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異次元革命  作者: 青空侍
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第二話

 第二話


 世界革命と呼ばれる日から今までの日常が変わってしまった。だけど不思議と恐怖心はなかった。むしろ僕にとっては丁度よかったのだ。


 僕の名前は猫丸ねこまる。職業は高校三年生、見た目は小柄で名前に相応しいほどの猫目をしている。運動神経は抜群だし手先はかなり器用なほうなのだが歌と絵を描くことが全く出来ない。頭はそこそこ。そんな僕の一番の問題といえば家庭内環境と学校内環境の悪さだった。人間関係を築くのが苦手で僕の周りには最低限の人付き合いのほか友達とよべる存在は居なかった。家の中では父親による家庭内暴力が毎日のようにある。かといっても僕は痛い思いをしたくないので母親を盾にして自分の部屋にこもっているのだ。


 そんな生活に飽き飽きしていた僕にとってはこの世界革命がとても嬉しいことだったのだ。もううるさい声を聞かなくていいし、僕の知らない世界で色々とやり直せるような気がする。新しい世界で目が覚めてからしばらくの間は動揺していたのだが、テレビで異次元転送なんとかという装置を破壊するにあたってのニュースをやっていたからそれの影響だということは理解出来た。そんな世界にいけるのならばどんな手を使ってでも行きたいとさえ考えていたのだから。


 とは言ってもここはどこなのだろうか…?気がついてからずっと緑に囲まれた場所にいる。僕の背よりも圧倒的に高い木々がぐるりと僕の周りに生い茂っていて、たまに聞こえてくる鳥みたいな鳴き声しか音がしない。


 もしもここが異次元なのだとしたら僕にも何か特殊な能力があるかもしれない。見た目は人間のまま変わらないし、服装も学校の制服のままだが、いままでとは違うような気がする。体中に違和感があったからだ。試しにゲームや漫画などでみたファンタジー系統の魔法の出し方をマネしてみることにした。右手を前に出して火の玉をイメージしてから気合を入れて呪文を叫んでみる。


 「ファイア!」


 ……何も起こらなかった。僕は小っ恥ずかしい思いをしただけで終わったのだ。森のひらけたような場所でただ鳥が鳴く声のみが響いた。


 「やっぱりここは異次元なんかじゃなかったんだ。」


 なんだがすごく恥ずかしい思いに駆られ、いますぐにこの場から離れることを決意した…。その瞬間、ものすごい轟音が森の奥から聞こえてきたかとおもえば、次の瞬間には目の前に巨大な熊みたいな動物が現れた!!


 「な、なに、これ…?」


 猫丸は腰が抜けてしまい、そのばにへたりこんでしまった。熊みたいな生物は猫丸を見るなり涎をたらしながら近づいてきた。僕を獲物だと認識したらしいのだ。だが近づいてくる熊もどきを前に逃げることができず、ただ呆然とそいつを見上げることしか出来ないでいた。もうだめだ…。僕の人生はここまでなのか…。そう考え、諦めかけたとき、熊もどきがごっつい両前足を振り上げて襲いかかろうとした!…が、その瞬間に目の前にありえないくらいのスピードで女の子が飛び出してきたのだ!


 「そこの商人さん、あぶないよ!!さがってなさい!」


 その子は言い終わるなり助走をつけて思いっきりジャンプし、熊もどきの顔面へと蹴りをいれたのだ。その強烈な蹴りを受けた熊もどきは怯んで三歩ほど下がってから牙を剥き出してこちらに威嚇をしてきた。

 女の子はすぐに僕の隣へ着地して手を差し出した。真近くで見るその子はさっきの跳躍が嘘かと思えるくらい華奢な体つきだった。服装は白い学生服姿で、同じく真っ白なマントとトンガリ帽子が特徴的だった。まるで西洋で言う魔女みたいな格好だ。金髪が眩しいくらいに輝いていて、アンドロイドを彷彿とさせる赤い目が印象的だった。


