04−2
「はいはいはーい! 次は私も攻撃に回る!」
楽園さんの申し出を受け、改めて作戦を詰めていると、突然ナミが宣言した。
「いや、ナミどの、申し出はありがたいのじゃが、さすがのナミどのも、周囲の探査をしながら攻撃もするというのは、厳しくないかのう?」
天原さんが心配そうな表情を浮かべながらナミに応じた。
「大丈夫だよ! ちょっと探査範囲は狭くなっちゃうかもだけど……。飛び道具を武器にすれば大丈夫だと思うの。バーンっ、てね!」
ナミは手で鉄砲の形を作り、何かを撃つような仕草をした。
「ううん……、確かにそれなら大丈夫って気もしないでもないけど……。でも、ナミくん、君まで無理をして動けなくなったら、元も子もないんだよ?」
みろくがナミにそう言うと、ナミは膨れっ面を浮かべながら反論した。
「大丈夫だもん! 絶対……、ううん、たぶん! 大丈夫だもんっ!」
逆に気弱な言葉になってるぞと思わずツッコみそうになったが、ナミが眼を輝かせながらこちらを見ていたので、僕はグッと堪えてそっぽを向いた。
誰がツッコミ待ちなんかにツッコんでやるものか。
「あ、あの……、ぎいちゃん……?」
ナミがモジモジしながら、ツッコんでと訴えるような視線を送って来る。
「まあ、ナミが大丈夫と言っているのですし、好きにやらせましょう」
僕はあっさりと切り捨て、話を次に進めた。
ナミはアニメでしか見たことのないような驚きの表情を浮かべていた。
現実にそんな顔をする人を初めて見た。
決して、年頃の女の子がするべき表情ではない。
しかし、僕は完全に無視を決め込んだ。
表情を戻したナミは、涙目になりながらこちらを睨んでいた。
「まあ、確かに、舞どのが抜ける分の戦力低下は厳しいものじゃからな……」
天原さんがナミを気にする様子もなく、独り言のように呟いた。
「ナミどの、無理をしない程度でお願いできるか?」
天原さんがナミにそう話しかけると、未だに半泣きで僕を睨んでいたナミは、瞬時に涙を引っ込め、天原さんの方に向き直って満面の笑顔で応じた。
「うんっ、まかせてよっ!」
おい、涙止まってるじゃねえかっ。
嘘泣きかよっ。
言葉に出すのは癪だったので、僕は心でツッコんでおいた。
そんな僕の心のツッコミはさておき、今回の作戦の全容が決まった。
まずは、全員で体育館に集まる。
そこを決戦の場にするのだそうだ。
すでに日は完全に落ち、夜中と呼べるほどの時間帯でもあるし、警備員が来たらどうするのかと思っていたが、警備員は生徒会の裏の活動を知っているらしい。
そのため、事を進めている間に体育館に人が近づかないよう、周辺警護を頼んでおく、とのことだった。
そして、体育館でハルチへと移動し、ゾウオを待ち構える。
待ち構えるなんてできるのかと思ったが、よくよく考えたら夕方もおびき寄せたようなものだったし、天原さんによると、ゾウオの活動には周期のようなものがあるそうで、活動する可能性が限りなく低くなる一瞬を狙い、体育館に移動するということだった。
ゾウオの活動していない時間帯に移動して、ハルチで戦闘態勢を整えて待ち構えていれば、必ず奴らは僕を狙って集まるはずだそうだ。
しかし、今回も二体で来る可能性が高いので、苦戦するのは間違いないだろう。
天原さん、みろくがそれぞれ一体ずつ対応し、ナミがその援護射撃をする。
楽園さんは僕にハルチからの干渉を妨げるシールドを張り続けるため、戦闘には参加できない。
僕は、今回もただ、眺めるだけだけだ。
僕にできることは、何もない。
ただ傍観者として、観察者として、そして、囮として、その場に存在するだけだ。
でも、それしかできないのだから、仕方がない。
僕は僕の役割を果たすだけだ。
そう自分に言い聞かせ、決戦の時を待つ。
そして、いよいよ、その時刻がやってきた。




