1話-4
「さてと、大まかな段取りだけど……キミィはその子を乗せて街路を先行
目的地に着いたら私たちが来るまでキャラバン周辺の敵の撃破、合流後は私たちと交代して援護に回って
こちらに場所を伝える意図も兼ねて初撃は派手なのを
あとは……時間も無いし強めの身体強化をお願いね」
イザベラはそう言い、キミィがうんと頷く
「まぁ程度の違いはあれ、やることはいつも通りだわなぁ」
「…ふつうが……いちばん。……どこもん…?」
3人は表に出て路地の中央で立ち止まる。アンフェルはモリィに丸太の様に肩に抱えられ、空気を読み黙っていた。一見は人拐いにしか見えないので回りの人たちはまたかと小声で話しているが
「……どこの…もん…?」
「え……あ…はい!西側の門です!」
「…うゅ………………てんい」
ボソボソとキミィが呟くと、4人を中心に光の線が走り足元に陣が展開される
「え…!?な………」
光に包まれ視界が白に染まった次の瞬間、一行は西門の外に立っていた。すぐさまキミィはまた何かを呟きはじめる
「…え……あの…えぇ?」
アンフェルは何がどうなったか解らずあたふたしている
「うん、私も最初はそうなったなぁ。キミィの能力なの」
イザベラは自分の時を思いだしたのか、苦笑して説明する
魔法使い。キミィを含めて人類側にはまだ5人しか確認されていない、オマケに内2人も40から20年前の戦争で確認された、エルフ以上に滅多に人目に姿を現さない、見た目もほぼ人間にしか見えない稀少種族である。彼女たち曰く古くから存在しているしそれなりに数もいるらしいが人類とは滅多に干渉せず、また接触した人物に記憶の改竄、最悪抹殺して姿を隠をしているらしい
全員が多くを語っておらずほぼ何も解っていない種族に等しいが、その能力の応用もさながら戦闘能力が凄まじく、20年前の大戦で英雄になった5人の内2人が魔法使いだった。もっとも1人は否定しているし『アイツのは魔法ではない』と否定されもしたが
「キミィは比較的温厚だし、実際優しいのだけどね」
「口数少ないけどな」
「…ん…。……じゅんびできた…やる…」
と、キミィは言うが先ほどとうって変わって何も変化がない
「あいよ!」
キミィが両手を2人の胸に掲げると、一瞬だけ光り輝いた
「じゃあ、現地で!」
その一言を合図に、すぐさま2人は人とは思えない程の物凄い速さで街道を走り出し、すぐに点になっていった
「………はやく…のって」
先ほどと同じ様にアンフェルにも魔法をかけて、瞬時に空中に魔方陣を展開。そこに手をつっこみ木の杖を取り出し直ぐ様跨がる。その瞬間風が巻き起こり、足は地を離れ少し浮く。アンフェルは戸惑ったものの慌てながらキミィの後ろに乗る
「………ぎゅってして…おちてしゆ」
後半の意味は理解できなかったが、アンフェルはキミィの体に腕を回し全力でしがみつた
「………ん、いく」
瞬間、浮上。砂埃を巻き上げる凄まじい風。激しい轟音と共に前へ
先程の2人など目ではない速さ。加速に加速を重ね流星の如きスピードで2人を乗せた杖は空を翔け、地上の2人を軽く追い抜き直進する
アンフェルは自分が今どうなっているか理解できていなかったが、衝撃や風圧も関係なく無事なのは先程施された防御呪文によるもの。もっとも様々な事が怒濤に重なり困惑しすぎて気にもならなかったが
「相変わらずデタラメな速さね」
「オマケに…アレで突撃するだけで地竜程度なら軽くのせるしな…」
2人は走り続けながらキミィたちが空に消えていくのを見る。直ぐに静かになったが、今度は爆音が連続で響き渡り、前方から熱を含んだ風や衝撃がやってきた
「急ごう!このままじゃキミィに全部喰われて走り損だ!!」
「同感!」
2人は更に速度を上げて、全力で街路を駆け抜けていく




