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スノードームと夢の入り口  作者: 薫&葉裏
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オークキングの墓

薫の書いた描写の文を元に葉裏が説明を補っています。合作は慣れないのですが、頑張って書いてます。

 気づいたら私は太い枝の上に両足の爪で立っていた。私が両腕を広げるとそれは大きな翼となっていた。私は鳥になっていた。

 枝から足を離し羽ばたくと体が宙に浮かび上がる。そして、上へ上へと体が上がって行く。私は飛んでいた。


 なにやら激しい物音がする。ジャングルの上を飛んで行くとやがてそれが見えた。

 二頭の巨大な魔物は戦っている。魔物はテリトリーをめぐって戦っているのだ。それまではこの場所はオーガの縄張りだった。そこへ来たのが黒龍で多くのオーガを炎の咆哮で焼き殺した。

 そして最後はオーガキングと黒龍の決戦になった。


 私は観客のような立場で、目の前の戦いを見ていた。

全身真っ黒の身長5mもある大鬼オーガキングとやはり全身真っ黒の全長10mもある黒龍が戦っている.

 全身に響く咆哮が、空気を震わせた。黒龍のうろこは夜のように深い光をたたえて、尾が振り払うたびに風が渦を巻き、オーガキングの足元の草木が根ごと引きずられた。

 大鬼の拳には古びた鎖が巻かれていて、一振りごとに地面がひび割れ、火花と土煙が舞う。

 彼の目は燃える炭のように赤く、咆哮とともに吐き出された息が黒龍の腹を直撃した。

 だが黒龍もただ受けているわけではない。口から吐き出される炎は血のように深い赤と青の混ざった光を帯び、オーガキングの胸板を焼き尽くしていく。

 炎が散るたびに、空には細かい灰が踊った。


 私は、そのどちらにも属せず、ただ風の上に浮かび続けていた。

 黒龍の首筋にひとつ深い傷が走った。オーガキングがその隙を逃さず、巨大な棍棒を勢いよく振り下ろす。

 衝撃が空間を裂き、私の羽先に電気のような震えが走った。

――そのとき、黒龍が最後の尾を大きく振り上げ、炎と闇の渦を纏ってオーガキングへ向けて放とうとしていた。

 私の翼の紋様が、淡く光を強める。

 オーガキングの咆哮が森を震わせ、黒龍の翼が大気を切り裂いた。

 ふたりの巨影がぶつかり合うたび、地面が波打ち、空が鳴った。

 火花のように吹き飛ぶ破片、焦げた木々の臭い、轟く唸り――すべてが、終わりの見えぬ死闘を物語っていた。

 だが、戦いの流れは徐々に傾いていた。

 オーガキングは巨腕を振るい、黒龍の鱗に傷を刻んだが、それ以上に、自身の体が裂かれていった。

 黒龍の爪は鉄をも断ち、翼の一振りで巨躯をなぎ倒す。炎はまるで意志を持ったかのように追いすがり、怒りの咆哮が空を裂いた。

 全身に響く咆哮が、空気を震わせた。

 黒龍のうろこは夜のように深い光をたたえて、尾が振り払うたびに風が渦を巻き、オーガキングの足元の草木が根ごと引きずられた。

 大鬼の拳には古びた鎖が巻かれていて、一振りごとに地面がひび割れ、火花と土煙が舞う。

 彼の目は燃える炭のように赤く、咆哮とともに吐き出された息が黒龍の腹を直撃した。

 だが黒龍もただ受けているわけではない。

 口から吐き出される炎は血のように深い赤と青の混ざった光を帯び、オーガキングの胸板を焼き尽くしていく。炎が散るたびに、空には細かい灰が踊った。


 黒龍の首筋にひとつ深い傷が走った。

 オーガキングがその隙を逃さず、巨大な棍棒を勢いよく振り下ろす。衝撃が空間を裂き、私の羽先に電気のような震えが走った。

 だが、龍の目が一瞬だけこちらを見たように思えた。

 黒曜の瞳の中に、私を見ているような――それとも私が錯覚で、戦いの熱が細部を揺らしているだけなのか。


――そのとき、黒龍が最後の尾を大きく振り上げ、炎と闇の渦を纏ってオーガキングへ向けて放とうとしていた。


私の翼の紋様が、淡く光を強める。


 やがて、オーガキングの膝が崩れた。全身は傷に覆われ、血が大地を濡らす。それでもなお、憤怒の眼光を失わず立ち上がろうとする姿には、畏怖すら覚える。


 だが、黒龍はそれを見届けることはなかった。


 勝敗が決したと悟ったのだろう。黒龍は鋭く空に向かって咆哮し、それはまるで勝者の号令のように空気を震わせた。次の瞬間、黒龍は翼を広げ、空へと舞い上がる。夕陽を背に、黒き影はやがて空の彼方へと消えていった。


 地には、まだ息ある者の鼓動が残っていた。倒れ伏すオーガキング。大地を砕いた巨体が、静かに荒れ野の風に晒されていた。


 私は、ただその光景を見下ろしていた。鳥の姿で。言葉も涙もなく、ただ、見つめていた。

 気がつくと、私はオーガキングの傍らに立っていた。

 黒龍が去ったあとの空は静まり返り、赤く燃えるような夕陽が森の端を焦がしていた。大地にはまだ熱気が残り、風は焦げた木々と血の匂いを運んでくる。その中心に、巨きな影が横たわっていた。

