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夢の中へ  作者: 闇からの一撃
3/3

夢玉

初めの頃は毎日夢を見られるわけじゃなかった。まず1層目にすら入れずにそのまま朝まで寝ちゃうことが多かった。やっと夢を見られたとしても、さらに眠れるような状況はなかなか訪れなかった。


で、起きているときに一生懸命考えたんだ。どうすれば夢の中で眠れるか。夢に落ちたら、まず自分の状態を確認する。次にその時の年齢に応じて、その頃よく眠れた状況になるように自ら行動する。例えば、学生時代なら学校に行く、子供時代なら車に乗るように...と。


ただ、そうそううまくいくわけじゃない。自分の状況を確認したときに、自分が自分の知っている自分とは限らない。例えば、TVで見た不倫インタビューを受ける芸能人になっているときもあれば、動物になってるときもある。ひどいときは川の中の石になって鮎にはまれてるっていうのもあった。そうなるとさすがに次の層に進めない。


でも、たまたま10層目くらい(多分、10層目)に行けたときに、あれが手に入ったんだ。


夢玉ゆめだま…と、オレは呼んでいる。


気がつくとそこは分かれ道、舗装はされていないが、土が踏み固められた感じの道。行き交う人はいないが、なんとなく時代劇で見る江戸時代の街道って気がする。その分かれ道の真ん中、草が生い茂っているその奥、普段なら気に留めずどっちに進むか考えるところだけど、妙に気になる。


気になる所は調べるのがRPGの鉄則⁉︎草をかき分け奥に進むと、そこには石でできたほこら、木の扉が付いていた。地蔵堂かな?お地蔵さんが入ってるにしては小さいが…

開けていいかな?ちょっとためらいながらも、どうしても開けたいという衝動にかられて、木の取っ手に指をかけ、観音開きの片側をそぅっとひっぱてみる。


小さな座布団に乗っていたのは、手のひらで握れるほどの大き目のビー玉サイズの玉。ビー玉と明らかに違うのは、光沢を持ったその玉の色が絶えず変化していること。波打つように、鼓動こどうのように、時には渦巻くように。黒から青へ、青から緑へ、緑から紫へ。なんか暗い色ばかりで、ちょっと禍々(まがまが)しい感じ。


触っても大丈夫かな?恐る恐る手を近づけると、玉は手の近づいたあたりから白い光を発し、暗い色が消えていく。光に気を取られていると、玉が手に向かって飛んできた!避ける間もなく、右手のひらに入った玉は、硬く、驚くほど冷たかった。手のひらに触れている部分から白い光がじんわり広がっていく。反対側からはまるでそれに抗うかのように、波動状に暗い色がどんどん送られてくる。


白い光と暗い色の攻防は拮抗していたが、徐々に白い光が優勢になり、やがて暗い色は消えてなくなった。

その瞬間、舌打ちのような音が聞こえたような気がしたが気のせいだったみたい。白い光もやがて弱くなり、たまの中に明るい色があらわれた。白からたまご色に、たまご色から橙色に、橙色から桃色に、波打つように、鼓動のように、時には渦巻くように。


あんなに硬くて冷たかった玉は、温かく柔らかで、なにか小動物を手のひらに乗せているようだった。何だかくすぐったいようなその感触を感じながら、これまでの出来事に呆然としていると、たまはいきなりオレのみぞおちめがけて飛んできたんだ。


痛っ、……くない。

たまは弱い光の余韻を残しながら、オレの胸の中へと消えていった。

そして、すべての階層をすっ飛ばしてイキナリ目が覚めた。



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