個性的?
「あー、この度、二年C組の担任となった高村祐介だ。よろしく。」
朝の騒動から解放された僕は机に座って絶望していた。
「マジかよ………今年も高村が担任かよ」
僕の後ろの席で秀人も同じように絶望したような顔で呟いていた。
高村先生は去年も僕と秀人のクラスの担任だった。普段は誰に対しても優しいのに問題児であった僕と秀人に対してだけは異常なまでの鉄拳制裁を加えている。
まあ、秀人がいろいろ問題を起こすからいつも近くにいた僕も問題児扱いにされているんだけどね。
「二年生からはいろいろとやるべきことが増えている学年なので勉強も実技も怠らないように。それと、HRが終わったら始業式と入学式が始まるから移動しておくように」
そう言って、高村先生は教室から出て行った。
「なぁトオル、やっぱりお前がいるから高村が担任なのか?」
「何を言っているの、秀人がいるからに決まっているじゃないか。いい加減、問題児としての自覚を持ったらどうかな」
まったく、自分の悪い所を人のせいにするなんてありえないよ。
『イム、高村がいるってことは……』
『ああ、今年もテルだぜ……最悪だ』
僕らの近くでイムとポロの会話が聞こえてくる。
ちなみに、テルというのはギリシア神話の原初神アイテルで高村先生の相棒の神である。高村先生と性格が似ている為かイムとポロに対してだけは非常に厳しい神である。
『『……トオルと秀人がいるからか』』
なんて失礼な。僕は関係ないだろう。
「………………どう見ても二人のせい」
『まったくだな』
「「『『うわっ!』』」」
僕ら四人が四人とも同じ反応をする。
突然僕らの元に現れたのは皆川ヒカルとヒカルの相棒のであるギリシア神話の暗黒の神エレボスことレボだった。
「ヒカル、突然現れたらびっくりするだろ」
「………………ごめん」
ヒカルは普段は無口だが銃に関しては異常なまでの知識を備えている。頼れる? チームメイトである。ヒカルの相棒のレボはヒカルと違ってかなりのおしゃべり好きなお調子者である。
「………………それより、皆体育館に向かった」
気が付くと教室はもぬけの殻になっていた。
「ん、そうか。そんじゃ俺らも行くか」
「そうだね」
『なんだ、お前ら気づかなかったのか』
『まったく、バカな相棒を持つと苦労するよ』
「「お前らも気づいてなかったろうが!」」
『『………………』』
『どっちもどっちだな』
「………………同じく」
言い争っている僕らには二人の声は耳に入ってこなかった。
★
「んー、やっと終わった!」
「学園長の話なげーつうの」
長かった始業式と入学式も終わり時間は既にお昼過ぎ。僕らはチームみんなで学園長室に向かっている。僕と秀人以外にも舞に緑、ヒカルも同じチームなので一緒に学園長室に向かっている。
「そうですか? 結構為になるお話でしたよ」
「言っても無駄よ緑。こいつらのことだから式の間ずっと寝ていたに決まっているわよ」
「そんなこと言われるのは心外だな舞、ちゃんと話を聞いていたに決まっているでしょ」
「ああ。でなきゃ、学園長の話なげーとか言えんからな」
「それじゃあ学園長の名前と話していたお話の内容を言ってみて」
「「………………」」
「ほら、全然聞いていないじゃない」
「………………やはりバカだな」
「「「ヒカルも名前と話の内容言ってみて(みろ)(みなさい)」」」
「………………」
やっぱりヒカルも寝ていたじゃないか。
「だけど、どうして僕たちが寝ているって分かったの?」
「一年も同じチームを組んでいれば大体のことは分かるわよ」
そういうものかな? このメンバーでずっと一緒に活動していたけど僕にはとりあえず秀人とヒカルがバカってことぐらいしか分からないのに。
「今、なんだかすっごく誰かをぶん殴りたくなってきたんだが」
「………………同じく」
二人とも物騒だな。
「そもそも体育館にいた皆が分かっていたわよ。あんなでかいいびきを掻いていたら誰だって気付くわよ」
そのいびきはおそらく秀人のものだ。
「言っとくけどあんたら三人ともよ」
「「「そんなバカな⁉」」」
「どうしてあんたらがそんな顔できるのか不思議でならないわ」
「フフフやっぱり、このチームは面白いです~」
『しかし』
『よくこのメンバーで』
『去年、あんな成績残したよね』
『学校中が驚いていたもんね』
『今年も何か起こるかな♪』