チーム編成
★
「さて、まずはチーム決めだな」
僕たちは学園長室から出た後は教室に戻って作戦会議をしていた。
「秀人、どうしてチームを決めるの?」
別にこのメンバーでチームが決まっているから改めてチームを決める必要はないはずだ。
「ハア? おめぇこれまで何回チーム戦をしたと思っているんだ?」
秀人が呆れた顔で言ってきた。唯以外の皆も同じような顔をしている
『なあ、チーム戦ってなんだ?』
『おまえもか。いいから黙って話を聞いていろ。いずれ分かる』
「まあ、お前はバカだしな。春休みで全部忘れてしまったんだろ」
秀人が僕の顔を見て勝手に納得する。なんて失礼な。
「今回はチーム戦をするのが初めての唯とテトがいるからな。一つずつ説明もしていく」
「『お願いします(ニャ)』」
「まず、チーム戦というのはうちの学園で不定期に行われる対戦のことだ。主に教師同士で決めたり、今回のようにあのじいさん直々に決めたりすることがあるが一番多いのは生徒同士で決めることが多い。だけど日程や時間、場所などは教師陣が全て取り仕切っている」
「「どうして(ですか)?」」
「不定期というのはいつ始まるか分からないものだ。だから、いつチーム戦が始まってもベストでいられるように準備することで生徒たちの実技向上につながるわけだ。それにチーム戦で勝っていけば校内チームランキングにも影響するからな」
へえー、そんな目的があったんだ。
「次に対戦順だが今回俺らが行う六人制は、二対二、三対三、一対一、の順で行われる今から始めるのはその対戦順のチーム編成だ。分かったか? バカトオル」
「うん、OK」
バカと言われたことはスルーしておこう。
「んじゃ、早速決めようと思うが、その前に唯の能力を把握しとかなきゃな」
「あ、はい。えっと、私の能力というかテトちゃんの能力はまず具現化は短剣と拳銃です。テトちゃん具現して」
『了解ニャ!』
すると、テトの姿は光に変わり唯の体を包んでいく。
『具現完了ニャ!』
テトが喋ったその時には唯を包んでいた光は既に消え、唯の手には短剣と拳銃が握られていた。
「具現化の武器はこんな感じです」
「ほう、近接用の短剣と遠距離とは言わないが中距離用の拳銃か。けっこういいな」
「ありがとうございます!」
見ると唯の顔は赤くなっている。褒められることに慣れていないんだろうか。
『どうですか、わたしの能力』
具現化していても神は話すことはできるようだ。
『大丈夫じゃないか』
『かっこいいですよ』
イムとイシスがテトを褒める。
『ホントですか! ヤッター!』
「じゃあ次、憑依化を頼む」
神の能力は具現化の他に憑依化がある。
これは神自身が持っているオーラを体内に集め発する技である。
「テトちゃん!」
『任せてニャ!』
テトは再び光となり唯の背中についていく。
そして、唯の背後から白いオーラが溢れ出していく。
「大体こんな感じです。能力は全能力の強化です」
「ふむ、問題ない。」
「そうですか? 良かったです」
「よーし、そんじゃ今からチームを分けるぞ」
チーム分けの結果、最初は秀人と唯、次に舞と緑にヒカル、最後は僕となった。
「え、ちょっと待って秀人、どうして僕が最後なの?」
「メンバーのバランスを考えたら必然的にこうなるんだよ」
そう言われたら確かにそうなると思うけど。
「でも、僕が最後で大丈夫なの?」
僕の力なんかで大将をやっていいのだろうか?
「だめかもな」
「そうね」
「………………無理」
応援する気はないのか。緑だけが優しく見守ってくれていることだけが唯一の救いだ。唯は何の事だか分からないような顔をしている。
「まぁ、こっちが先に勝ち越しとけばいいんだから。」
「そうだよね」
そうすれば、僕のプレッシャーが無くなるから。
「だがもし、一勝一敗になったら…………自分でなんとかしろ」
「そんな良い顔で言われても何の解決にもなってない!」
「そのときはそのときに考えましょ。最悪、トオルを気絶させて代理を立てればいいし」
それはどうかと思いますよ舞さん。
「そんじゃ、早速練習と行きたいがもうこんな時間になっちまった」
気づけば外は夕焼けに染まっていた。
「せっかく、午前中に帰れると思ってたのによ」
「すみません」
「ん、唯が謝ることじゃないぞ。すべての元凶はあのじいさんだからな」
「そうだよ、気にすることないよ」
「アタシたちは早く帰っても何もすることないから」
「そんな、僕はゲームをやグフォ!」
「何もないから、ね! トオル!」
そう言いながら僕を殴った勢いで右腕に関節を決める舞。動きが滑らかすぎて全然気づかなかったんだけど⁉
「う、うん。なにも……ない……から」
「おーいお前ら、さっさと帰るぞ」
気付けばトオルも緑も帰る準備が終わっていた。
「待ってて、すぐ片すから」
一年生の教室に戻っていた唯を含めて六人+六神で帰ることになった。
★
学園からの帰り道、今ここには、僕と秀人と舞の三人で帰っている。ほかの三人は途中の十字路でそれぞれ別れて帰った。
「なんか今日はすごく疲れたような気がするよ」
「アタシもだわ」
「それもこれもあのじいさんのせいだ」
「しかし秀人、どうやって勝つつもりなの?」
何の話かといえば今日決まったチーム戦の話だ。
「ああ、そうだな。今のとこ何も考えてねえ。特に唯の戦闘スタイルが分かんねえからな」
確かに、舞と緑とヒカルの三人組は前から組んでいたし、僕は一人だから連携も特にないから問題ないと思う。
となると不安なのは、初コンビの秀人と唯だけだ。
「まあそこは練習しながら考えるさ」
「ふーん」
「アタシたちも久しぶりの実戦だからもう一回連携とかしっかり練習しないと」
「僕も準備しとかないと」
話しながら歩いているうちにT字路に着いた。
「んじゃ、俺はこっちだから」
そう言いながら秀人は右に曲がっていく。
「じゃーね」
「また明日」
そう言って僕と舞は左に曲がる。
僕と舞は家も近いからか幼稚園の時からよく遊んだ幼馴染だ。互いの親が非常に仲が良く、よくお互いの家に食事にも行ったものだ。
「それじゃ、お先に」
「うん、また明日ね」
僕の家の前で互いに別れる。といっても、ここから百メートル先にあるのが舞の家だからたいして変わりはない。
家の中は静寂だった。当たり前か。そう思いながら自分の部屋に入ってベッドで横になる。親が、仕事の関係で海外に行ってから一人暮らしをしている僕としては邪魔の入らないありがたい時間だ。
そうこうしているうちに、僕の意識は闇に呑まれていく。 僕は闇にそのまま意識を預けることにした。