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01 スカーレット

ほっこり学園ラブコメ。開幕です。

「うわあっ! さすがアーヴェ王立魔法貴族学園、華やかだわぁーっ!」


 12歳になった貴族の子女の多くがこの学園に入学する。一年生から六年生まで約3000人の学生が在籍する校舎の外観は宮殿を思わせる絢爛豪華さだ。


 領地も資産もない貧乏男爵令嬢スカーレット・ディセンバーは、生まれて初めて目にする煌びやかな世界に目がくらみそうになった。


 立ち止まって校舎を眺めていると背後から声がかかる。


「そこ通り道ですの、どいて下さる」


「あ、すみません。どうぞどうぞ」


 あわてて道を開けようとした拍子に足がもつれて尻もちをついてしまった。


「いったぁーーいっ!」


 おしりをさすりつつ顔を上げると、金髪碧眼の可憐な美少女が冷たい目で見降ろしていた。


「あなた、どんくさくてよ」


 その瞬間脳内に電撃が走った。


「あああああああああああああっ!」


「何事だ!」


 少女の悲鳴を聞きつけて四人の少年たちが駆け付けてくる。


 尻もちをついた赤毛の貧乏男爵令嬢とそれを見降ろす金髪侯爵令嬢をまのあたりにした少年たちは即座に状況を把握する。


 銀色の髪の少年は眉を吊り上げる。


「またおまえか、レジェンダ! 今度はどんな悪事を働いたんだ!」


 続いて背の高い栗色の髪の少年が腕を組んで彼女を睨む。


「おおかた新入生にいいがかりでもつけていたんだろ」


 鳶色でくせっ毛の可愛い系の少年はニヤリと笑う。


「義姉さん、相変わらずオーボーだネ」


 短く切りそろえた濃い茶色の髪のメガネをかけた少年は冷静な口調で状況を分析する。


「ふむ。新入生虐めは生徒会役員として見過ごせませんね」


 侯爵令嬢レジェンダはパッと扇を広げて口元を隠す。


「あらあら、みなさん想像力がたくましくていらっしゃること。どこをどう見ればそのような結論に至るのかしら」


 銀髪のパーマーは厳格な口調で言い渡す。


「こういう時は日ごろの行いが物を言うのだ」


「私、何か致しました?」


 栗色の髪のエルドリッチは声を荒げて非難する。


「とぼけるな! 取り巻きを使っての弱い者虐めをオレたちが知らないとでも思っているのか!」


「あの子たちが勝手にやっていることに対してどうして私が責任を取らなければいけませんの? 自己責任という言葉をご存知ないのかしら?」


 鳶色の髪のティモシーは嫌悪感を露わにする。


「義姉さん、そんな言い訳はツーヨーしないヨ」


「単に事実を申し上げただけですわよ」


 濃い茶髪のアーチャーのメガネの奥でヘーゼルアイがキラリと光る。


「今回の件は生徒会でも取り上げざるを得ませんね」


「生徒会って暇ですのねえ。それだけ平和ってことですわね、よろしくてよ」


 パチンと音をたてて扇を閉じたレジェンダはくるりと踵を返して歩き去った。




 いつもならば自分が原因で齟齬が生じた言い争いにオロオロするスカーレットだったが今はそれどころではない。


 尻もちをついたせい……いや、金髪の令嬢の冷たい視線を浴びたせいで前世の記憶がいっきに押し寄せてきたのだ。


(……知ってる。彼女は悪役令嬢のレジェンダ、ここは物語の舞台となるアーヴェ王立魔法貴族学園。あたしはヒロインのスカーレット)


 物語のタイトルが脳裏に浮かんでくる。


『スカーレット・アンド・アザー・ワールド・ストーリーズ』


(あたし……あたし……物語の中に転生しちゃってたんだわ!)


貧乏男爵令嬢のほっこり学園ラブコメ。よろしければ最後までお付き合い下さい。


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