2話-1
─二日後 昼過ぎ─
開拓ギルド ブルースカイのラウンジ
テーブル席にキミィ、モリン、イザベラの3人が腰を掛けキミィはラスクを小動物の様にカリカリと頬張っている。が、2人は小刻みに震えながらまるで葬儀中の参列者の様な神妙な顔つき。実際、昨日にアンフェルとテールが棺屋等で手続き等をしたらしいが、ソレとは全くと言っていいほど関係はない
「ふおぉぉぉぉぉぉ」
と、奇声をあげながら杖を使用して立ち上がるモリンにイザベラは呆れながらティーカップに手を伸ばす
「全く、もう少し毅然とできないの?」
「おおおお前だって対して変わらねぇじゃないかぁぁ」
震えた手でティーカップを持つも、受け皿はカチャカチャと音を鳴らせ中身がこぼれる
魔法酔い。所謂魔力、魔素と呼ばれているエーテル体に曝された人間の体が拒絶して起こる─一部の魔法による後遺症で主な症状は体の震え、急激な疲労感、頭痛等エトセトラ。重度ともなると死に至るが、常日頃魔力を扱っている体の構造自体が違う魔法使いには関係の無い話なので、この症状の有無で人間か魔法使いかの判断ができる…と嘗ての英雄、現在は北の賢者と言われている魔法使いが発表している
これでも最悪だった昨日よりかはマシになっていて、2人は言わずもがなアンフェルは軽い症状、キミィは疲労で自室に籠りきり。時折響く悲鳴や嗚咽で建物内はさながら野戦病院の様な有り様だった
「便所行くのにも一苦労だぜぇぇぇ…」
「頼むから黙って行ってよ…」
震えて奇声をあげながら杖を使い一歩づつ噛みしめ歩を進めるモリン。傍からみたら『何かに取り憑かれた』かの様ではあるが本人は至って大真面目である
「……ええと…」
入れ替わりでアンフェルがラウンジにやってきたが、モリンの様子を見て申し訳なさそうになる
「こうなることは解っていたし、ある意味日常茶飯事なんだ。キミの気にすることではないよ」
と、キメ顔で言うもカップの中身は盛大に流れる。キミィは『あ〜〜…』と言いながら自分のお菓子を安全な所に素早く置く
アンフェルが掃除道具の場所を聞くも、テールがモップと布巾を既に持った状態でこちらに来る。どうやら予想していたそうだ、テールとアンフェルが手早く掃除を終えた時にはモリンも戻り、5人でテーブルを囲んでいた
「んでぇ…あれから昨日はど〜なったのよテールさん?」
「別にやましいことはしていないけど?」
「そうゆう話じゃないよ!!てか、どうゆう話だよ!?」
「テールさん…私というものがありながら……」
「悪乗りすんよ!大事な話だよぉ!!」
「…うゅ?ごはんのはなし……?」
「菓子食ってんじゃねぇぇぇかぁ!!!」
モリンが怒涛のツッコミをしてキミィの頬を突っつく。とても嫌そうな表情を浮かべたのは置いといて
「あの…」
と、アンフェルが話を切り出した
怪物の襲撃によるの父親の死、それによる埋葬場所や葬儀の相談。商会の物資を預かっていること。そして、自分が開拓ギルドに入団する旨と私物を送って欲しい事をしたためた手紙を父親の部下宛へ送った、と報告した




