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ハルチ  作者: あみるニウム
00「非日常」
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 これは、夢なのだろうか。

 僕は夢を見ているのだろうか。

 意識が飛びそうになるのを必死にこらえながら、僕は頭を回転させた。

 だが、状況を把握しようとすればするほど、頭の中は混沌としていった。

 落ち着くんだ。落ち着いて、客観的に状況を把握するんだ。

 そう自分に言い聞かせ、もう一度辺りの様子を伺ってみる。

 目の前にいる女性は、呪文のようなものを唱えている。

 その先に、突如として現れたアレが雄叫びを上げている。

 耳を引き裂かんばかりの音量で、叫び声を上げ続けている。

 それに対抗するかのように、女性は何かを唱えていた。

 聞き取ることはできないが、何かをブツブツと唱え続けていた。

 彼女は一体、何を唱えているんだろうか。

 いや、そもそも、ここはどこなのだろうか。

 明らかに、先ほどまでいた場所ではない。

 全てが先ほどまでいたあの場所とは違っている。

 空の明るさも、辺りの景色も、何一つ類似点がない。

 何度も確認してみたが、やはり変わりはなかった。

 僕は、たった今、目の前で起こっている出来事を受け入れることができず、ただ混乱するばかりだった。

 混乱した僕の脳内に、様々な考えが浮かんでくる。

 僕は何故、このようなところにいるのだろうか。

 どうしてこんなことになってしまったのだろうか。

 どうして、こんな目に遭わなければいけないのだろうか。

 目の前にいる女性は誰なのだろうか。

 その奥にいるアレは何なのだろうか。

 この世の物ならざる姿をしたアレは、一体、何なのだろうか。

 落ち着くんだ。女性が誰なのかはわかっているはずだ。

 彼女は一度会えば、生涯忘れることのできないインパクトを持っている。

 彼女とは、忘れたくても忘れられない出会い方をしている。

 それよりも、果たして、僕は生きて帰れるのだろうか。

 そもそも、僕は今、生きているのだろうか。

 まだ、この世に、生存しているのだろうか。

 まだ、この世界に、存在できているのだろうか。

 もし、元には戻れないのだとしたら、色々と後悔しそうだな。

 やれることがまだあった。

 やりたいこともまだまだあった。

 そして、やらなきゃいけないことだって、たくさんあった。

 何もかもが中途半端なままになっている。

 全てがそのまま、置き去りにされている。

 目前で行われているありえない事象を他所に、思考だけが脳内を走り続けた。

 ここで終わる訳にはいかないのに。

 こんなところで終えてしまう訳にはいかないのに。

 グルグルと想いが脳内が駆け巡る中、突如として、目の前にいた女性が呪文の詠唱をやめ、こちら側に振り向いた。

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