第十六話:大坂メガバンクの試練と、計測不能の黄金
圧倒的な気弾の押し合いを制し、十本槍の筆頭・極を打ち破った神堂宗次郎たち一行。
彼らはついに、西の果て、そびえ立つ黄金の摩天楼――豊臣メガバンク本社(大坂城)の巨大な正門の前に辿り着いていた。
「ひ、ひぇぇ……! なんなんすかこの城! デカすぎて、天守閣が雲に隠れて見えないっすよ!!」
「オーホッホッホ! 成金趣味全開のピカピカな城ですわね! わたくしの洗練された南蛮のセンスとは合いませんわ!」
「兄貴ィ……俺、あんな巨大企業に乗り込むなんて聞いてないっすよ。絶対、法務部とか顧問弁護士がウジャウジャ出てくるやつじゃないですか……!」
クリノジ、カトリーヌ、タナカの三人が、あまりのスケールの大きさに圧倒され、口々に叫ぶ。
だが、宗次郎は一人、ポカポカとした笑顔のまま、堅く閉ざされた巨大な黄金の門を見上げていた。
「……ついに、来ましたね。綺羅が待つ、あの場所へ」
宗次郎が一歩、門へ近づこうとした、その時だった。
「――止まれ、野良犬ども」
黄金の門の上部にあるバルコニーに、冷徹な声が響いた。
そこには、銀縁のモノクル(片眼鏡)を光らせ、巨大な『絡繰大そろばん』を抱えたスーツ姿の男が立っていた。豊臣メガバンクCFOにしてコンプライアンスの鬼、石田三成である。
「私は石田三成。このメガバンクの資金とセキュリティを統括する者だ。……お前たちが、島左近や極を退けたという『千銃の夜叉』の一味か」
三成は、冷たい瞳で宗次郎たちを見下ろした。
「……ええ。お宅の社長に、少しお話がありまして」
宗次郎が笑顔で答える。
「フン。アポなしの訪問など、受け付けるはずがなかろう。それに……」
三成は、カチャリと銀縁のモノクルに手を当てた。
「この大坂城の門は、豊臣の最新テクノロジーである『戦国力計測器』と連動している。戦国力10万以下のゴミは、門に触れることすら許されないシステムだ」
「せ、戦国力計測器!? またあのバトル漫画みたいなオーバーテクノロジーが飛び出してきたっす!!」
クリノジが丸い頭を抱える。
「どれ、貴様らの数値を測ってやろう」
三成の測定用モノクルに、赤いデジタル数字がパラパラと浮かび上がる。
「丸坊主の足軽。戦国力、たったの『5』……。ゴミだな。そこの南蛮女、『2』。論外だ。社畜の男、『1』……存在している意味すらデータにない」
「ひどいっす!? 俺の戦国力、完全に某・農家のオジサンと同じ数値っすよ!!」
「オーホッホ! わたくしの美貌が数値化できないだけですわ!」
「俺なんて1!? 労基に駆け込みますよ!!」
「騒ぐな、不良債権ども。……さて、次はお前だ、夜叉」
三成が、冷ややかな笑みを浮かべ、モノクルの焦点を宗次郎に合わせた。
極を倒した男だ、多少の数値は出るだろう、とタカを括りながら。
「……ピピッ。ん? 戦国力、20万……? いや、50万……。100万……!?」
三成の表情が、徐々に険しくなっていく。
モノクルの赤い数字が、凄まじい勢いで跳ね上がり始めたのだ。
「300万……500万……1000万!? な、なんだこの異常な上昇スピードは!? 計測用モノクルのバグか!?」
「……私の『気』は、数値で測れるほど軽くはありませんよ」
宗次郎が、ゆっくりと目を開く。
ゴゴゴゴォォォォッ!!
その瞬間、宗次郎の全身から、眩いばかりの『黄金のオーラ』が立ち昇り始めた。
スーパー戦国人の、限界を超えたプレッシャー。それは、データや計算を嘲笑うかのような、圧倒的な「物理の極致」だった。
「バ、バカな……! 2000万……5000万……! やめろ、これ以上はモノクルの処理能力が……!!」
――ピピピピピピピッ!! ボガァァァンッ!!!
三成の顔面で、限界を突破した戦国力計測用モノクルが、凄まじい音を立てて爆発した。
「ぐわぁぁぁぁッ!! わた、私の完璧なデータがァァッ!!」
三成が、顔を黒焦げにしながらバルコニーでのたうち回る。
「……計測、終わりましたか?」
宗次郎は、ポカポカとした笑顔のまま、巨大な黄金の門に手を当てた。
「……はぁぁぁぁッ!!」
黄金の闘気を右手に集中させ、そのまま軽く押し込む。
ズドォォォォォォォォンッ!!!!!
数千トンはあるだろう豊臣メガバンクの黄金の正門が、宗次郎の「黄金の力業」によって、まるで紙切れのように吹き飛び、城の内部へと一直線に道が開かれた。
「す、すげぇ……! 門を開けるんじゃなくて、門ごと吹き飛ばしちゃったっす!! 計測器爆発からの物理突破、マジで最高に熱い王道展開っす!!」
クリノジが目を輝かせて拍手喝采を送る。
「……行きましょう、皆さん。このビルの最上階に、私たちが取り戻すべき笑顔があります」
圧倒的な力『真・玄武』と『黄金の闘気』を手に入れた夜叉の前に、コンプライアンスもデータも無意味。
ついに大坂の黄金の城へと足を踏み入れたカオスパーティーの、天下を揺るがす最終決戦が、今ここに幕を開ける!!




