1話-3
「と言っても……こちらは待機任務だし…」
「勝手したらえらい言われるし動きたくても……なぁ?」
アンフェルの必死の訴えも虚しく剣士と戦士はそう答えた
小型の怪物の撃退ならどこの冒険ギルドも手慣れたもの。なのだが各地で2、3年前から竜との小規模な戦闘が断続的に続いていて、冒険ギルドは現在例外はあるがほぼ全てが人員や物資の補填をしている
加えて20年前の辛くも人類側が勝利した竜との大規模戦争がまた始まるのでは…という噂も広がっているので、動くに動けないのである
「ホントに悪いんだけど…」と、剣士と戦士は声を揃える
─聞きたくない。その続きは聞きたくない。言わないで─
ここで断られたらもう後がない。アンフェルの顔に更に悲壮感が満ちる
「助けましょう」
と、2人の声を遮り奥のカウンターから声がかけられ、声の主が近づいてくる
「テールさん?」
体格は並み、笑顔と見紛う細目に質素な服装。一見はどこにでもいるような町娘
だが、彼女は美人だった。美人に美人でもう1つオマケに美人が付くくらいのどうしようもない美人であった
「責任は私が取ります。助けましょう」
薄目だがテールは真剣な顔で言い、その後にアンフェルと目を合わす
地獄に仏。アンフェルの目に映るテールは女神だった
「キャラバンの人たちはもう全滅してるかもしれない…けれど、それでも良いのね?」
が…、なるべく考えない様にしていたその言葉はアンフェルの胸を強く抉る
「それでも…良いです……。お願いします!助けてください!!」
精一杯の声をあげ頭を下げた。テールは肩に手を置き頭を上げるように促し
「決まりね。それじゃあ…」
と言い、アンフェルから三人組の方へテールは向いた
「あいよー。あたしゃ暇だったし構わないけど、後で怒られても知らないよ〜?」
「テールさんのお願いならしょうがないですね。武装取りに行ってきます」
女戦士は立ち上がり、ニヤリと笑いながら腕をブンブン振り回し、剣士は苦笑しながらまたかと小さく呟いて奥に駆けて行った
「キミィちゃんも大丈夫かしら?」
「……らくしょう。…おわったら……ごはん…たべたい…な?」
キミィと呼ばれたローブの少女はたどたどしく言うも、自分より背丈が低い少女もついてくるのに疑問に思ったアンフェルは
「…この子も行くんですか?」
と、つい聞いてしまった
「大丈夫。うちで一番の稼ぎ頭よ♪」
「……がん…ばる…」
テールはキミィの頭を撫でながら言い、キミィはふんすと鼻息をあげる
「ま、キミィはその見た目だし最初はそうなるわなぁ。テールさん、あたしは終わったら酒…」
「モリン、待機任務中の飲酒は原則禁止」
「ルールって破るためにあんだぜ?イザベラ」
早々に準備を終えて駆け足で戻りながら軽口を叩く女戦士モリンに、女剣士イザベラは溜め息を吐いた
モリンは背中に大型のハンマーと腰にトンファーを装備し、イザベラは一般的な剣を背中に1本、両手に2本の計3本持っている
「お酒はダメだけど美味しいご飯を作って待ってるから♪万が一の場合は〜〜狼煙でもあげてね?」
「ちぇー…はいよ。と、ほらほら一緒に行くんだよ。道案内!」
「は、はい!?ちょっと─」
釘を刺されて少し残念そうな表情を浮かべたモリンはアンフェルのコートのフードを掴み、ズルズルと引きずりながら外に向かう。対照にキミィはやる気に満ちた顔をして後に続く
「では、なるべく早くに戻りますね。留守番お願いします」
イザベラはそう言いながら3人に続いて外に出た




