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第五話:千銃の夜叉、爆誕

【新キャラクター設定資料】

福島ふくしま 正則まさのり

キャラ: 『超攻撃的なパンクロッカー / 破壊のカリスマ』風。

豊臣メガバンクの「子飼いエリート」でありながら、その本性は破壊を愛する過激なパンクロッカー。秀吉を神(教祖)と崇める、狂信的な豊臣信者。清正とは「贱ヶ岳の七本槍」のツートップ。

モヒカン風の兜を被り、全身にスタッズ(鋲)付きの漆黒の陣羽織を纏う。愛槍はエレキギターのような装飾が施された大身鎗。

口癖: 「秀吉様こそがゴッドだッ!」「すべてを破壊スクラップにしてやらぁ!」「俺のビート(槍)を聴けッ!」。


深夜。

 奥州・伊達家のベンチャーオフィス(城内)は、静寂に包まれていた。

 綺羅姫が「秀吉の側室になる」という衝撃のプレゼンを行ってから数時間。誰もが重い空気を抱えたまま、自室で眠れぬ夜を過ごしていた。

 神堂宗次郎しんどう そうじろうは、一人、月明かりだけが差し込む道場に立っていた。

 道場の床には、彼がいつも背負っている分厚い布袋が置かれている。

(……あたしは、黄金の身代わりにでも、石ころにでもなってやる)

 会議室で綺羅が見せた、あの哀しくも気丈な決意の表情が、宗次郎の脳裏に焼き付いて離れない。

 彼女は笑っていた。自分が犠牲になれば、それで伊達家のみんなが助かるのだからと。

 だが、宗次郎は知っている。誰かの居場所を奪い、誰かの自由を奪って成り立つ平和など、ただの泥舟に過ぎないということを。

「……綺羅。あなたは、バカみたいに優しい人だ」

 宗次郎は、静かに布袋の紐を解いた。

 中から現れたのは、通常の刀の三倍の厚みを持つ絡繰大盾刀『玄武げんぶ』。

 そして――鈍い鉄の光を放つ、無数の「火縄銃」だった。

「誰かを身代わりにして生き延びるような理不尽な世界なら。……私が、すべて撃ち落としますから」

 宗次郎は、長銃身の火縄銃を背中にクロスさせるように背負い、両腰、さらには太もものホルスターへと次々にマウントしていく。さらに懐には、連射が可能な特注の短筒ハンドガンを四丁忍ばせた。

 合計十六丁。一人で持ち歩くには常軌を逸した重武装である。

 普段の「ポカポカとした平和な剣術指南役」の面影は、そこには微塵もなかった。

 氷のように冷たく、すべてを見透かすような鋭い眼光。かつて戦場を震え上がらせた幻の術の極め手。

『千銃の夜叉』が、今ここに覚醒したのだ。

 宗次郎が道場を後にし、音もなく城の裏門へと向かったその時だった。

「……待てや、宗次郎。こんな夜更けに、そんな物騒なウェイト(重り)を背負って、どこへ行く気だ?」

 闇の中から、巨大なシルエットが立ち上がった。

 月光に照らし出されたのは、上半身裸で、己の身長ほどもある大太刀を肩に担いだ伊達成実だて しげざねだった。彼は夜の自主練ナイト・スクワットの最中だったらしい。

「成実様……。夜遅くまでバルクアップ、お疲れ様です」

 宗次郎が静かに答えると、成実はギリッと歯を食いしばり、大太刀を宗次郎に突きつけた。

「とぼけるな! お前、綺羅様が身代わりになるって聞いて、ビビって会社(伊達家)から逃げ出す気だな!? 筋肉は決して裏切らないが、お前は仲間を裏切るのか!」

「……逃げるのではありません。私が、豊臣のTOB(買収)を物理的にキャンセルしてくるのです」

「ハッ! 防御しかできない剣術ヘタクソ指南役のお前が、たった一人で上方に行くっていうのか! 笑わせるな! 行くなら俺を倒してから……!」

 成実が言葉を言い終わるよりも早く。

 ――バンッ!!

