非現実が日常になる時
初めての投稿なので文章におかしいところや読みにくいところがあると思いますが楽しんでいただけたら幸いです。
第一章
2020年、世界各国では地球温暖化と少子高齢化が深刻な問題に発展してしまったために、世界中の政府が手を組むという大規模なプロジェクトをたちあげた。一つは大企業が全力を費やしていままでに研究を重ねてきた人型のアンドロイドの制作。そしてもう一つは現実にするのは不可能と言われた企画…。
その企画名は「人類別次元保存化計画」
この企画の内容は人類の生命を保存・維持するため、一時的に別次元へ避難させるという計画だった。この計画自体は2015年に立案されており、当初は賛成する者は少なかった。むしろ実現不可能なことだと言われ続けていたほどだ。しかし一部の立案者はその計画の実現化を目指して研究を続けていたのだった。
その30年後の7月、ついに人型のアンドロイドが完成した。
完成度は本物の人と見間違う程の出来だった。一つ一つの個体には人間と見分けがつくように赤い目と白い髪、それから左目にはバーコードが刻まれた。全知全能の人型アンドロイドは高齢化社会での最前線で活躍し、数年後には家庭用にも少し高い値段で発売されたのだった。それと同時にすべての子供を各国で政府がつくった「子育て支援センター」と呼ばれる場所へと集められた。(表向きは子供のための安全と健康な生活が約束された夢のような場所と発表されているのだが、現実はそれとは程遠い地獄のような世界だということは黙秘されている…。)
そして70年後の8月、全世界に衝撃的な発表があった。
2090年「異次元保存計画装置の完成」
どういう構造で成り立っているのかやどんな機械なのかなどの詳細は一切公表していないのだが、私たち一般市民には縁などない代物であることは発表された瞬間から察していた。それに非現実的すぎて信用するほうが難しいほどだったのだ。政府はその機械の危険性を調べるためにも一時的に開発組織のラボを封鎖し、人間に害があるとわかれば全て消すつもりだ。
その時は政府も本気にしておらず、むしろ期待していたもの造っていなかった事実に幻滅し絶望したくらいだ。これから新しい企画をたちあげようにも少子高齢化社会が悪化してしまい、いまからでは手を打つのが遅すぎるくらいまでになってしまっていた。全世界では次々と小さな企業が破綻し「時代の後退」や「人類が絶滅危惧種」などと言われるようにもなっていた。今生きている子供たちは大人になる前に死んでしまわないよう、社会から「子育て支援センター」へ隔離されてしまった。そこではまるでペットかのように扱われる。時間通りに起こされ、時間通りに決められた運動や食事をしてから床につくという毎日を淡々と過ごす日々を強いられたのだ。もちろん家族には面会出来ないし必要以上の言葉は発してはならない。毎日が同じ日々の繰り返しで頭がおかしくなった子もいれば自殺しようとする子もいた。しかし頭がおかしくなれば子孫を残すための研究材料として別室へ連れていかれ戻って来なくなる。当たり前だが自殺は許されないことだから、死にかけても最先端医療技術を費やして治療する。おかげで苦しい思いをするだけなのだ…。
機械完成発表から2ヶ月がたち、異次元保存計画装置の安全確保が出来ずにその機械を壊すことが決定された。
組織の人たちは必死に機械が壊されることを拒んだのだが、政府と軍に逆らえるはずもなく研究所に置いてあった機械を無理やり片っ端から壊していった。研究員は残っている情報の核を記憶媒体にコピーし、ひとつは研究所にいた子供型アンドロイドの左胸に埋め込んだ。もうひとつはすぐに軍の人間に見つかり壊されてしまった。
最後に残ったのは情報の核と呼ばれる大きな光の集合体。それはガラスの筒状のいれものに入っており、情報が行き交うたびに輝いていた…。
そこへ軍人が一人歩み寄り、銃を片手にそれにめがけて発砲しようとしたのだが、研究員は引き金をひくより早く大声を出して壊すことを阻止した。
「これは異次元の情報が詰まったものだ。これを壊してしまえば世界中の次元が乱れてしまう!」
軍人はそれを聞くなり仲間と大笑いして真っ青な顔をした研究員をちゃかしてからすぐに発砲したのだった。ガラスは呆気なく崩れ、そこから閃光が瞬いたかとおもえば全身が焼けるかのような巨大な光が一瞬で世界中をのみ込んでしまった……。
それから10年後の現在。
これが私たちの生きている世界の始まり。