 「君は…?」


 問いかけながらも手をかりて立ち上がると女の子は澄んだ声を出し早口で答えてくれた。


 「私はウサギだよ、変な名前だけど気にしないでね、それよりも今はスネイクベアーと戦う方が先でしょ?武器をもってないみたいだからこれを貸してあげる」


 「これって…鉄串!?どうやってこんなので戦うのさ!」


 「来るよ、構えて!私は盗賊スキルで足止めするから。」


 そう言い終わるなり僕達のいる場所から少し離れ、スネイクベアーの立っている地面に黒光の円陣を描いたかと思うとすぐに円陣から黒い光がスネイクベアーの足に絡みついた。


 「これで足止め完了、本当はすぐに倒したいんだけど私ひとりじゃ無理なの、だから商人さん、手伝ってくれない?」


 「もしも手伝うのを拒んだら…?」


 「確実に死ぬよ?私は逃げるだけの力があるけどあなたにはないでしょ?」


 「選択肢がないじゃないか。」


 「今から言うように使えば死なずにすむから、よく聞いておいてよ。それは、見てのとおり鉄串。弱点を狙って刺せば相手に大ダメージが与えられる。逆に間違ったところを刺すと自分が危険なことになる武器でもあるの。だから確実に狙っていって。私が囮をするからそのすきに相手の後ろに回り込んで首と頭の境目をねらって突き刺すだけでいいから!」


「不可能だよ!僕がそんなことできるわけない!!」


「じゃ、死になさい」


「それも嫌なんだよ、もっとさっきみたいな魔法とかでさ…」


「攻撃系のスキルは覚えてないの、かといって私なら自力で逃げられるけどあなたは無理でしょ?だから手伝ってあげるって言ってるのに」


「…でも…僕は…」


「どっちにしろ死ぬんだったら最後まで抗ってみせるのが男でしょ!?」


「……分かった…よ…」


「ふふ、そうでなくっちゃ!私はまずスネイクベアーの注意をひくからその隙に後ろに回り込んで、なるべく視界に入らないように移動してね。」


「よし、わかった!」


 そう言って僕は女の子と目を合わせてからお互いに強く頷きかけだした。

女の子はまずスネイクベアーの罠をとき、目の前へ飛び出していった。もちろんそれを見たスネイクベアーは怒り狂ったまま僕の方なんか見ないでまっさきに女の子の方へと走り出していったのだ。僕はすぐに奴の後ろへと回り込み、急所をつける位置へと移動した。準備は万端、あとは女の子がうまく誘導してくれれば僕がすぐに飛び出せる。


「やば……うぐっ!!」


「えっ!?」


 女の子がスネイクベアーに叩き落とされた。

どうやらあいつの目の前をジャンプした瞬間に横腹を叩かれたらしい。女の子はふらつきながらも立ち上がった。…このままではあの子が殺される。それだけは回避しなくちゃいけない。そう思った僕は咄嗟に大声を出し、注意をひいた。


「こっちだ!怪物!!!」


 叫んでからすぐに僕は女の子とは反対に走り出す。まずい、まずいまずい…。何も考えずに叫んだのはいいけどこれからどうしよう。いつまでも走っていられるわけではないし、かといっても女の子は弱ってるから頼りにできない。


「危ない!!!」


女の子の叫び声が聞こえたのと同時に僕の左腕に激痛がはしった。


「ぐあぁぁ!!!痛い、痛いぃぃ!!」


 スネイクベアーに左腕をえぐられた。猛スピードで走れる怪物が軽く腕を掠っただけで大怪我をした。こういうときに人間は感覚を麻痺するんじゃなかったっけ!?とかよくわからない事を考えながらも血が絶えず流れる腕を必死におさえ走り続けた。血の臭いを嗅いで怪物がさらに興奮し、狂ったかのような声を出して僕に襲いかかってくる。


「こうなったらあなたが注意をひいてる間に私が強力な罠を仕掛ける!あと少しだけ注意をひきつづけて!!」


「無理だよ!助けて!もう走るのも限界だよ」


「いいからあと少しだから!」


 無茶苦茶だ。僕にそこまで逃げ続ける体力なんて残ってない。ましてやケガをしているんだ。それなのに女の子はのんきに罠を仕掛けるだって…?無理だ間に合わない!僕はあることを決意して女の子の方へと走った。女の子は目を閉じて呪文だかなんだかに集中している。僕が必死に助けを求めてる声にも反応しない。、僕の後ろからものすごい勢いで走ってくる怪物の唸り声さえも届いていない。こうなったら仕方がない、僕は最終手段を使うことにした。残り少ない体力を使って僕は女の子の足を鉄串で突き刺した。


「うああぁぁ!!!」


女の子は痛みに顔を歪ませその場に倒れた。死を目の前にした女の子の目には涙が流れ、僕の方をじっと見た。恐怖で歪んだ顔が次の瞬間には苦痛の表情へとかわった。すぐさま動けない女の子の方へスネークベアが涎をたらして近づき食らいつく。僕はスネークベアが女の子にかじりついている隙を見てすぐさま駆け出した。




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