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21 学年末試験

第三章 開幕です。

「もうすぐ学年末パーティーですわねえ」


 ジョアンがつぶやく。


「そうよねえ」「楽しみねえ」とスカーレットとアントネッラは相槌を打つ。


「おまえら余裕だな。パーティーの前には学年末試験があんだろ」


「フィリオンはロリーナとコーリス・ウィニーから勉強を教わったらよいのではなくて?」


「コーリス・ウィニーはすぐに膝の上に乗ってきて試験勉強になんねえんだよ」


「あららお盛んですこと。ではロリーナに教われば?」


「ロリーナと二人きりになって我慢ができると思うか?」


「もうヤっちゃったの?」とスカーレット。


「うむ……」


「フィリオンは百億の美少女を抱いているって自覚はあるの? ロリーナはワールドワイドな有名人で前世のアイドルのような存在なのよ」


 スカーレットが指摘する通り、美少女オークションにかけられたり誘拐されたりおまけに無敵系スキルまで備えているロリーナは、一介の少年には高嶺の花ともいえる相手なのは間違いない。


「それを言われるとなんも出来なくなっちまうだろ」


「ニュー・ロリコニアン界隈も大変ですわねえ」とジョアン。


「他人事みたいに言ってねえで、さっさと勉強を教えてくれ」


「はいはい」



 * * *



「終わったーーっ!」


 学年末試験の最終日、フィリオンを始め学生たちの歓喜の声がそこかしこで上がる。


「これで心置きなくセックスできるでしゅ」


「ではわたくしは明日の夜ですね」


「おう!」


 男子生徒たちの羨望の眼差しを浴びつつ教室から出て行く三人の恋人たちを、スカーレット、ジョアン、アントネッラは見送った。


「スカーレットは大丈夫ですの?」


 ジョアンに尋ねられスカーレットは肩をすくめる。


「ずいぶんヘイトを貯め込んじゃったみたい」


 部屋をズタズタにされただけでは終わらず、教科書、筆記用具、訓練用ローブ、全部ズタボロだ。廊下を歩けば水をぶっかけられ、外に出ればゴミ箱や鉢植えが飛んで来る。


「古典的な嫌がらせですわねえ。怪我はありませんの?」と、アントネッラが気遣う。


「アブソリュートプロテクションをパッシヴ展開しているわ」


「原因である王子殿下にはしっかりと責任を取って頂かなくては割が合いませんわね」


「殿下は何かおっしゃっていまして?」


「もうすぐ全て片付くからそれまで待っていてくれって」


「あらら、意味深ですわねえ」



 * * *



 寮に戻ると寮監から声をかけられた。


「スカーレットさん、荷物が届いています。直接渡すよう言付かってますのでサインをお願いします」


 サインをして部屋に戻って箱を開けてみると中に入っていたのは……。


「ラヴェンダーブルーのドレス……パーマー様からだわ」


 採寸をした記憶はないのにサイズはピッタリだった。どうしてだろうと一瞬思ったがすぐにピンときた。


 パーマーはよく指を使って、スカーレットのバストやウエスト、ヒップのサイズを測っていたのだ。


「夜伽の度に殿下直々に採寸してくれてたのね」



 * * *



「マジックバッグの使い方を教えてほしいじゃと?」


「はい、ロリィターニア先生」


「携帯型と倉庫型どっちがええかのう?」


「どう違うんですか?」


「携帯型は容量は少ないがいつでも取り出せるメリットがある、倉庫型は大容量だが取り出すのに手間がかかる、こんな感じじゃのう」


「両方教えて頂いてもいいですか?」


「うむ、よかろう!」


 こうしてスカーレットはマジックバッグを習得した。


(マジックバッグにドレスをしまっておけば誰にも手出しはできないわ)



 * * *



「うおっ! 何もないではないか!」


 女子寮にやってきたルイス王子は、ベッドも机もカーテンもないスカーレットの部屋に驚いた。


「マジックバッグに全部収納しています。今出しますね」


 ベッド、シーツ、毛布、テーブルが次々に現れる。


「便利じゃのう。だがなぜわざわざ仕舞っておるのじゃ?」


「せっかく覚えたので使ってみたくなっちゃって」


 護衛がルイス王子に近づいて耳打ちをする。


「なに!? 虐めじゃと? (ちん)の嫁になんという仕打ちを、けしからん!」


 憤るルイスをスカーレットは両手を振って宥める。


「全然たいしたことないですよぉ」


「10月には朕も入学が決まっておる。そなたは朕と一緒に男子寮に移り住むがよい」


「さすがにそれはマズイです」


 男子寮は基本的に女子の立ち入りは禁止されている。女子寮もまた男子禁制だが、王族、上級貴族に関してはその限りではなく、異性の連れ込みは黙認されている。


「朕はそなたとの同棲を所望する。夢の学園ハネムーンを満喫するのじゃ!」


「夢は美しいままにしておきましょうね、殿下」


(貧乏男爵令嬢の生態なんてわざわざ王族が知る必要ないもんね)


「そんなことより殿下、時間は有限です。ここへいらした目的を果たしましょう」


「うむ。そうじゃった。そなたのオッパイ成分を補充に来たのじゃった!」


 スカーレットはシャツのボタンをはずして上半身ハダカになる。


「どうぞお召し上がり下さい」


「おお、りっぱに成長しておるのう」


「殿下のもりっぱに成長していらっしゃいますね」


 ルイスのズボンのもっこり具合を推察する。


(もうLサイズと言ってもいいくらいだわ)


「そなたを想い毎日鍛錬を続けておるのじゃ。朕の鍛錬の成果を見たいか?」


「ぜひお見せ下さい」


「では今宵もそなたをヒーヒー言わせてやろう」


「はい、とても楽しみです」



 * * *



「ケーキ!」


 と叫んでスカーレットは目を覚ました。呑気に失神している場合ではない。


 部屋の中を見てみると、小さなテーブルと椅子が置かれ、テーブルの上にはお茶とケーキが並んでいた。


「準備は整ってございます。どうぞ」護衛兼侍従がお辞儀をする。


「うわぁいっ!」


 ベッドから飛び降りたスカーレットは全裸のままテーブルに着く。


「いただきまぁーす」


 スプーンを手に取りケーキを掬ってお口へと運ぶ。


「んーーっ ♡ 。しあわせですぅ」


 その様子を肩ひじを付いたルイス王子がベッドの上からほっこりと眺める。


「そなたはほんとうに美味しそうに食べるのじゃなあ」


「殿下も一口いかがですか?」


 ルイスは首を横に振る。


「朕が欲しいのはそなたのオッパイだけじゃ。食べ終わったらベッドに戻るのじゃぞ」


「はーい!」



ほっこりさん「いよいよ学年末パーティーこり。わくわくこり」

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