09−1
どうしてこんなことになってしまったのだろうか……。
どうして、あのときにもっと気を遣っておかなかったのだろうか……?
僕は、過去の自分の言動を悔いた。
たった数分前の、自身の言葉を呪った。
たったあれだけのことで、たったそれだけのことで、ここまで事態が重くなるなんて、想像すらしていなかったのだ。
いや、世の中の事象なんてものは、大抵がきっかけは些細なことだ。
東西ドイツのベルリンの壁の崩壊だって、勘違いから広まった噂話がきっかけで起こったというじゃないか。
だとするのならば、人類の歴史と言うのは、勘違いの連続なのかもしれない。
勘違いに彩られた、勘違いの記録なのかもしれない。
そんな大げさな話ではないが、今現在、僕の目の前に起こっている、この現実を引き起こしたのは間違いなく僕だ。
僕の考えなしの言動が、この事態を引き起こしたことは、否定のしようがない。
いや、考えてはいた。
考えてはいたが、本当に考えていただけだった。
考えるだけで何もせず、ただ、見守っていただけだった。
いや、見守っていたというのも、おこがましい表現かもしれない。
僕は、傍観していただけに過ぎない。
傍観者なのにも関わらず、無駄な口だけ出してしまったが故に、こうなってしまったと言えるかもしれない。
口は災いの元。
覆水盆に返らず。
後の祭。
後悔と懺悔の言葉だけが僕の心を占める。
目の前の光景が、僕の脳内に焼きつく。
きっと、僕はこの光景を、二度と忘れることはできないのだろう。




