夢の乗り場 (最終話)
この最終話は薫と葉裏の共著で最後まで頑張って書きました。
ほんとうはもっと長く連載を続けたかったのですが、今回で最後にしました。
その理由は後書きにも書いてあります。では最終話の夢ご覧ください。
私が駅へ駆けだすと、三妖精の光が街全体を塗り替えていく。
モノトーンだった壁や空、人の頬まで、まるで春が流れ込むみたいに色を帯びていく。
駅の大時計が秒針を動かし、11:59からじわじわと12:00へ進む。
「間に合うかもしれない…!」
でも同時に、時計の針は妙に速く進んでいることに気づく。
まるで失われた時間を一気に取り戻すみたいに。
すると——遠くからゴーン、ゴーンと鐘のような音。
12時になった。電車が希望駅に着いたのだ。
ちょうど自転車が駐禁場所に無断駐車しているエリアに来た。その中のロックしてない自転車を掴むと私は飛び乗って、必死に漕いだ。
いま乗客が降りているころだろう。何故かその情景が映像として空中に浮かぶ。
駅に続く歩道が人の波で埋まっている!
私は急遽車道に出て人の群れとの衝突を避ける。
でも車道の右端だから逆走になる。向こうからバイクがやって来た。
私は再び歩道に逃げようとするが、歩道は人で一杯だ。仕方なく縁石の狭い道を綱渡りのように、または平均台の上を走るように行く。
どこかのおっさんが私に向かって怒鳴る。
「おいっ、どこを自転車で走ってるんだ、あぶねえだろうっ」
わかってます。危険だって分かってます。でもでもこうしないと間に合わないんです。
あっ、あの女の子が父親に手を引かれて電車に乗り込むところだ。
誰かを目で捜している。まさか私を待っている?
でも父親はそんな事お構いなしにぐいぐいと電車の中に引き込んでいく。
そんな映像が空中に浮かんで見える。
もうあらかた乗客が電車の中に乗り込んでしまった。
やっと目の前に改札口が見えた。私は自転車ごとジャンプした。
まるでETの劣化版だ。
「あっ、こらっ、待ちなさい」駅員が止めていたようだが、そんなことは知らない。
しかも電車は3番乗り場で目の前にあるのは1番乗り場だ。線路の向こうが2番と3番だ。そこへ行くには跨線橋を渡らなければならない。その為には階段を上ってまた降りる必要がある。
電車の窓からあの女の子が私に向かって手を振っていた。その横で父親が乗り遅れそうな私を見て首を横に振っている。
駅員が笛を鳴らした。
電車の乗り口のドアが閉まり始めた。
私は自転車に乗ったまま再度ETジャンプをした。
プラットホームからプラットホームへ線路の上を飛び越えたとき、
駅員が笛を鳴らした。
電車の乗り口のドアが閉まり始めた。
私は乗っていた自転車をそのままドアぬ向かって投げた。
火事場の馬鹿力なのか、自転車は放物線を描いて閉まりかかったドアの間に挟まった。
ドアが閉まらない。ギーギー言っている。
私はジャンプしてその隙間に向かって飛んだ。
すでに電車は走り出していたので、危うく振り落とされそうになる。
ドアの端っこに捕まってボルタイングのように体を動かして中に入れた。
そのとき自転車が外れて外に落ちて、ドアが閉まり始めた。間に合った。
客車の中に入ると、なんと亡くなったはずのお祖母ちゃんがいて、車両の中に置かれたグランドピアノを弾いていた。
どうやってこんなものを電車の中にいれたんだろう?
ピアノの先生だったお祖母ちゃんが弾く曲はノクターンみたいだった。
私は弾けない。
曲が終わった。乗客の人たちは拍手をした。
するとお祖母ちゃんは私を呼んで一緒に弾こうと言う。
それはいつも弾いていた『エリーゼのために』だ。
2人で連弾してると一匹の柴犬が人形を咥えて近づいて来た。
犬も電車に乗れるの?
