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今日で○○辞める!

今日で(わるい)魔法使い辞める!

「さてと。掃除はこんなもんでいいかね」

 そう言って部屋を見渡す。

 部屋には窓一つなく、明りはろうそくのみという薄暗さ。ぎしぎしと音が鳴る腐った木の床。ところどころに飾られたオブジェは人の骸骨に似ている。壁や天井にはクモの巣が張り、そして奥からはぐつぐつと煮えたぎる大きな鍋。部屋全体に染みわたる異臭。


「完璧だろう! さすが俺! センスある! そこにしびれる憧れる!」


 3日でしあげた部屋に大満足。やっぱすげーよな。俺の魔法の技術。

「先代のおばばは綺麗好きの暗闇恐怖症だったからなぁ。そんなんじゃ舐められるって言ってもきかねーし」

 埃一つなかったフローリングには魔法で加工を施してソレらしさを。

 どこかの有名芸術家が作ったという美しいオブジェは骸骨に見えるように。

 真っ白な壁にはクモの巣と赤黒い染みをコーティング。

 そして来週行われるカレーパーティのために用意していた鍋は、色を変えてそれらしく。

 部屋にしみ込むカレー臭をとるために、わざわざ自作の芳香剤を作ってみた。

「完璧だ!」

 これで明日勇者一行がやってきても舐められない! そして勇者に勝って、有名になって、街の女の子たちからキャーキャー言われるんだ。

 ふっ。待ってなよ。レディたち!

「……あとは、決め台詞とポーズだな」

 服は黒いローブにとんがり棒。髑髏がついた杖と、代々決まっているので仕方ない。


「ふはははは! 良く来たな、勇者! ……なんかちげーな」

「ひーっひっひ……って、この笑い方おばばみてぇ」

「やっぱり、~じゃぞとかの方がいいのか?」


 それからも俺は考え続けた。

 口に出し、身体を動かして実際に試した。時には手を間へへと突き出し、時には杖を振り回し、時には髭をつけて老人言葉を使ってみたり……一晩中考え抜き、そして練習に練習を重ねた。

 ……完璧だ。いつでもこい、勇者。


「魔法使い! お前の悪行もここまでだ!」

 翌日。情報通りにやってきた勇者は、キラキラと輝いた好青年だった。

 くくくっ今まで勇者というだけでさんざんキャーキャー言われてきやがって、この野郎!(羨ましくなんてねえぞ!) しかぁあし! お前のその輝かしい栄光の道もここまでだ!

「煩いぞ。黙れ」

 びしっと杖の先を勇者につきだす。

 一晩考え抜いたこのセリフとポージングを受けてみろ!


「(実験材料として)お前が欲しい!」

「こいつ変態だー!」

 ドン引きされた。

 第6回「電撃チャンピオンロード」に挑戦した際の作品。見事に落選したのでこちらに載せます(応募時より少し修正)。


 お題の「わるい魔法使い」というのを見たとき、ぷよぷ○の白い人が思い浮かんだんですよねぇ。オチはそこからきてます。

 あとはぐつぐつと何かを煮ている鍋とか骸骨とか……定番を詰め込んでみました。

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