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始まりは突然に

 さて、いきなりで申し訳ないが自己紹介をさせてもらおうか。

 俺の名前は天峰 傑(あまみね すぐる)

 (よわい)36を超えたおっさんである。

 いや、『であった』が正解か。

 今の俺は――――――――――スライムなのだ。


 時は3日程(さかのぼ)る。

 いつもと同じように朝6時に起床し、朝食を食べ、身だしなみを整えて会社へ出勤する。

 8時から業務であるソフト開発を行い、多少の残業があり19時に退社。

 いつもの大衆食堂に寄って、いつも通り日替わり定食を食べて帰宅した。

 風呂と歯磨きを終わらせて寝る準備を整えパソコンの前へと座る。

 最近はソーシャルゲームが台頭してきたせいか、すっかり下火になってしまったMMORPGを起動させる。

 数少ない俺の趣味である。

 あまり人と会話することが少ない俺でも、ネット上のコメント欄では結構お喋りだったりする。

 ネット上というこちらの素性がわからない世界では、多少解放的になるらしい。

 いつもの日課であるゲーム内のクエストを消化し、ふと時計を見るとちょうど日付が変わるころだった。

 いつものメンバーにログアウトすることを告げてゲームを落とした。


 ここまでがいつも通りだった部分だ。

 ベッドに向かうために椅子から立ち上がった俺は突然こめかみ近くの頭の中からブチッという音が聞こえた。

 いや、実際に音はなってなかったのかもしれないが俺にはそう聞こえた。

 突然視界が上向きにずれて世界が黒と白い光の線のみに変わる。

 背中に何か硬いもの―――――おそらく椅子だろう―――――がぶつかったような衝撃が走った。

 そのあと白い光が横へと流れ、今度は右肩と頭に衝撃を感じた。

 どうやら床に倒れたらしい。

 そう気づいたのは倒れてから数十秒経った後だった。

 相変わらず視界は黒と白い光しかない。

 身体は倒れてからずっということをきかず、俺は床に転がったままだ。

 どうやら先程のブチッという音は頭の中の重要な何かが切れてしまった音らしい。

 なんかだんだんと呼吸が苦しくなってきた気がする。

 身体も冷えてきている感じがする。

 そしてなにより瞼が重い・・・。

 そして5分と経たずに俺の意識は深い闇の底へと沈んだのであった


 次に気づいたのはどれくらい経ってからだろうか。

 あたりから早朝に鳴く雀のような鳴き声が聞こえる。

 俺はゆっくりと意識を覚醒させるとあたりを見回した。

 薄暗いが少し上に丸い穴があった。そこから光が射し込んできている。

 とりあえず状況がわからないが、その穴に手をかけようと腕を伸ばした。

 そう、『腕』を『伸ばした』のだ。


(・・・・・・・ん?)


 俺の視界(?)に映っているのは射し込む光に照らされてキラキラ輝く薄水色の半透明な物体である。

 しかしそこに本来なければならないのは俺の腕のはずである。


(ん?んん!?)


 その半透明な物体は何故か俺が腕を左右に振ろうとすると、左右に振れた。

 上下に振ろうとすると、上下に振れる。


(え、ナニコレ・・・・)


 呆然としながらその物体をしばらく眺めていたが、やがて重要なことに気付いた。

 その物体が『どこにつながっているか』である。

 ゆっくりとその物体がつながっている根元へと視線を向けると・・・・。


「■%+$★●|-#@#$%&!!?」


 何か叫んだ気がしたがそれどころではない。

 本来俺の身体があるべきところには半透明の物体。明らかに人間の身体ではない薄水色の半透明な丸いフォルム、ゲームなどでおなじみの・・・・・スライムなのであった。



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