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第七話:グラムロック・ドライバーと、奪われた桜

【新キャラクター設定資料】

前田まえだ 慶次けいじ

キャラ: 『グラムロック・スーパースター / 超大型VIP送迎ドライバー』風。

豊臣メガバンクの専属エンターテイナーにして、最強の武を誇るフリーランスの傾奇者かぶきもの。ド派手なロックメイクに、赤い長髪、スタッズ付きの革ジャン風陣羽織を着こなす。

愛機(馬): 『松風まつかぜ』。超大型のサラブレッドに、南蛮渡来のV型8気筒エンジンのような絡繰からくりスピーカーを積んだ、まるでハーレーダビッドソンのような爆音を鳴らす魔改造の巨馬。

口癖: 「ソウルが震えねェなァ!」「最高にロックだぜ、ベイビー!」「俺の松風のビートに乗れるか!?」。


神堂宗次郎が、白河の関で真田幸村のドローン防衛網を突破していた、その数時間前。

 奥州・伊達家のオフィスは、突如として鳴り響いた「凄まじい爆音エキゾーストノート」に包まれていた。

「ドゥルルルルルッ!! グォォォォォンッ!!」

「な、なんだこの騒音は!? 敵襲か!?」

 伊達政宗がレザージャケットを翻して中庭に飛び出すと、そこには信じられない光景が広がっていた。

 巨大なエンジン音(雅楽スピーカー)を轟かせる、真っ黒な巨大装甲馬『松風』。その後ろには、純金で装飾されたリムジンのような超高級・VIP用送迎車(大型の駕籠)が連結されている。

「ヒャッハー!! 迎えに来たぜ、伊達の社長さんよォ!」

 松風に跨り、ド派手なグラムロックメイクと真っ赤な長髪を揺らす巨漢。豊臣の特命VIP送迎ドライバー、前田慶次まえだ けいじである。

「豊臣の傾奇者、前田慶次……! てめェ、アポもなしにウチの敷地に何の用だ!」

 政宗が凄むと、慶次はニヤリと笑い、サングラスをずらした。

「決まってんだろ? 秀吉様スポンサーからのオーダーだ。……噂の『極上のコレクション(綺羅姫)』を、大坂のプレミアムルームまで安全・最速でデリバリーしに来たのさ。ロックなVIP送迎だぜ?」

「ふざけんな! 俺は綺羅を渡すなんて一言も……!」

 政宗が刀に手をかけようとした、その時だった。

「……お兄様、お待ちください」

 中庭に、桜色の小袖を着た綺羅が現れた。彼女の手には、小さなボストンバッグ(荷物)が握られている。

「綺羅! お前、まさか……!」

「伊達の会社と、お兄様たちを守るための、ウィンウィンの契約です。……あたし、行きます」

 綺羅は、震える足を必死に隠し、慶次を真っ直ぐに見上げた。

「ホォウ。田舎のベンチャー社長の妹にしちゃ、なかなか肝が据わったイイロックなソウルしてんじゃねェか」

 慶次は面白そうに口角を上げた。

「気に入ったぜ、お姫様! 俺の松風の超特急VIPドライブ、酔わないように気ィつけな!」

「待てェッ!! 綺羅ァァッ!!」

 政宗や成実が止めに入る前に、慶次は綺羅を素早く黄金の駕籠へと乗せ、松風のアクセル(手綱)を全開に捻った。

「グォォォォォォンッ!!」

 凄まじい土煙と爆音を残し、グラムロック・ドライバーは、綺羅を乗せて関東への街道を猛スピードで駆け抜けていった。

***

 現在。

 白河の関を越え、小田原へと続く一本道。

『……宗次郎。すまねェ、俺のミスだ。お前が飛び出した後、豊臣の傾奇者に、綺羅が連れ去られちまった……!』

 宗次郎の懐に入っていた、伊達家の最新通信機(絡繰トランシーバー)から、政宗の悔しさに満ちた声が響いた。

「……綺羅が、大坂へ」

 通信を聞いた宗次郎の足が、ピタリと止まった。

『奴の馬の機動力は異常だ。だが、お前の脚力とショートカットなら、まだ小田原の手前で追いつけるかもしれねェ! 宗次郎、綺羅を……俺の妹を、頼む!』

「……ええ。お任せください、政宗様」

 宗次郎は、通信機を懐にしまうと、空を見上げた。

 自分が先走って敵陣を叩いている間に、別ルートで彼女が連れ去られてしまった。彼女は、きっと自分が身代わりになることで、誰も傷つかずに済むと本気で信じているのだ。

(誰かの居場所を奪い、自分を犠牲にするような優しさは。……本当の奇跡ではありませんよ、綺羅)

 ゴキッ、と。

 宗次郎の首の骨が鳴った。

 ポカポカとした笑顔は完全に消え去り、その瞳には、凍てつくような『絶対零度の夜叉』の光が宿っていた。

「……ロックだか、VIP送迎だか知りませんが。私の大切な人に、勝手に触れないでいただきたい」

 ダンッ!!

 宗次郎の足元の岩が、凄まじい踏み込みの力で粉々に砕け散った。

 十六丁の火縄銃を全身に帯びた夜叉は、常人の視力を超えるスピードで、街道の脇の木々を蹴り、獣道を一直線に駆け抜けていく。

***

「ヒャーハッハッハ!! 最高だぜ松風! このままノンストップで大坂までブッ飛ばすぜェ!」

 黄金のVIP駕籠を牽引し、爆音で街道を爆走する前田慶次。

 駕籠の中で、綺羅は膝を抱え、流れていく景色を不安げに見つめていた。

(宗次郎……ごめんなさい。あたし、これでよかったんだよね……)

 その時。

 慶次の頭上、街道の両脇にそびえ立つ高い杉の木の頂上から。

 ――黒い影が、弾丸のように降ってきた。

「アァン?」

 慶次が見上げた瞬間。

 ズドォォォォォンッ!!

 凄まじい衝撃と共に、松風の鼻先の地面に、分厚い大盾刀『玄武』が深々と突き刺さった。

 急ブレーキをかけた松風が、いななきを上げて前足を高く跳ね上げる。

「チィッ! なんだァ!?」

 土煙が晴れた街道の中央。

 そこに、玄武の柄に手を置き、静かに立ち塞がる男の姿があった。

「……お初にお目にかかります。私は、道端のただの『石ころ』です」

 神堂宗次郎。

 その両手には、すでに二丁の長銃身の火縄銃が握られ、銃口は正確に慶次の眉間を捉えていた。

「そ、宗次郎……!?」

 駕籠の小窓から顔を出した綺羅が、信じられないというように息を呑んだ。

「ホォウ? てめェが、幸村の防衛線をノーダメージで突破したっていう『千銃の夜叉』か。……なるほど、最高にイカれた(ロックな)目をしてやがる」

 慶次は、松風から飛び降り、背中に背負っていた巨大な朱槍をドスンと地に突き立てた。

「あの娘の納品は、キャンセルさせていただきます。……置いていきなさい」

 宗次郎の声は、地を這うように低く、冷酷だった。

「ギャハハハ! ふざけんな、俺のVIP送迎ギグを途中下車できる奴はいねェんだよ! てめェのその細っこい銃弾ビートで、俺のソウルを撃ち抜けるかァ!?」

 慶次の放つ、圧倒的な傾奇者の覇気。

 奪われた桜を取り戻すため。

 千銃の夜叉と、グラムロック・スーパースターの、魂が激突する『Highway Star』のバトルが、今、幕を開ける。

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