序章
風来坊太郎。
この男はとにかく旅好きであり、旅となれば日本のさい果て、世界のさい果て、異世界だろうが、どこだろうが行けるという自信はあった。
しかし普段の生活はというと、毎日満員電車に揺られ、家と職場を行ったり来たりという、毎日変わらぬ日々。
そんなマンネリ化した毎日に、どこか飽き飽きしていた風来坊太郎。
そんな風来坊の前にある日、女神と名乗る人物が現れる。
一見するととても女神には見えないような普通の格好の、どこにでもいるような普通の女性といった感じだ。
しかし、女神と名乗るその女性は、衝撃的なことを口にする。
「あなたにはこれから、世界196ヶ国のワールドツアーに行ってもらいます。
ただし、全ての国々に足を踏み入れ、ミッションをクリアするまで、このワールドツアーは終わりません。永久無限に続いていきます。」
世界196ヶ国!?全ての国と地域を巡るワールドツアー!?
全ての国と地域を巡らない限り、いつまでも終わりなく永久に続くって!?
ということは、たとえば北朝鮮、アフガニスタン、イラク、シリア、スーダン、南スーダン、ソマリアとかの、
絶対に足を踏み入れられないような、退避勧告とか出されているような国の場合は、どうするんだよ、風来坊太郎はそれが気になって聞いてみた。
「いちおうそれらの国々も、196ヶ国の中には入っています。
ただし、どうしても退避勧告が解除されない場合や、あるいは情勢の変化によっては、国家そのものが消滅してしまう場合もありますね。
その時はその時で、また考えましょう。」
次に、基本的に移動手段は電車やバス、飛行機や船などの公共交通機関となるようだが、
それらの公共交通機関が万が一、事故を起こして、事故に巻き込まれ、
ワールドツアーの途中で事故死してしまうようなことになったらどうなるのか?ということを聞いてみた風来坊太郎。
「えー、そのような事態も想定されますね。
その場合、女神である私のお情けで、再び命を授けましょう。
もちろんそんな事故など起こさないのが一番いいですが。
ただし、そうなった場合でも、ワールドツアーは途中で取り止めることはできません。そこからまた再スタートということになります。」
長々とルール説明が続いたが、記念すべき一番最初の国をどこにするのかというのが、実は一番気になっていた。
「一番最初の国は、神話で有名なギリシャです。」
「ギリシャ!?あのギリシャ神話で有名なギリシャが、最初に行く国になるのか。
それと古代オリンピックの発祥の地としても有名な。」
いよいよワールドツアーに向かうことになった、風来坊太郎。
「えらいことになったぞ…。」
風来坊太郎は途方に暮れている様子だったが、そんなことも言っていられない。すぐに準備を整え、ワールドツアーに行かなければ。