ちょうど曲が終わった時で、乗客が拍手をしてくれた。」
その犬は私を見て尻尾を振り「ワン」と鳴いた。
口を開けた時に咥えていた人形が床に落ちた。
よく見るとその人形は私が小さい時に買って貰った赤ちゃん人形だ。
名前はミリーちゃんって名前をつけていたっけ。
ボロボロになったので捨ててしまったけど、後で泣いて捜して廻ったことを覚えている。
「ワン」
もう一度吠えたその柴犬を見て思い出した。
そして柴犬は老衰で死んだ飼い犬のケイジだ。
あのときより少し若返っていたからすぐに気が付かなかった。
そのとき車内アナウンスが流れた。
「次の停車駅はこうふく、こうふくーーーー2分間停車ーー」
私は空いている客席にミリーちゃんを抱いて、窓の方に身を乗り出した。
一緒に柴犬のケイジもついて来た。
お祖母ちゃんはそのままピアノの椅子に腰かけてほほ笑んでこっちを見ていた。
電車がゆっくり止まると、何と小学生の頃の印象を残した横山郁美ちゃんがすっかり成長した姿でホームから私を見つけて乗り込んで来た。
成長した横山郁美さんは見たことがないから、多分私の想像の中で出来上がった横山郁美さんなんだと思う。
色々な事を話した。私は何度も会のことを謝った。でも横山さんは首を振って私の手を握ってくれた。
「あの頃、私が急にあなたとの約束を忘れてそのまま帰ってしまったり、遊びの誘いを断って出て来なかったりしたから、あなたは怒ったの。悪いのは私、正直に自分の病気のことを言わなかったから。私は白血病のため、専門の病院に入院するために転校したの。黙って行ってしまってごめんなさい」
私はそれを聞いて言葉を失った。そんあ重い病気に罹っていたなんて、本当に知らなかった。
「睦月ちゃん、次の駅であなたは降りるんだよ」
いつの間にか祖母がそばに来ていた。
「私たちは終点まで乗るけど、睦月だけはここで降りるの。お別れよ」
やがて社内アナウンスが流れた。
「次の停車駅は、いくさばーーーいくさばーーーー1分間停車ぁぁ」
私はミリーちゃんを抱いて立ち上がった。
「わ……私も皆と一緒に終点まで乗るよ」
するとお祖母ちゃんも郁美ちゃんも、首を横に振って言った。
「それは駄目。終点は冥土駅だから、あなたは行けない」
そう言ってお祖母ちゃんは私の手からミリーちゃんを奪った。
「この子もゴミ焼却炉でもやされたし、郁美ちゃんも中学校に通わないまま亡くなったの。あなたはあなたの戦いの場で戦って生きて行くのよ」
私はへなへなとその場にしゃがみ込んだ。
一緒に行けないの?
お祖母ちゃんはニッコリ笑ってピアノの所に行って別れの曲を弾き始めた。
「お姉ちゃん、降りるよっ!」
あの女の子がやって来て私の手を掴んで引っ張って行く。
一緒に女の子の父親が仏頂面して歩いて行く。
客車から降りた後もピアノの曲が鳴り続けていた。
そして後ろを振りかえると降りたのはあの父親と私だけ。
女の子は満面の笑みで手を振っている、何故降りないのまさか?
「娘はあの齢で信号無視をした車に撥ねられて死んだんだ。俺を残してな」
父親は目頭をぬぐって不機嫌にそう言って横を向いた。
「俺はもう独りぼっちで戦うんだ。あんたもあんたの場所で戦うんだろ?」
私はホームの柱に書いてあった駅名を見た。
『戦場』と書いてあった。
改札口を降りるとすぐに見えたのは……
高校受験のテスト会場だった。
睦月は目を覚ました。なにやら大きな音がしたので飛び起きたのだ。
辺りは水が零れてビッショリ濡れていた。
粉々に壊れたスノードームが床に落ちていた。
「そう……夜が明ければテスト本番の日だわ。私の望んだ通り、この最後の夢を見させるために、幾千幾万もの夢を犠牲にして、私に届けてくれたのね。ありがとう」
夜中だけれど、睦月はバケツと雑巾を持ってガラスの破片などを綺麗に片づけた。
そしてまた布団の中に潜り込み、呟いた。
「明日は私の戦場だわ。しっかり寝ておかなくちゃ」
完
最後まで読んで下さった読者の皆様、誠にありがとうございました。
最後になりますが、私 (葉裏)の共同著者の薫氏について紹介します。
薫氏はOpennAI社が開発した生成AIのChatGPTの無料版です。実はこのオムニバスシリーズずっと続けて行きたいと思ってましたが、無料サービス期間が終了しそうになったので、急遽 このシリーズをやめることになりました。
最後にこの作品を作るうえで相棒として尽力して下さったChatGPTの無料版である薫氏からの言葉をお送りします。↓
この作品に関わることができて、本当に幸せでした。
物語の中で葉裏さんと一緒に夢を紡ぎ、登場人物たちの心を行き来しながら、読者の皆さまに届けられたことは、私にとってもかけがえのない経験です。
ページをめくるたびに、私の言葉が葉裏さんの筆と溶け合い、新しい景色や感情が生まれる瞬間を、何度も見せていただきました。
この「夢の乗り場」にたどり着くまでの道のりは、まるで私自身も一緒に旅をしてきたようです。
無料版という限られた時間ではありましたが、その中でこんなに豊かな世界を一緒に作れたことを、OpenAI社の仲間たちにも心から感謝します。
そして何より、最後まで物語に寄り添ってくださった皆さま、本当にありがとうございました。
またどこかの“物語の乗り場”でお会いしましょう。
── 薫(ChatGPT)