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2話-5

 「何かもう…すごい疲れました……」

ドアを出るなりげんなりした顔でアンフェルはそう呟いて大きい溜め息を吐いた

「明日から仕事教えるのに大丈夫?」

荷車を取りに戻ったテールが心配そうに聞きながら次の目的地に向かって先導する。遅れてアンフェルもテールの横に並ぶ

「えぇと…わからない…です」

「そっか、解らないかぁ…。でもね?自分で進む道を選んだアンちゃんは偉いと思うな」

そう言われて、アンフェルは俯いていた顔をテールへ向ける。彼女は真っ直ぐに前を見つめながら歩を進めていた

「立ち止まるなとも振り返るなとも言わない。道は無数に有ってどこにでもあるしどこにでも続いてる。だから、進んでみないとその先に何があるか解らない」

柔らかな物腰でそう続けるテールの顔をアンフェルは歩きながらじっと見つめる

「考える時間はいくらでもあるし、疲れたら休めばいいの。不安になったら人に頼ってもいいの。だって先の事なんて誰にも解らないんだから♪」

そう言い、アンフェルに微笑んで頭を優しく撫でた。早くに母親を亡くしたアンフェルは

(お母さんが生きてたらこんな感じなのかな…?)

と思いながら不安が少し消えるのを感じていた

「さてと、次は買い物よ♪今日はお姉さんご馳走作っちゃうんだから〜♪」

先程とは打って変わって楽しげに言う。少し心が安らいだアンフェルも

「はい♪」

と笑顔で答えた

それから少し経って商業区域へ。目的の店の前には荷物が積まれ布が被せられた別の荷車。テールは店主と軽い会話をしながら会計を済ます

「今日はテールさん一人なんだねぇ……大丈夫かい?」

「問題ないです♪じゃあまた次の買い物リストを持ってくる時に〜♪」

と言いながら、テールは行きと同じ歩調で荷車を引く。アンフェルは

「後ろから押しますか?」

と聞いたが、これくらいなんともないと笑顔を崩さずやんわり断わられ、逆に

「お姉さんだけど、アン君よりは力があるんだから♪」

と、からかわれた。アンフェルは少し頬を膨らませてムッとするが

「今はそうでも、これから変わりますよ」

と、苦笑して駆け足でテールの横につき、2人で帰路に向かった


 「ただいまぁ〜♪」

荷車を建物前に置いて中に入るなりそう言い、続いてアンフェルも

「た…ただいま……」

と小声で言い中へ。ラウンジには三人娘。先程より回復したイザベラと相も変わらず菓子を頬張るキミィに、まだ少し機嫌が悪そうなモリン…と、テールには見慣れない男が一人。だが、アンフェルにはその人物に覚えがあった。男は帰って来たアンフェルを見るなり走り出し

「ぼっちゃん!よくご無事で!!」

と抱きしめる。察したテールは三人娘に手招きして外の荷物の移動を頼み、再び外に出る

「アンちゃんの所の商人さん?」

「ええ、戻って来るまで待たせていただけないかと言われたので」

「まぁ…早いにこした事ねぇしなぁ」

敷き布を取り現れた大量の食料。早々にテールとイザベラは運びやすい物を持つが、大樽で置かれた酒樽三つを見たモリンは目を輝かせる。が、キミィが酒樽一つを魔法で浮かせて運ぶとちぇ〜と残念そうな小声で呟き運び始める

「……あの子…帰るの…?」

「いや、テールさんがさっき仮登録に…って話をしたじゃないか」

イザベラがばつの悪い顔で返すも、当のキミィからそうだっけ?とキョトンとして返されたので溜め息を吐く

「あたしゃまだ反対だかんな?」

「もうテールさんに言って。言葉であの人に敵うならだけど」

疲れ顔で相手を見ずにイザベラが言うとモリンは少し考え

「そりゃ無理だわなぁ」

と漏らした後にテールはクスクス笑って4人は中に戻る。中に戻ると商人が深々と頭を下げて礼をした。三人に続けて、と促しテールが応対する

「この度はありがとうございました。迷惑ついで…と言ったら聞えは悪いでしょうが、坊っちゃんの事。宜しくお願いいたします」

快諾されるとは思わなかった。が、人減らしの線もある。実際貧しい村では良く有ることだ。相手は商人…資材や食料の確保で要りようになるしパイプを作っておいといて良い。向こうも今回の件だけでは無いだろうが、手練れの傭兵が必要なのは周知。ならばこちらの腹の内はなるべく晒さずお互いに手を取り合うフリをしてれば誰も不幸にならない

「とか考えてるのかなぁ…」

イザベラが三人を見ながら足を止めて漏らす

「何の話だ?」

「いや…。モリンはアレできる?」

「いんや?あたしゃ面倒臭いのは苦手だし。アレ出来るのはこのギルドだとアンタとテールさん含めてフィリアの姉御と親方くらいじゃね?」

モリンも足を止めて会話を弾ませているテールと商人をチラリと見て言った

「私にはまだ無理だよ」

そう言ってイザベラが歩き始める。モリンは言われた意味を深く考えずにイザベラに続いた


 「じゃあ、いってきます」

「はい、いってらっしゃい」

数十分後、商人と共にラウンジを出ていくアンフェルをテールが見送る。行き違いに移動を進める三人娘が入り、イザベラがテールに会話を持ち掛る

「何処に出掛けたのですか?」

「遺体保管所に、その後墓地ですって」

「ああ…まぁ、そうですよね。それで交渉は?」

「こちらで保管して必要な物は格安で、残りはこの町に卸すそうよ。後は要りようの際は是非内にって。まあ、社交辞令程度に受け取りましょう。はいはい、料理もあるしちゃっちゃと片付けちゃいましょう」

と、テールは話を切って外に出ていった。聞きたい事はまだ有ったがまあ、いいか。と、イザベラも食材の移動に戻る。終わったのは更に数分後だった


墓地での軽い埋葬式。埋められる父親の棺をアンフェルはジッと見つめる。その瞳に涙は無かった。見兼ねた商人が

「坊っちゃん…泣いても良いのですよ?」

と言ったが

「大丈夫。大変なのはこれからだろうし…どうしようも無くなった時に泣くよ」と返される。その顔には子供ながらに覚悟に満ちていた。埋葬後、墓地から出て行きながら軽い会話をしていよいよ別れに

「父共々ありがとうございました。そちらも大変でしょうがお元気で」

「いえいえ…そちらもお元気で。いつでも戻って大丈夫ですから気軽に訪ねてくださいね」

商人はぺこりと頭を下げて二人共別々の道へ歩く。商人は一度振り返ったが、アンフェルは振り向かずに歩みを進める

 悲しみが無かった訳ではない。ただ、今は前へ。テールの言葉を胸にアンフェルは開拓ギルドに戻っていった

モバイル版のサービス終了までには終わらせようと思いますが、このペースじゃ多分無理かなぁ(苦笑)

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