変なんだな。

「あ、あの、あたしから少しお話ししましょうか?」

 俺が所長さんの苦労に同情していると、アマリネさんが髪をかき上げながら話に入ってきた。

 クルトさんの視線は、一気に相手の胸へと向かう。とはいっても、痣を確認している訳ではない。髪をかき上げた拍子に揺れた胸に注目しているのだ。

 ……俺は見ていない。そんな物は見ていない。

「所長、あの人が露出狂です」

「露出の高い服を着てるだけでしょ。折角だから大人しく見ておきなさい」

 あ、揺れた胸を見た訳ではなかったのか。

 所長さんはさらっと見る事を勧めたが、クルトさんは腑に落ちない表情を浮かべた。

「所長、それでは私の削ぎたいという想いが消えません」

「持っていてもいいから、そっと包んで実家に帰る時のお土産にしなさい」

 そんなお土産、持って帰りたくない。今まで聞いたどんなお土産よりも困るお土産だ。

 所長さんは咳払いをしてから、アマリネさんを見る。

「ウチの所員が失礼しました。お話を窺っても?」

「ええ。あたしはアマリネ・ツヴェルフ・ボールシャイトと申します。実は、あたしはそこの男の子が襲われているのを見たんです」

「男の子じゃねーし! 成人してるし!」

「こら、クルト。大人しく聞きなさい。減給処分にするよ」

「クルト、今すぐ黙れ」

「……わかったよ」

 折角説明が始まっても、茶々が入る。新人教育って大変なんだな。

 とはいえ、こちらがしてしまった一連の失礼に比べれば可愛いものか。あれは、後でまた謝罪する必要がある。

 謝って許してもらえるとは思えないが。

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