 夜の静寂を切り裂く、乾いた爆音が響いた。

「なっ!?」

 成実は驚愕に見開いた目で、自分の手元を見た。

 彼が握っていた大太刀の刀身が、根元から綺麗にへし折られていたのだ。

 宗次郎は、腰の火縄銃を抜く動作すら見せなかった。瞬きをするよりも速い『早撃ち』。宗次郎の右手には、薄い硝煙を上げる短筒が握られていた。

「成実様。筋肉では、この理不尽な世界は『防御』できません。……綺羅を、頼みます」

 宗次郎が短筒をクルリと回して懐にしまうと、成実はへたり込み、「お、お前……一体、何者なんだ……」と呟くことしかできなかった。

***

 数日後。

 相模国・小田原へと続く主要街道。

 豊臣メガバンクグループの巨大な輸送部隊が、列をなして進んでいた。黄金の装飾が施された荷車には、小田原包囲網を維持するための莫大な物資(資金)が積まれている。

 護衛の豊臣兵たちは、南蛮渡来のポータブルスピーカーから流れるEDMを聴きながら、ヘラヘラと笑い合っていた。

「あーあ、小田原の連中もさっさとウチの傘下に入りゃいいのによ。タイム・イズ・マネーだぜ」

 その時。

 街道の正面、陽炎が揺れる道の真ん中に、一人の男が立ち塞がった。

 全身に無数の火縄銃を装備し、分厚い大太刀を腰に差した男。神堂宗次郎である。

「あァ? なんだあのダセェ重装備の野郎。おい、そこどけ! 豊臣メガバンクの輸送ルートだぞ!」

 豊臣の足軽たちが、一斉に宗次郎に火縄銃の銃口を向けた。

 その数、ざっと五十。

「……私の前で、銃口を向けるのはおやめなさい。怪我をしますよ」

 宗次郎は、ポカポカとした笑顔のまま、ゆっくりと一歩を踏み出した。

「撃てェ!!」

 五十丁の火縄銃が、一斉に火を噴いた。

 凄まじい轟音と弾幕。普通ならば、蜂の巣になって即死する状況だ。

 しかし。

 宗次郎の姿は、弾煙の中から無傷で現れた。

 彼は走ってすらいない。まるで雨の日の水たまりを避けるように、ただ「歩いて」いた。

銃闘術じゅうとうじゅつ』。

 相手の銃口の向き、構えの癖、風向き、発砲のタイミング。それらすべてを瞬時に計算し、「何億という弾道の型」を脳内でシミュレートする。宗次郎にとっては、飛んでくる鉛玉の軌道が、光の線のようにハッキリと見えているのだ。

「ば、バカな! 全部避けただと!?」

「今度はこちらの番です」

 宗次郎は、背中と両腰から流れるような動作で火縄銃を抜き放ち、両手で同時に引き金を引いた。

 ――ダダダダダダダダッ!!

 宗次郎が発砲した弾丸は、豊臣兵たちの命を奪うことはない。彼らの持つ火縄銃の銃身、弾薬袋、そして兜の緒だけを、ミリ単位の精度で正確に撃ち抜いていく。

「ひぃぃっ! 銃が壊された!」「兜が飛んだぁ!」

 一瞬にして武装解除され、パニックに陥る輸送部隊。

「ヒャーハハハハッ!! なんて極上のビート(銃声)だ! 最高にロックじゃねぇか!!」

 突如、輸送部隊の後方から、爆音のギターリフ(のような轟音)が鳴り響いた。

 ドゴォォォン! と味方の荷車を蹴り飛ばしながら現れたのは、モヒカン風の兜を被り、全身にスタッズを打ち込んだ漆黒のパンクロッカー、福島正則ふくしま まさのりだった。

「テメェが奥州の伊達から来たっていう、厄介なバグ(侵入者)か! 俺は賤ヶ岳の破壊神、福島正則! 秀吉様ゴッドの邪魔をする奴は、俺のビートでスクラップにしてやらぁ!!」

 正則は、エレキギターのような意匠が施された大身鎗を振り回し、凄まじい跳躍力で宗次郎へと襲いかかった。

「死ねェェェッ! デス・メタル・スラストォォ!!」

 音速を超える猛烈な槍の突き。

 宗次郎は、腰の『玄武』を抜き放ち、刀身の隠しボタンを押した。

 ガシャンッ!!

 玄武が扇状に展開し、極厚の大盾となる。

 ギィィィィィンッ!!

 正則の全力の槍撃と玄武の大盾が激突し、火花が激しく散る。

「ヒャハッ! 硬てぇ盾だな! だが、いつまでもつかな!?」

 正則は狂ったように笑いながら、怒涛の連続突きを繰り出す。

「……あなたの音楽ビートは、少しうるさすぎますね」

 宗次郎は、玄武の大盾で槍の軌道を完璧に逸らしながら、空いた左手で懐の短筒を抜いた。

「なっ!?」

 至近距離。正則の顔面のすぐ横で、宗次郎の短筒が火を噴いた。

 ――バンッ!!

 弾丸は正則の顔を掠め、彼のモヒカン兜の装飾(一番尖っている部分)を見事に撃ち飛ばした。

「ああっ!? 俺のロックな兜が!!」

 バランスを崩した正則の胸倉を、宗次郎が玄武の柄で強打する。

「ガハッ……!」

 正則は白目を剥き、そのまま地面にドサリと倒れ込んだ。命に別状はないが、完全に気絶している。

「……まずは一人」

 宗次郎は、玄武を刀の形態に戻し、煙を上げる短筒をホルスターに収めた。

 倒れ伏す豊臣軍の兵士たちが、恐怖に顔を引きつらせて宗次郎を見上げている。

「秀吉に伝えなさい」

 宗次郎は、はるか西方、小田原の空を睨みつけ、静かに、しかし絶対の意志を込めて宣言した。

「……綺羅は、誰の身代わりにもさせない。伊達の会社も、私が守る。この千銃の夜叉が、大坂の黄金の城ごと、すべて撃ち落としに行くと」

 誰も血を流させない。ただ、理不尽な世界だけを破壊する。

 ポカポカとした笑顔の剣術指南役は、愛する人を守るため、たった一人で巨大なメガバンクグループへの下克上の道を歩み始めたのだった。

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