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病と少女と幽閉奇譚  作者: 繭月
想いは受け継がれて
2/11

プロローグ2

 その後、マルティナと彼は少し会話を楽しんで、さよならをした。

 彼が部屋を出ると、外で待機していたマルティナの執事が恭しく一礼をする。名をニコラスと言ったか。


 「ジル様、お帰りになられますか?」


 ニコラスは、整った顔立ち、ストレートな銀髪に珍しい赤紫色の眼。執事服をきっちり着こなした青年だ。


 「…ニコラス、最近マルティナ様について、何か変わったことはないか?」

 彼、ジルは、マルティナの夢の話を聞いた時から、ずっと心の隅に引っかかったなにかがあった。なにかいけないもののような気がしたが、一向に思い出せない。

 「…?いえ、特には。ああ、ですが最近奥様は夜、灯りをつけたまま寝てしまわれる事が多いですね。」


 結局は思い出せず、もやもやしたまま帰ることとなった。







 今日の夢はいつもと少し違った。


 "約束を交わさないか"

 "いやよ"

 それだけで終わるはずの夢に続きがあった。


 『それでいいのか?』

 影は聞いてくる。

 「…どういう意味かしら?」

 背中に冷や汗が伝う。わけがわからない。


 『分かっているのだろう?このままだと、お前も、その腹の子も死ぬ。』

 「だから、なによ…そんなこと…………!」

 それだけを口にすると、足から力が抜けていき、立つことがままならずペタンと真っ黒な床にへたり込む。

 自分は死んでもいい…だが、お腹の子には生きて欲しい。そう、いつも願っていた。現実を言ってしまうと、トラウマが蘇るようで怖かった。


 マルティナは、以前死産した事があった。初めて授かった子。産み落とす数ヶ月前から、夫と名前を考えていた。産まれる日を、今か今かと待ちわびていた。…だが、産まれてきたその子の首には、へその緒が絡まっていて、産声をあげることすらなかった。自分を責めることしかできなかった。私が、死なせてしまった。そんな思いに心が潰される。生きて、欲しかった。


 そのうち第2子を孕んだが、黒死病を患ってしまった。今度は自分の身体がもちそうにない。また、死なせてしまうのか……………。


 『悪い話ではない、俺と約束を交わせ。そうすればその腹の子は助かるだろう。』

 マルティナは自分の耳を疑った。

 「どういう…こと…?」

 『そのままの意味だ。さあ選べ。約束を交わすのか、交わさないのか。』


 影は手を差し伸べる。


 もはや彼女に選択肢は無いも同然だった。どうせ死んでしまうなら、可能性のある方に賭けるだけだ。


 マルティナは影の手を取った。


 影はニヤリと笑う。

 『俺はアルベルト、お前の病だ。さあ、約束を交わそう。人と病との奇跡なる約束を。』

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