新メンバーと初試合
カタカナの()の所はルビとして扱ってください。
「ここが学園長室か」
「なんか緊張してきたわ」
「何言ってるの舞、たかが学園長に会うだけなのに」
そもそもなぜ、僕らがこんな所にいるかというと、放課後になるなり高村先生が突然僕らの元にやってきて。
『あ、そうだ。神田と黒崎。お前らのチームは放課後、学園長室に来いとのことだ』
と、高村先生に言われたのでとりあえず来てみたわけだ。
「んじゃ、入るか」
ガチャ
「『ちーす』」
「『失礼』」
「「『『失礼します』』」」
「………………」『おじゃまー』
三者三様|(三神三様?)の挨拶で学園長室に入っていく。
『まったく、ろくな挨拶もできないのかいこのチームは?』
入室して言われた第一声がそれとは……。
『女子二人とその相棒の神はいいとして、そこの男どもと相棒の神』
女子以外ってことは…………。
「だそうだよ、秀人とヒカル」
「何を言ってる、お前ら二人に決まっているだろ」
「………………トオルと秀人だ」
『ちゃんと教えてやれよイムとレボ』
『お前らのほうがちゃんと教えてやれよ』
『俺の挨拶は完璧だったぜ』
「今喋った奴ら全員だ」
「「「『『『そんなバカな⁉』』』」」」
「よくそんなに驚けるね⁉ まぁ、こんなことしていたら話が進まない。とりあえず座んな」
そんなふうに言われて今一度学園長の顔を見直してみる。
…………フムフム……⁉
「⁉ 秀人、大変だ⁉ 学園長室に妖怪がいるぞ⁉」
「はあ? 何を言っている? そんなバカなことがあるわけ……ホントだ⁉」
「………………本物はどこにやった⁉」
「いい加減にしないか! ワシはれっきとしたこの学園の学園長だぞ!」
「学園長先生、こいつらさっきの式でも寝ていたから先生のこと見てもわからないですよ」
「ほんとかね? さすが三バカトリオだな」
そう括られるとなんか不愉快だ。
「んで、用件は何だじいさん」
「いきなりじいさん呼ばわりかよ、まぁいいや。実はあんたらに紹介したい生徒がいてね、入ってきて」
ガチャ
ドアを開けて入ってきたのは一年生のネクタイを付けた女の子だった。
「初めまして、雨宮唯といいます。この神はエジプト神話の猫の神バステトのテトちゃんです。よろしくお願いします。」
「あ、あぁ、よろしく」
戸惑う僕らの中で真っ先に対応した秀人が答える。
「……で、じいさんこれは何だ?」
「あんたらのチームの新しいメンバーさ」
「『はあ⁉』」
「ジジィ長! どういうことですか⁉ 説明をお願いします!」
「おまえさんはジジィ長かい、まずいいや。雨宮は一年の中で選ばれた生徒なのさ」
「何の?」
「毎年、一年生から数人選んで上級生のチームに混ぜるのが規則で決まっとってね、それで選ばれた雨宮があんたらのチームに加入するわけだ」
つまり、この普通にかわいい後輩が僕たちのチームに加入してくるのか。
「ふむ、まあ分かった。というわけで、これからよろしくな雨宮」
「は、はい! ……えっと……」
「秀人だ。黒崎秀人っていう名前だ。それとここにいる変な奴は相棒のイムだ」
「はい! よろしくお願いします秀人先輩。あ、私のことも唯と呼んでください」
「そうか。それじゃこいつらも紹介しとかないとな。」
そう言って、秀人はまず舞を指さす。
「こいつは姫川舞。面倒見のいい奴だから困ったことがあったら何でも舞に聞きな」
「よろしくね唯! あ、こいつは相棒のアルだから今後ともよろしく」
次に秀人はヒカルを指さす。
「この男は皆川ヒカル。普段はあまり喋らない奴だけど銃に関しては異常なまでの知識を持っているから銃に関して聞きたいことがあったらこいつに聞いてくれ」
「………………相棒のレボ、よろしく」
レボを指さしながら挨拶するヒカル。
秀人は次に緑を指さす。
「こいつは川村緑。うちのチームで一番しっかりしている奴だ。頼りになるぞ」
「相棒のイシスちゃんです。よろしくお願いしますね唯ちゃん」
「はい! よろしくお願いします」
さて次は僕の番か……秀人は僕のことをどんな風に紹介するんだろう?
