表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルチ  作者: あみるニウム
06「非日常の受け入れ」
30/53

06−6

「気にするな。おそらく、あの距離とこの回数が、今のお主の能力の限界なのじゃろう。ざっと二十五メートル弱というところかのう?」

 小学校などによくある二十五メートルプールの長さ、それが僕の射程距離。

 そして、連続して撃てる回数は、十回。

 これが今の僕の限界だということか……。

 たったこれだけのことしかできないのか……。

「酷なことを言うようじゃが、そうじゃ。しかし、何の訓練もせずにあれだけ回数と距離を飛ばせるのじゃから、才能はあるのじゃろうて。もっとも、このような方法で戦いに挑むものはお主が初めてじゃから、比較の対象がないのじゃがな」

「そう、ですか」

 まあ、誰もやったことのないことを成し遂げたということで、よしとしよう。

「しかし、これではまだ危ういな」

 天原さんが真剣な顔つきでそう告げる。

「ですよね……」

 僕も薄々感じてはいた。

 大きさなどから言って、あの程度の炎ではゾウオに傷一つつけることはできないだろう。

 二度しか見てはいないが、それだけでもわかるほどに、ゾウオは頑丈だった。

「何か……、何かもう一捻りできんものか……」

 天原さんが真剣な顔で考えを巡らせた。

 僕自身も、ありとあらゆる可能性を頭に思い浮かべた。

 炎を出せることはわかった。

 ということは、おそらく水や氷や電気を使ったその他の現象も、起こそうと思えば起こせるのだろう。

 しかし、何を起こしたところで、その規模は知れている。

 先の炎の塊と大差ないほどの規模でしか、今の僕には具現化できない。

 なら、どうする?

 どうすれば、この規模の現象を、ゾウオに対する攻撃として変換できる?

 僕らはかつてないほど真剣に考えた。

 普通に現象を具現化させて、それをゾウオにぶつけるだけではダメだ。

 魔法剣のように、武器に宿らせて戦えたらいいのかもしれないが、生憎僕にバトルセンスは皆無だ。

 武器に宿らせたところで、たかが知れている。

 そのことは、先ほどの天原さんとの訓練で、僕自身が誰よりも身に染みてわかっている。

 だったら、他の方法を取るしかない。

 武器に宿らせるのではなく別の方法で、何か画期的な方法はないものか?

 僕のバトルセンスを補って戦えるような、そんな方法はないものだろうか?

 僕は様々なマンガやアニメのシーンを脳内に思い浮かべた。

 魔法使いがどのように戦っていたのかを、必死に思い出そうと試みた。

 しかし、どれだけ思い浮かべても、魔法使いは魔法使いでしかなかった。

 魔法を使って、魔法で攻撃するシーンしか、思い浮かべることはできなかった。

 どうすればいいんだよ……、今から戦闘訓練なんてできないんだよ……。

 遠隔で戦えて、この力を巧く使える戦闘法は…………。

 ……いや、待てよ? 遠隔で戦う?

「天原さん!」

 僕は思わず必要以上に大きな声で天原さんを呼んでしまった。

「ど、どうした?」

 突然の大声に天原さんが思考を止め、僕に向き直った。

「これならいけるかもしれません」

 きっと、今の僕は自信に満ちた顔をしているのだろう。

 僕の顔をを見ると同時に、天原さんの表情も変わった。

 僕の思い浮かべていたことも読み取ってくれたに違いない。

「……そうか、その方法があったか! うむ、いけるかもしれぬ。試してみようではないか! しかし、さすがにそればかりは私自身が受けるのは、危険な気がするな。よし、ちょっと待っておれ」

 そう言うと、天原さんは先ほどの同じぐらいの距離に移動し、ゾウオの形をした目標物を具現化させた。

 そして、再び僕の近くへと戻って来た。

「あれに向かって試してみよ。ある程度の強度は誇っておるはずじゃ。生半な攻撃では、びくともせん」

 天原さんが具現化したものを指差しながら、僕に告げた。

「わかりました」

 そして、僕は思いついたことを実行に移してす。

 渾身の力を注ぎ、最後の秘策に思いを乗せる。


 ──結果は、大成功だった。


 ゾウオをかたどった目標物は、粉微塵に破壊された。

 周囲に飛び散った破片から、炎が上がっている。

 天原さんが笑みを浮かべた。

 僕も思わず口許が弛んだ。

 目を合わせずとも、僕らの意識は同じことを実感していた。

 これなら、この方法でなら、今の僕でも戦える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