2話-2
「商会の商人の子供ならそれなりに良いとこの娘じゃねぇか。ここにいるよりさっさと家帰って遊んでろよ」
「えぇと……」
「答えなくても大丈夫。コイツなりの気遣いだから。今のギルドマスターになってからは死人こそ出ていないらしいけど、ここの仕事は激務だからね」
モリンが軽口を叩くも即座にイザベラがフォローに入り舌打ちをする
「家作るにせよ、戦うにせよひょろガキに出来る仕事なんてありゃしねえだろ…」
「遠征以外にも仕事はあるしアンタが決める事じゃない、この子が決めたのだから…手を差し伸べるのが大人じゃない?だいたい過去の事でウジウジ悩んでるアンタの方がガキでしょ」
「…………部屋に籠るわ」
モリンの声に多少怒気が含まれていたが、イザベラに冷たい口調で返され激昂してゆっくりラウンジを出ていってしまった
「…わたしも……しごと…だめ……?」
「キミィちゃんは大丈夫よ。ベラちゃん?あとでリンちゃんにちゃんと謝るのよ」
テールはキミィの頭を撫でイザベラをたしなめた。イザベラもやってしまったと言わんばかりの溜め息を吐く
「…でも、この子どうするんですか?規約通りなら入れないじゃないですか?」
このギルド都市では大まかに個人貢献度とギルド貢献度の2つの評価点が設けられていて、その名の通り前者は個人で何をしたか、後者はギルドで何をしたかを表すものである
一定の依頼や任務、仕事等をこなすと管理委員会から通達され、全ギルド員が登録した名簿に評価を表す星が押される。この星の有無で名簿に載せられた者の優劣がハッキリ解るので依頼主から名指しで指名される事も少なくない。上がれば上がるほど名は売れ、稀少品や装備等が回されることもあり、良くも悪くも各ギルドの競争心を煽っている
開拓事業は元々国家プロジェクトであったが、各地の戦闘でそちらに人員が回らなくなり開拓ギルドが設立。それ故国からの依頼も少なくない為に規約で総合評価点が4つ以上からのある程度信頼できる者しか所属できない
その為、本来は他ギルドから移動。もしくは兼業で所属するのが通常となっている
ちなみに、モリンは4、イザベラは5。現在のギルドマスターに変わった、第四期の初期メンバーのキミィの総合評価点が7である
「仮登録で最大半年いられるから、その間に〜って感じかしらね?」
テールはニッコリと笑って言った
「半年で4つって。…それができなくて四苦八苦してる連中ばかりなんですが……」
「だから協力できる事はみんなでしてあげてね?」
「私は別に構わないですけど……こうゆうことに関してはファリアさんが凄いうるさいですし………大丈夫かなぁ…」
震える手でカップを口にして、黙々と菓子類を頬張るキミィを見る
「キミィも解る事があれば教えるんだよ?」
「…うゆ?……おいしいごはんが…でたとき………とか?」
「…………不安しかないです…」
と、イザベラは再び溜め息を吐いて少し頭を抱えた