「……以上だ」
…………はい? おいおい。
「ちょっと待て! バカ秀人! 僕のことを忘れているよ!」
紹介されずにこのまま忘れられたら僕はなぜここに来たのかということになってしまう。
「ん、ああ。こいつは気にしなくていいぞ。バカがうつるから」
「何を言ってる! ちゃんと紹介しろ!」
「ハア、わーったよ。このバカっぽいバカ面のバカな男は神田トオルだ。見た目通り正真正銘のバカだからバカと呼んで構わないぞ」
紹介で「バカ」と五回も言われたのは人生で初めてだ。
「えっと……秀人の紹介は置いといて初めまして、こいつは相棒のポロ。お互いよろしくね」
「なんだか皆さん楽しそうですね。これからよろしくです」
「「「「「よろしく」」」」」
新しいチームメイトとなった唯をみんなが笑顔で迎え入れる。
「ところで、皆さんのチームは何て名前なんですか?」
「俺たちは『矛盾な落ちこぼれ(ディバイトディクション)』という名でチームを組んでいる」
「ディバイトディクション?」
「矛盾な落ちこぼれ、という意味だ」
「なるほど。どうしてですか?」
「このチームは学生ランキング最下位クラスが三人いるんだ。つまり、俺らは学園内で落ちこぼれ組なんだ」
「でも、どうして矛盾なんですか?」
「そうだな、舞や緑は最下位クラスじゃないからだと思うな。特に緑は、学生ランキングトップクラスの奴だからな」
「それだけじゃないさ」
突然ジジイ長が話に割り込んできた。
「このチームは去年の校内チームランキングでは一年生全体の中でトップの成績だったのだからな」
「そうなんですか! それはすごいですね!」
「そうでもないさ」
秀人がなんでもないように返事する。
まあ、確かにどうってことないんだけどね。去年は一年生の中で一番働いていたのは僕らだったからね。理由としては、使い勝手がいい、だそうだ。いなくなっても学園側としては大したダメージにならないからというのはこちら側としては誇れるものではない。
「ああ、そうだ、神田に黒崎。この雨宮を含めた六人でチーム戦をやってもらうからな。ちゃんと準備しとくように」
「「はいぃぃぃ⁉」」
本日二回目の衝撃。
「ちょっと待て、突然すぎるだろ。そもそもこっちは唯がこのチームに入ることすら知らなかったんだぞ⁉」
「それは仕方のないことだ。決まっちまったものだからな」
「……チッ、日にちと場所、あと相手は?」
「一週間後の放課後。場所は学校の校庭。相手はあんたらと同じ二年のチーム、『世界の頂点(トップ・ザ・ワールド)』だよ」
世界の頂点………………。
「ねぇ緑、『世界の頂点』ってどんなチームなの?」
「世界の頂点は去年私たちとトップの座を争った相手ですよ。」
「そうだっけ?」
秀人は渋々とした顔で頷く。
「ハア、OK。一週間後だな。それで用件が終わりならこっちも帰らせてもらうぞ」
そう言って、秀人は学園長室から出て行った。
「ちょっと待ってよ秀人」
「ちょっと二人とも、あっ、失礼しました」
「失礼しました」
そう言ってみんな学園長室から出て行った。
『ハア、まーためんどくさくなってきたよ』
『そうだな』
『まあまあ二人とも、よろしくお願いしますねテトちゃん♪』
『よろしくお願いしますニャ』
『『『ニャ?』』』