魂浄化装置
女神エルフィーナは、お気に入りの紅茶とお菓子でくつろいでいた。
最近導入した魂浄化装置のおかげで、女神のティータイムは増えている。
喜ばしいことだ。
この装置のおかげで今までのように、前世の記憶や悪しき感情をごしごしと手洗いしなくてすんでいる。
その時、ピーピーという警告音が鳴った。
慌てて浄化装置を見ると、停止ランプが点き、装置も停止している。
エルフィーナは、安心リース(株)の営業担当アクマを呼びつけた。
ねちねちと文句を言っていると、アクマが契約書を取り出し、該当箇所をビシッと指さす。
「ここをご覧ください、女神様。
こちらにしっかりと(小さく)書いてあります。
『第113条 一日の限界処理人数一万人を超えて故障した場合、
安心サポートサービスに加入されていても、修理は有償修理となります。』」
悔しいが、確かにそう書かれている。
どうやら今日は、処理人数が一万人を超えてしまったらしい。
解約してやろうかと考えたが、違約金もかかるし、なにより一度楽な状態に慣れてしまったのだ。
以前の毎日手作業での浄化作業には戻りたくない。
仕方なく修理代を支払った。
ついでにまた故障するといけないので、有料オプションで人数カウンターも付けてもらった。
オプション代が追加されたが、仕方がない。
いつか理由をひねり出して、アクマには天罰を食らわせてやろう、そうエルフィーナは心に決めた。
修理が終わるまでは、手作業の浄化だ。
装置でやっていたより時間も手間もかかる。
修理が終わり、手作業の浄化も一段落つき、エルフィーナは、やっとお茶を飲んで休憩することができた。
下界に支障がないか、確認しておきましょう。
モニター画面を見ると、なにやら不穏な気配が......。
ズームアップしてみれば、一つの魂に複数人の前世の記憶が詰まっている。
一日の処理限界を超えたことで、装置がオーバーヒートを起こしたらしい。
その結果、装置が正常に振り分けられなくなり、一気に流れ込んだ魂がごちゃ混ぜになったようだ。
さらにズームアップすれば、かつて世界を滅ぼしかけたサイコ魔術師の記憶が入っているではないか。
しかも今まさに禁術を発動させようとしている!!
エルフィーナは、お茶を噴き出した。
「これは、一大事だわ。
こうしちゃいられない!」
「『神の鉄槌』発動!!!」
発動ボタンを叩きつけるように押す。
「よかった、間に合って。
世界は救われたわ。」
エルフィーナは、自戒を込めて装置のそばに標語を貼った。
一つは、
『安心リース(株)の契約書は、隅から隅までしっかりと読むこと!!』
もう一つは、
『楽あれば、苦あり。
楽していいのは、一日一万人まで!』
加えて『神の鉄槌』ボタンも近くに移動した。緊急時にすぐ押せるように。
女神は同じ過ちを繰り返さないのである。(たぶん)