 全身が傷に覆われていた。斧を振るっていた腕は、筋肉が裂け、骨すら覗いていた。胸には深く斬り込まれた爪痕があり、血が止まることなく流れ出ている。それでも、その表情には「屈辱」も「恐れ」もなかった。ただ、深い苦悶の皺が額に刻まれ、奥歯を噛みしめるような、耐えるような呼吸が続いていた。

 私は思った――

 美しい、と。

 この体は、戦うために鍛えられたのだ。

 武の誇りを纏い、全身を刃と化して闘い抜いた者の姿。

 それが今、崩れようとしている。

 誰のためでもなく、己の誇りのために。

 ならばせめて、

 その最期を穏やかに迎えさせてあげたい――そう願った。

 私はそっと手を差し出し、傷ついたその広い胸の上にかざす。

 指先からこぼれる祈り。

「この者に、安らかな、誇り高き最期の時を……」

 そう願ったときだった。

 私の掌が、淡く光を帯び始めた。

 はじめは小さな火の粉のような輝きが、すぐにほの白い霧となって空気に広がり、次第に黄金色の微光となって、オーガキングの全身をやさしく包んでいった。

 傷口が、ひとつずつ、音もなく塞がっていく。

 破れた筋繊維がつながり、砕けた骨が再び形を成していく。

 血の匂いが薄れ、代わりに風の中に、どこか懐かしい草の香りが混じった。

 「……なぜだ。なぜ、お前は……」

 重く、くぐもった声が喉奥から漏れた。

 それはまさしく、オーガキングの言葉だった。

 私は答えられなかった。

 やがて光が収まり、癒しの奇跡は静かに幕を閉じた。

 オーガキングはゆっくりと片目を開け、私の方を見た。

 その瞳には、激しい戦火を生き抜いた者だけが持つ深い色があった。

 「娘よ……名も知らぬ者よ……お前の中に、力を見た」


 低く、空に響くような声だった。

 その言葉は呪文のように、空気を震わせて耳に届いた。


 「我が名はグロム=ド=バル。オーガの王にして、断山の斧を持つ者……」


 彼の胸の奥、心臓のあたりが淡く光り始めた。

 それは先ほどの癒しの光とは違い、赤黒く、熱を持った魔力の結晶だった。


 「この命、長くは持たぬ。だが、我が力の一部……いや、魂のかけらを、お前に託す」


 彼は震える指で、私の胸に手を伸ばした。

 指先が触れた瞬間――


 ――ズンッ。


 低い音が空気の底から響いた。

 地の奥から湧き上がるような重低音。

 雷にも似た衝撃が体を貫き、視界が一瞬、黒と赤に染まった。


 「これぞ《断山の心核》……すべてを断ち、砕く意志の核だ。

  お前が望むとき、山をも越える斬撃となるだろう」


 私の胸の奥で、何かが静かに燃えていた。

 熱い。だが痛くはない。

 それは、彼の力。誇り。生の記憶。


 「お前が、それを汚すことはないと……信じよう……」


 彼は静かに目を閉じた。

 その呼吸が、ひとつ、深く、

 そして――止まった。

 だが私はその力を使って命を奪う斬撃を使うことは今後もないと思った。


 風が、森を渡った。


 炎の匂いは消え、残るのは、土と風と、そして静けさ。

 私はただ、そこに立ち尽くした。

 胸の奥に、新たな力と、哀しみを抱いて。




****************

 私はひとつ膝をつき、静かに両の手を地に添えた。

 その小さな掌から、あたたかな力が土の奥へとゆるやかに沁み込んでいく。


 かつて少女が戦い、倒した魔王――五体のオーガキングの亡骸が、風の止まった森の奥で静かに横たわっている。

 巨躯は荒れ狂う力の塊だったが、いまはただ、眠るように黙しているだけの「死者」だった。

「この地に。彼の故郷であろうこの地に、埋めてあげよう」

 私はオーガキングのものであった、バトルアックスを手に取ると地面に向かって斬撃を浴びせた。

 爆音と共に地面に大きなクレーターができた。

 私はどうやら恐るべき膂力をオーガキングから授かったらしい。

 何故なら半トンもあろうオーガキングの巨体を軽々と持ち上げ、穴の中に埋めたのだ。

 その後は飛び散った土くれを木の枝で作った間に合わせの箒で穴の方に掃き戻した。

 こんもりとできた土饅頭の上に彼のバトルアックスを突き立てて墓標とし、私は手を合わせた。

 まるで墓標に手を合わせるような、森の気配が少女を包む。


 石と苔のあいまに、根のような光がほのかに広がっていた。

 その上に、淡い花の芽がいくつもいくつも顔を出していた。


「……ここが、あなたたちの眠る場所」


 私はつぶやいた。涙はなかった。ただ、心のどこかが温かく、そして寂しかった。



 そして。


 少女は一歩、後ずさる。

 空を仰ぎ見る。そこには夜明けの兆し。紺から群青へ、やがて淡い光がこぼれ始めている。


 少女の背に、ふわりと羽音が灯った。

 それは鳥の羽であり、既に私は鳥の姿に戻っていた

 私は目を閉じ、風に身を委ねた。

 その身体がふわりと浮かび上がり、白い羽毛がひとつ、地上へと落ちた。


 鳥の姿になった私は、静かに、しかし力強く空を舞い上がる。

 朝の空を裂いて、蒼の向こうへと。

 眼下には、眠る戦士と、微笑むような花々。

 もう振り返らない。ただ飛ぶ。


 ――これは、夢の終わり。

 けれど、私にとっては、きっと始まりだった。


睦月の寝息が聞こえる枕元で、またスノードームが転がって夢の雪を降らせる。



ここまで読んで頂きありがとうございます。

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